prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
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「英国総督 最後の家」

2018年09月16日 | 映画
インド最後のイギリス提督マウントバッテンをやっているのが「ダウントン・アビー」のヒュー・ボズヴィルなのだが、「ダウントン」が上流階級と下層階級の両方を平行して描き時に交錯するドラマだったように、イギリスとインドの両方を平行して時に交錯させながら描く。

イギリスが300年植民地の人民の抵抗を削ぐために分割統治していたのが裏目に出て、ヒンディー教徒のインドとムスリムのパキスタンに分離して独立してしまい多くの難民を出すに至る過程を、イギリス側の名誉ある撤退を望みながらまるで逆の結果を招かざるをえない提督と、ヒンディー教徒の男とムスリムの娘との悲恋を絡めて描く人物配置と構成がしっかりしていて、終始緊張感が途切れない。

マウントバッテンは誰でも好きになる男、という前振りで登場するのだが、その好感度の高さが結果としてもっと上の政治家たちに利用されているのは「アラビアのロレンス」のロレンスをちょっと連想した。
どうインドとパキスタンの国境を定めるのか、あらかじめソ連が友好国を経由して不凍港を欲しがるのを見越してチャーチルが首相の時期に考えていたのがわかるあたりの政治的な冷徹さに粛然とする。

宗教の壁に阻まれる若い男女を接近させたきっかけがインド独立運動で投獄され視力を失った父のもとに娘が送った手紙を看守をしていた男が運んで読み上げていた(さらにディケンズなども朗読していて、看守の立場を離れて運動家を尊敬していたのがうかがわれる)という設定が巧みで、その盲目の父親がパキスタンに行くとなると娘はついていかざるを得ず、親が決めていた許婚者を断るのもムリというあたり、大いにドラマチックに盛り上がる。古典的といっていい恋愛を邪魔する障害だけれど、それが作り物でなく生きている。

音楽は「踊るマハラジャ」などのA・R・ラフマーンだが、ここではむしろインド色を抑えたオーソドックスな(というのも曖昧な定義だが)ドラマチック・スコアを提供している。

「英国総督 最後の家」 公式ホームページ

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9月15日(土)のつぶやき

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