prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「Ryuichi Sakamoto: CODA」

2017年11月26日 | 映画
オープニングは東日本大震災で津波の被災を受けて水に漬かった、というより水に浮いていたであろうピアノのキーを坂本龍一が叩くところ。

さぞひどい音になってしまっただろう、という予想に逆らって、ちょっとプリペアドピアノのようなおもしろい響きを出しているのであれっと思うと、かなり後になって坂本龍一が良い音を出していると思いました、というのになるほどと首肯した。
音の良し悪しに階梯を作らない、という考え方には納得できる。

イエロー・マジック・オーケストラの頃(1980前後)の記録映像を見ると、かなり古めかしく見えるのだがそれが同時に最先端とみなされていたのが、同じころのさまざまな位相の時が同居した「ブレードランナー」の未来像が登場したのと同じころなのだなと思わせる。

器楽音だけでなくあらゆる物音、沈黙も含めてすべての音は音楽だという考えは必ずしももう珍しくないが、まず電子音楽で有名になった人がそちらに接近していくのは一見対局にあるようで、どこか自然ななりゆきに思える。

「シェルタリング・スカイ」のプロデューサー、ジェレミー・トーマスにいきなり呼び出されて40人のオーケストラが待っているところでスコアを書けという無茶な要求をされ、そんなのムリだというとエンニオ・モリコーネはやったぞと言われてやむなく突貫工事式に仕上げたという。
「ラスト・エンペラー」も相当な突貫スケジュールで、映画音楽というのはおおむねどこでも時間的余裕はないらしい。

タルコフスキー映画の水音が非常に好きだそうで、「惑星ソラリス」の抜粋やタルコフスキーが撮ったポラロイド写真の写真集をめくっているところ(木の葉が栞代わりにはさまっているのは「サクリファイス」のダ・ヴィンチの画集に木の葉がはさまっているシーンの引用だろう)

日米と世界、9.11と3.11がつながり、タルコフスキーが幻視していたカタストロフが現実になってきているのが坂本龍一というアーティストを介して自然に見えてくる。

Ryuichi Sakamoto: CODA 公式ホームページ

映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』 - シネマトゥデイ

Ryuichi Sakamoto: CODA|映画情報のぴあ映画生活



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11月25日(土)のつぶやき

2017年11月26日 | Weblog