prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「1984」

2017年11月06日 | 映画
ジョージ・オーウェルによる極度に発達した管理社会を描いたディストピアSFの元祖の映画化。
原作はもともと1948年に現実の社会主義体制をモデルにして書かれたもので暗鬱で貧乏臭いトーンで統一されていて、現代資本主義消費社会の少なくとも表面は華やかで裏に回って情報を管理している現状と一足飛びに結び付けるのは難しい。

とはいっても、情報統制がいかに徹底した効果を上げるか、過去を支配することは未来を支配することで、現代を支配することは過去を支配するという理念と、言葉の意味を顛倒させて思考を停止させる普遍性は高い。

リチャード・バートンの遺作。例の重いセリフまわしで洗脳係オブライエンを演じ、もちまえのカリスマ(ポスターの絵柄に過ぎないようなビッグ・ブラザーよりずっと強い)を発散する。洗脳という言葉は今の日本でひどく安直に使われるが、自分は洗脳されていないつもりの人間ほどこういう一種自身たっぷりな人間にはいちころだろうと思わせる。

というか、管理をあからさまに見せず自由意志であるかのように思わせる技術が現実においてはるかに発達したということだろう。

ジョン・ハートの持ち味であるところの何か気弱で自我をもともとあまり持っていない感じがはまりすぎで、ちょっく暗鬱すぎる感はある。

ヴィジュアルは「未来世紀ブラジル」によく似ている、というか、「ブラジル」が発表されたのは1985年で、1984年に発表されたこの映画より少し遅い。「ブラジル」の仮題に「1984 1/2」なんていうのもあったらしい。
ただ「ブラジル」のけたたましさと笑いは薬にしたくもない。




11月5日(日)のつぶやき

2017年11月06日 | Weblog