prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ミスト」

2008年11月03日 | 映画

可愛げのないB級ホラー。
モンスターが生まれた理由付けというのが実質、放射能とか化学物質とかいったよくあるB級アイテムと同じレベルなのだが、もっと気取った最新科学風にしようとして意味不明に外している(「インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国」もそんな変なところがあったね)。
モンスターにキャラクターがないから(タコになったり、虫になったりで統一性もない)、メタファーにもなりようがない。モンスターがぞろぞろ直接姿を現してくるものだから霧も暗示的機能をなくして、ただの視覚効果にとどまっている。

狂信者オバさんに長々とした神の怒りがどうたらという説教を垂れ流させて、人民寺院あたりの集団自殺になぞらえようとでもしているのかしらないが、偽預言者をいくら描いたところで偽者は偽者で、それにひっかかる人間心理が説得的に描かれているわけではなく、映画で見る限りあんなのにひっかかるのはバカにしか見えない。ただこの手の「教祖」に実際にひっかかる奴がいたのだからという外的に与えられた「情報」にのっかっているだけだ。
そういう「思わせぶり」にのっかる連中が出てくるのを見透かしている作りなのが、可愛げのないところ。

クライマックスの構成がご都合主義。弾丸が何発あったのが何発使ったから、四発残った、という計算も立っていない。途中で弾丸切れになってるのを見せてるところがあるぞ。ハッピーなご都合主義をただ裏返したって、失笑すらできなくなるだけだ。

ゲテモノ的描写はやたらとリアルなので退屈はしないが、ゲテモノを気取ってメタフィジカルに作られても困るのだ。駄菓子に高級ソースかけてどうするのか。

ここにいるのは「ショーシャンクの空に」のフランク・ダラボンではなく、「ブロブ・宇宙からの不明物体」でモンスターを宇宙から来たのではなく軍の工作で生まれたものと矮小化した、また「ザ・フライ2」の陰惨きわまるラストを書いたシナリオライターのダラボンの方。
(☆☆★★★)