prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ゆれる」

2008年03月16日 | 映画

ゆれる吊り橋の上で何があったのか、いくつかのイメージが具体的に出てくるが、どれが真実なのかははっきりさせる謎解きはしていない。
それらはどれもほぼオダギリジョーの主観に添っているもので、当人が兄の香川照之に持っている感情がかなり伏せられている上に、「信頼できない語り手」でもあるから、一人「羅生門」といった観になっていて、その差異をストーリー的にまとめようとしないで、題名通り「ゆれて」いるのが映画的に不定形でスリリングで面白い。

香川照之が、みじめったらしいのかふてぶてしいのか、なかなか傍から推し量れない煮ても焼いても食えない男を好演。

兄弟がそれぞれ地方にとどまったのか、東京に出て行ったのかといった立場の対立だけでなく、一方で「家」を継いだわけではない根無し草的なところは共通しているのが微妙だし、親の代でも家を出た伯父の蟹江敬三が弁護士を務めるというたくらみがまた効いている。

「SP」でブレイクする前のロングヘアーの真木よう子が見られる。
(☆☆☆★★★)