すっかり秋ですねー。読書の季節です。
昨年第一作を読んでめちゃくちゃ気に入ったこちらの作品、続編が出たのでわくわくしながら読みました!
機巧のイヴ: 新世界覚醒篇/乾緑郎(新潮文庫)
日下国は「御維新」が起こり、かつての天帝家による権威は消滅し、近代化が進んでいた。華丹国等との戦争等を経つつ、列強諸国に肩を並べようとしている。
そんな慌ただしい時代の中で勃興してきた〈新世界大陸〉で開催される万国博覧会において、日下国が威信を掛けて目玉展示にしたのが機巧人形「伊武〈いゔ〉」。メンテナンスできる機巧師が没し、既に100年以上活動を停止している伊武を盗んで引き渡せ、と裏社会から指示を受けたジョー・ヒュウガこと日向丈一郎は、国に残した妻子に会うための渡航資金を得るため、建設中の日下国パビリオンに忍び込む。底で目にしたのは、伊武にすがりつく少年と、目覚めてその少年に語りかける伊武の姿・・・「あなたは、どなた?」
前作「機巧のイヴ」は、鴨の読書史上十指に入ると言って差し支えのない、伝奇SFの傑作。機巧技術を巡る権謀術数、その背後に立ち現れる日下国の歴史を重層的に描く、巻を置く能わざるハイレベルな作品だと鴨は評価しています。
その続編に当たる「新世界覚醒篇」、文句なく面白いです。相変わらず達者な筆運びです。
・・・が、うーん・・・前作ほどのまとまりは、正直感じられませんでした。主役級の日向が戦争の前線で直面した想像を絶する悲劇が物語のバックボーンを成していて、これだけで小説一本書けるんじゃないかってぐらい濃いエピソードが連綿と描写されるんですが、これ以外にも〈新世界大陸〉側のキャラクターの各々のエピソードが絡んだり、伊武や天帝のここに至る物語もあったりして、一言でいうと散漫な印象。古典芸能でいうところの「世界」が複数に分割してしまっていて、機巧人形の神秘性も底まで深く描かれず(単に「歳を取らない美少女」というファンタスティックな存在以上でも以下でもない感じ)、全体的な印象が結局よくわからないまま終わってしまった印象です。うーん、もったいないなー。
一通り読んで、誰かに似てるなーと思ったんですけど、思い出しました。ロバート・J・ソウヤーですよ。
とにかくストーリーテリングが巧みで、読んでる最中は面白くてたまらないんですけど、読了後に思い返してみると、深い印象がないという・・・誤解のないように申し上げておくと、間違いなく面白いです。万博の初日、観覧車に向かう馬車の中で伊武が天帝の想いを語るシーンは、映像的にも物語的にもカタルシスを感じました。
筆運びが達者過ぎて、ある意味損をしている作家さんなのだろうと思います。次作に続ける気満々のラストシーンだと感じましたので、ぜひ次作もスマッシュ・ヒットをお願いします!
昨年第一作を読んでめちゃくちゃ気に入ったこちらの作品、続編が出たのでわくわくしながら読みました!
機巧のイヴ: 新世界覚醒篇/乾緑郎(新潮文庫)
日下国は「御維新」が起こり、かつての天帝家による権威は消滅し、近代化が進んでいた。華丹国等との戦争等を経つつ、列強諸国に肩を並べようとしている。
そんな慌ただしい時代の中で勃興してきた〈新世界大陸〉で開催される万国博覧会において、日下国が威信を掛けて目玉展示にしたのが機巧人形「伊武〈いゔ〉」。メンテナンスできる機巧師が没し、既に100年以上活動を停止している伊武を盗んで引き渡せ、と裏社会から指示を受けたジョー・ヒュウガこと日向丈一郎は、国に残した妻子に会うための渡航資金を得るため、建設中の日下国パビリオンに忍び込む。底で目にしたのは、伊武にすがりつく少年と、目覚めてその少年に語りかける伊武の姿・・・「あなたは、どなた?」
前作「機巧のイヴ」は、鴨の読書史上十指に入ると言って差し支えのない、伝奇SFの傑作。機巧技術を巡る権謀術数、その背後に立ち現れる日下国の歴史を重層的に描く、巻を置く能わざるハイレベルな作品だと鴨は評価しています。
その続編に当たる「新世界覚醒篇」、文句なく面白いです。相変わらず達者な筆運びです。
・・・が、うーん・・・前作ほどのまとまりは、正直感じられませんでした。主役級の日向が戦争の前線で直面した想像を絶する悲劇が物語のバックボーンを成していて、これだけで小説一本書けるんじゃないかってぐらい濃いエピソードが連綿と描写されるんですが、これ以外にも〈新世界大陸〉側のキャラクターの各々のエピソードが絡んだり、伊武や天帝のここに至る物語もあったりして、一言でいうと散漫な印象。古典芸能でいうところの「世界」が複数に分割してしまっていて、機巧人形の神秘性も底まで深く描かれず(単に「歳を取らない美少女」というファンタスティックな存在以上でも以下でもない感じ)、全体的な印象が結局よくわからないまま終わってしまった印象です。うーん、もったいないなー。
一通り読んで、誰かに似てるなーと思ったんですけど、思い出しました。ロバート・J・ソウヤーですよ。
とにかくストーリーテリングが巧みで、読んでる最中は面白くてたまらないんですけど、読了後に思い返してみると、深い印象がないという・・・誤解のないように申し上げておくと、間違いなく面白いです。万博の初日、観覧車に向かう馬車の中で伊武が天帝の想いを語るシーンは、映像的にも物語的にもカタルシスを感じました。
筆運びが達者過ぎて、ある意味損をしている作家さんなのだろうと思います。次作に続ける気満々のラストシーンだと感じましたので、ぜひ次作もスマッシュ・ヒットをお願いします!