通勤中に読んだSFの未了レビューが溜まってきてしまった(^_^;
年度末の忙しい時期ですが、頑張って書きます!先月読了済みの作品ですが、改めてご紹介。
機龍警察 未亡旅団/月村了衛(ハヤカワ文庫JA)
冒頭はいつもの「機龍警察」シリーズらしく、派手派手しい戦闘シーンで幕を開けます。戦闘の主役は、紛争地帯チェチェンから日本に極秘入国した女だけのテロ集団「黒い未亡人」。未成年の少女も含め自爆テロを容赦なく実行する「黒い未亡人」は、敵方ロシア寄りの日本政府に鉄槌を下すためテロを実行すると考えられていたが、その裏にはもう一つの情念に満ちた復讐劇があった。特捜部の城木は、政治家である兄の不審な動きに気づき、その動きを追うが・・・。
本を閉じたとき、鴨が強烈に感じたのは、「純粋な善意の”暴力性”」です。
多くの人を不幸にする悪であるテロリズムを容認する気持ちはさらさらありませんが、でも、テロリストにはテロリストなりの理屈や決意があります。自国を守るため、人々を守るため・・・その行動自体は悪であり暴力そのものであっても、彼らの”悪”には、理由なり理屈なりがあります。
でも、善意には、理由も理屈もありません。ただ、純粋に無私の心から発するものです。だからこそ、悪い方に転がると手に負えない結果が待っています。そんな残酷な事実を、端的に表現した作品だと感じました。
ストーリー中に実際はほとんど登場しないにもかかわらず、強烈な存在感を放つ城木の義姉・日菜子。彼女が”純粋な善意”からシーラに送った手紙が、この「未亡旅団」で展開される一連の悲劇のきっかけになった、と鴨は思います。
「戦地チェチェンで貴女のコミュニティが全滅するきっかけを作り、貴女を捨てて逃げた男と、私は結婚します。こちらにも事情があるので、悪く思わないでください。貴女もいろいろ大変だと思いますが、どうぞお幸せにね」とメッセージを送られて、激怒しない女はいないと思うんですけどね・・・。この無邪気とすら言える日菜子の”純粋な善意”が、シーラを少年兵をも巻き込んだ大規模なテロ行動に突き進ませたのでしょう。そして、城木の兄であり日菜子の夫であった宗方亮太郎も、そのことは重々理解していたのだろうと思います。彼が新潟に向かったのは、シーラを止めようとしたのか、それとも別の意図があったのか・・・。いつもの機龍警察とは異なり、途中からいきなりラブロマンス要素が入ってきて「おいおい何だこれ」と思いつつ読み進めて、このモヤモヤした結末。色々と後味の悪い幕切れでした。
・・・が、最後の最後、逃げ切った幼い元テロリスト・カティアが、来日中に彼女を救ってくれた特捜部の由起谷に宛てて辿々しい日本語の手紙をよこし、それを読んだ由起谷が愛憎入り混じった泣き笑いをする、このラストシーンには一抹の希望を感じます。いつかカティアが機龍警察の突撃班のメンバーにならないかな・・・なんて思ってしまう(そうならないことが彼女の幸せだと思いますが)、この先に繋がる光を感じました。
機龍警察シリーズの中では異色の作品だと思いますが、一流のエンターテインメント作品であることに変わりはなく、読んで損はありません!
年度末の忙しい時期ですが、頑張って書きます!先月読了済みの作品ですが、改めてご紹介。
機龍警察 未亡旅団/月村了衛(ハヤカワ文庫JA)
冒頭はいつもの「機龍警察」シリーズらしく、派手派手しい戦闘シーンで幕を開けます。戦闘の主役は、紛争地帯チェチェンから日本に極秘入国した女だけのテロ集団「黒い未亡人」。未成年の少女も含め自爆テロを容赦なく実行する「黒い未亡人」は、敵方ロシア寄りの日本政府に鉄槌を下すためテロを実行すると考えられていたが、その裏にはもう一つの情念に満ちた復讐劇があった。特捜部の城木は、政治家である兄の不審な動きに気づき、その動きを追うが・・・。
本を閉じたとき、鴨が強烈に感じたのは、「純粋な善意の”暴力性”」です。
多くの人を不幸にする悪であるテロリズムを容認する気持ちはさらさらありませんが、でも、テロリストにはテロリストなりの理屈や決意があります。自国を守るため、人々を守るため・・・その行動自体は悪であり暴力そのものであっても、彼らの”悪”には、理由なり理屈なりがあります。
でも、善意には、理由も理屈もありません。ただ、純粋に無私の心から発するものです。だからこそ、悪い方に転がると手に負えない結果が待っています。そんな残酷な事実を、端的に表現した作品だと感じました。
ストーリー中に実際はほとんど登場しないにもかかわらず、強烈な存在感を放つ城木の義姉・日菜子。彼女が”純粋な善意”からシーラに送った手紙が、この「未亡旅団」で展開される一連の悲劇のきっかけになった、と鴨は思います。
「戦地チェチェンで貴女のコミュニティが全滅するきっかけを作り、貴女を捨てて逃げた男と、私は結婚します。こちらにも事情があるので、悪く思わないでください。貴女もいろいろ大変だと思いますが、どうぞお幸せにね」とメッセージを送られて、激怒しない女はいないと思うんですけどね・・・。この無邪気とすら言える日菜子の”純粋な善意”が、シーラを少年兵をも巻き込んだ大規模なテロ行動に突き進ませたのでしょう。そして、城木の兄であり日菜子の夫であった宗方亮太郎も、そのことは重々理解していたのだろうと思います。彼が新潟に向かったのは、シーラを止めようとしたのか、それとも別の意図があったのか・・・。いつもの機龍警察とは異なり、途中からいきなりラブロマンス要素が入ってきて「おいおい何だこれ」と思いつつ読み進めて、このモヤモヤした結末。色々と後味の悪い幕切れでした。
・・・が、最後の最後、逃げ切った幼い元テロリスト・カティアが、来日中に彼女を救ってくれた特捜部の由起谷に宛てて辿々しい日本語の手紙をよこし、それを読んだ由起谷が愛憎入り混じった泣き笑いをする、このラストシーンには一抹の希望を感じます。いつかカティアが機龍警察の突撃班のメンバーにならないかな・・・なんて思ってしまう(そうならないことが彼女の幸せだと思いますが)、この先に繋がる光を感じました。
機龍警察シリーズの中では異色の作品だと思いますが、一流のエンターテインメント作品であることに変わりはなく、読んで損はありません!