プルーストの午後

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「LES MOTS」言葉 JーP・サルトル (澤田直訳)人文書院

2007年03月08日 | 読書
サルトルの自伝である「言葉」を、初めて知ったのは、わたしがまだ、学生時代のことでしたが、先日ようやく手に入れて読みました。

自伝といっても、この本は、サルトルの幼少の頃のみのことで、しかも60歳近くになってからの回想と思われる部分もあり、少し特異な感じがしましたが・・。

幼くして父を亡くしたサルトルは、祖父が君臨するシュバイツァー家に、母といっしょに戻ってきて、大人だけの中で、成長します。

幼少の頃の自分の内面や、まわりの大人たちの心理の分析も、さすが、辛らつです。

サルトルがなぜ、本を書くようになったのかというのは、ただ祖父に気に入られたいためだったのかと、回想する場面があるのですが、それすらも茶番と言い切って
います。

そのくだりでは、プルーストの「失われた時を求めて」に出てくる、スワンを引き合いに出しています。

「恋から覚めてみると、好みでもない女のために一生を棒にふった。」と言うスワンのことです。

サルトルは、祖父に気に入られたかったために「言葉」で、一生を棒にふったとは、もちろん、思わなかったと思います。

プルーストのスワンと同じに、ミュッセのこの言葉も、印象的でした。

「最も絶望したものが、最も美しい歌である。」


彼は言葉で、彼の生きた時代を、自分の幼少の頃の、自己分析から描こうとしたのかもしれません。



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