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「死後の恋 夢野久作作品選」 

2017-10-13 | 読書




好奇心から「ドグラ・マグラ」を少し読んで挫折したので心配でしたが、そんなに面白いなら私も続いてみようと思って。惚れたのねと#棚の一覧を眺めたのです。

不思議な文体にあふれている、初めての久作ワード、カタカナも混じっていて、読み慣れるのに少し時間がかかった。

「死後の恋」「瓶詰地獄」は名作ということで、ストーリーだけ取ると、家系を守るために男になり、死んだ後に持っていた宝石だけが残されるというのは、特に戦争や革命で社会制度の変わり目に揉まれて死んでいくということは珍しくないと思ったが、死の悲惨な姿や残された宝石との対比が見てきたような凄さをもっていた。それに、ロマノフ王朝の令嬢が男装していたという意外さもあって、ちょっと悲しい片想いも絡むという作りは、ミステリにはこういう話も作れるのかと着想が面白かった。

「瓶詰地獄」も兄妹が二人きりで島に取り残されて成長する間には、愛も恋もあるに違いない、血のつながりが成長とともに背徳地獄に落とされるというのは、別に驚くことではないと思いながら、健康的だった二人が成長するにつれて地獄の思いにとらわれていく様子が残酷だった、成長過程の心理は読者には手紙でしか知らされない。瓶の手紙が書かれた順に届くのではないというテクニックがやはり巧みさなのかと思う。

「悪魔祈禱書」は、くだけた一人称の語りが面白い。ふたを開けてみると、という最後になって思わず拍手。好きな作品だった。

「いなか、の、じけん」
事実なのか創作なのか、実際にあった話だと作者が言っているのも面白く怪しいけれど、びっくりの田舎の出来事が書かれている。
世界には「奇想天外」な話はおおくて、興味があるのでTVを見てはへぇ~と驚いている。田舎には、こんな怪奇な出来事が起きる、かもしれない。まだ今よりもっと夜が暗く山が深かった頃、妖怪や、狐狸や、貧しさや、男と女のもつれや、心の乱れが死の狂気を招く。
最後の一行で恐ろしい話の種明かしをされてはっと我に返る。かつての田舎経験者なので雰囲気がよくわかって面白かった。

「怪夢」「木魂」は自分が作り出した怪異に憑かれる。現実と幻の中で恐怖に震え命を落とすなど、今でもないとは言えないかもしれない。こういう手慣れた恐怖話は、真骨頂かなと思わず震えた。

「あやかしの鼓」は技巧的な文章で、ストーリーも鼓にまつわる因縁噺が世代を超えて伝わる。芸事に憑かれた人達の怨念や執念がこもる道具立ての話は多いが、鼓の音色に現れるというのは興味深かった。お囃子の調子、不気味な音が聞こえるようだったが、鼓に籠った執念ということが実は、精神的に倒錯した人たちの狂気が作り出した因縁噺かもしれず、雑誌の入選作だというのは、知られた話かもしれないが、後にある批評を読むと興味が倍増される。
鼓が作られた当時悲劇が続いて、作者の怨念がこもったということで、封印されるが、やはりそういったいわれのあるものは、打ってみたいというのが人情で、それが災いを招く。鼓にまつわる薄気味悪い出来事が続いている。もっと怖がらしてほしいと、不吉を呼ぶ「あやかし」の増量を期待しつつ。人間関係の不思議さ気味悪さなど充分怪しかった。
狂気の伝承を扱ったようなストーリーと独特の夢野ワードにうまく引きずり込まれた。変態女性は少し書き方が荒っぽく苦手なのかなと思ったが。やはり変態は美人でないと似合わないかも。

選者は、知らない方々もいたが江戸川乱歩の率直さが愉快で納得する部分も多く、あぁこの方は実在した人でこういうことを書くこともあるのかと当然のことだけれどひどく身近に感じた。
なんだか時々は、今の様々な賞についている評が生臭く感じることがあるだけに、こういう時代があったことにちょっと感動した。
受賞した夢野さんの謙虚ながら裏話めいた「所感」は、微笑ましかったし、解説を読むと10年足らずで書き溜めた作品で全集が刊行されたという、書く威力を感じた。そのうち『ドグラ・マグラ』が読めるようになるだろうか。名作というものを読むと、好奇心だけでは足りない気がしてきた。



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HNことなみ

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