安倍政権と「恐怖社会」

2016-02-22 13:52:42 | 社会運動

 最近、ある学者の論文で知ったことですが、いまの日本社会の壊れ方を示すデータとして、独立行政法人情報処理推進機構の「情報セキュリティの倫理に対する意識調査」(2014年)が紹介されています。

 その調査では、スマホやパソコンから悪意のある投稿をした経験のある人が、およそ4人に1人にのぼっています。さらに、投稿の結果、どんなことを感じたのかという問いに、「気がすんだ、すっとした」31.9%、「何も感じない」27.6%で、「やらなければよかった」13.6%の2倍以上になっています。ネット上では、匿名をいいことに、本当に見るに堪えない投稿が目立ちますが、社会の荒み、人間と人間の関係がどんどん壊れていることを痛感します。

 この論文では、安倍政権が「1億総活躍社会」といっていることの欺瞞性とこれが恐怖政治になっていることを指摘します。

 「1億総活躍社会」といって、介護離職ゼロ、待機児童解消、最適賃金1000円とはいっても、実際の政策はまったく逆になっているわけですから、漠然とした期待感を醸し出す選挙対策、支持率対策という側面が強いと思います。アベノミクスの失敗を覆い隠す面があることは軽視できないと思います。

 さて問題は、政府が一応貧困対策とはいっても、貧困を根絶するための政策をとるのではなく、「貧困になるとこんなに大変なのだ」ということを見せることが大きな特徴になっています。

 貧困の状態が世間にさらされる、社会にあることが明らかになることで、人々をそうならないように何とかしようという不安と恐怖に駆り立てるーここに安倍政権の特徴があります。

 貧困をはじめさまざまな困難が、人々を「自分はそうならないようにしなければならない」という心理に追い込む「さらし台」となっています。貧困でも何でも、そうならないためには「自分や家族の努力で頑張らないといけない」と個人のレベルに置き換えられます。力を合わせて社会を変える方向でなく、何とかしてそのなかで生き延びるために頑張らないといけないという心理に追い込まれる。これが「恐怖政治」「恐怖社会」です。

 いま「下流老人」という言葉ができています。「老後のためには、退職時に2千万円の退職金では足りない、3千万円以上必要だ」ということがNHKでも言われています。でも、退職金を2千万円以上もらえる仕事がこの国に一体どれだけあるのでしょうか。非正規の現役労働者がこの言葉を聞いて、何と思うのでしょうか。こうやって、「何としても有名な学校に」「名だたる大企業に」と若い人々が追い込まれていきます。

 これは、貧困の問題だけではありません。昨年、川崎市で中学生がいじめで殺された痛ましい事件、加害者の家族だけでなく、被害者の母親もネットで攻撃されています。被害にあっても「お前の落ち度だろう」と。自分にちょっとでも「弱み」や「落ち度」「スキ」があると攻撃される。「恐怖社会」になり始めています。

 個人の困難の多くは、社会と政治に起因するものです。そうは見えない個人の資質に見えるものでも、育ってきた環境によることが少なくありません。個人の落ち度を個人の責任のみに転化しないで、社会全体で考えていける、こんな優しい国をつくらないとけいけません。

そのためにも、まずは安倍政治を倒すことです。