バロック音楽は通奏低音の音楽とも言われます。
チェンバロやオルガン、そしてリュート、ハープなどの和音が演奏できる楽器とチェロ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ファゴットなどの低音旋律楽器が通奏低音パートを担当します。
組合わせは自由で、もちろんリュートだけでも構いません。
楽譜の上段は旋律のパート。フレンチ・ヴァイオリン・クレフ(G音の位置がト音記号より線一本下)で書かれています。
下段が通奏低音パート。低音の旋律と和音を示す小さな数字が書き込まれています。
ピアノ譜でいう右手の楽譜がありません。演奏者は自由に即興的に和音や旋律を付け加えて伴奏していきます。
訓練された奏者なら、曲の練習はほとんど必要ありません。
これはジャズのセッションとほとんど同じ感覚です。
私はジャズスクールと古楽科の両方で学びましたが、バロックとジャズの和声の理論は基本的には一緒です。
バロック音楽は性善説に基づいていて、演奏者の可能性を信じ、その人らしさや個性が充分活かせるように配慮されているとも言えます。
ベートーヴェンやショパンなどクラシックの作曲家も即興演奏の名手でしたが、、現代ではクラシック音楽は決められたことをきちんと弾くという面が強調されてしまったとも言えると思います。
プロのリュート奏者にとっては通奏低音が初見で自由に演奏できるということが大切な要素だと言えるでしょう。一人の歌手の伴奏からオーケストラまで、いろいろな人とアンサンブルして、そのときのインスピレーションを大切にして、一緒に音楽を創っていく素晴らしさを体験することができます。