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花の寓意

2008-07-18 03:48:39 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
今日の夕方、表参道での打ち合わせ帰り、代々木公園に寄り道した。
芝を刈り取った直後らしく、むせかえるような草いきれの宵闇に、ぽっと満月が浮かんでいた。

中央の池では、夕涼みをする人々の姿がちらほら。何か光るものを回して遊んでいたり、
パーカッションやタップを黙々と練習する音が聴こえる中で、噴水をほおっと眺めていた
エプロン姿のお婆さんの後姿がとてもかわいらしく、そしてすこしかなしかった。


公園の一角にある薄暮の薔薇園。秋冬は素っ気ない空間だけど、花がある時季は気配から違う。
黄昏時の薔薇は、なぜこんなに甘美なんだろう。そして、やはりすこしかなしいのだ。


☆☆
月曜は、母と「ウィーン美術史美術館所蔵 静物画の秘密展」を観に乃木坂の国立新美術館へ。
17世紀にフランドル地方やイタリアで流行った静物画の名作が多々あり、予想以上に前のめりに鑑賞。
特に興味深かったのは、ベラスケスの「薔薇色の衣裳のマルガリータ王女」もさることながら、
ヤン・ブリューゲル(父)の「青い花瓶の花束」(1608年)。尋常ならざるディテールに目が釘付け。

ここに、実に百数十種の花が描かれているそう。この花瓶にそんなに挿せるわけもないのだが(笑)
当時の静物画は、さまざまな寓意を表すために周到に配列されたフィクションの世界。
花は“大地”、貝は“水”、髑髏は“空虚”など、さまざまな暗喩に満ちていて面白い。

ボッカチオの一幕を描いたルーベンスの「チモーネとエフィジェニア」も生で観ると、息を呑む。

しどけなく眠るエフィジェニアと目が合い、チモーネ君がはっと恋に堕ちた決定的瞬間。
かなり巨大な作品である。エフィジェニア嬢の妖艶極まりない流し目の迫力はぜひ生で(笑)

午後は御茶ノ水へ。ニコライ堂で母と別れ、私は仕事の打ち合わせに、母はパーティへ。


☆☆
火曜は、サンマリノ共和国大使館へ。

六本木ヒルズ裏、元麻布の入り組んだ路地の一角にある密やかな一軒家が大使館。
サンマリノ共和国はイタリアの中にある世界屈指の小さな国。
先日、歴史的地区が世界遺産に登録されたそう。

大使館の一角。中央に鎮座ましますゴールドの仏像、どう見ても東南アジアものっぽい。。


ここで、特命全権大使のマンリオ・カデロ閣下、アバンギャルドなフラワーアーティスト秋谷祐子氏、
芸大准教授の布施英利氏というなんとも不思議な組み合わせの鼎談取材。テーマは、花。
これは秋谷さんの作品。男性が女性にメタモルフォーゼしている瞬間だそう。

胸から蓮ではなく、内腑から真紅の薔薇。花に潜むさまざまな暗喩が想像力を刺激する。

むろん、ブリューゲルであろうと、誰であろうと、その作品の読み解き方は、ひとつではない。
あくまでも、解釈は受けとめるひとしだい。絶対的な正解など存在しない。

☆☆
花といえば、ここのところずっと部屋に百合を欠かしたことがない。
うちのニキコーナーにも相変わらず、百合。黄色い百合だったり、薄紅色の百合だったり。

白い百合は聖母マリアの象徴でもあるのだが、私にとって百合は――とくにその香りは、
彼岸と此岸を結ぶメディアのような存在なのだ。
もうすぐ、盟友みるの命日。明日も、うつくしい月が見られるといいな。
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コメント
 
 
 
Unknown (すみ太)
2008-07-18 21:34:42
私も、お隣のおばさんから白い百合を頂き玄関に飾りました。
百合の香りは血糖値を下げるらしいです。
美しくない表現ですみません(笑)
明日あたりお墓の掃除に行くつもりです。
 
 
 
Unknown (LunaSubito)
2008-07-18 23:05:38
へぇ百合の香りって血糖値下げるんですか?
じゃあお腹が空いているときは
嗅がない方がいいかもですね(笑)

みるコーナーには、ひまわりを活けようかな
と考えています。あのかんかん照りの日に
視た大輪のひまわりが瞼に焼き付いて離れず、
命日が近づくたび、ひまわりが目に浮かぶのです。
 
 
 
そうだ。また夏がくるのね。 (くま)
2008-07-19 01:28:46
暑かったね。
一報を受け取った時も蝉時雨がすごかった。
目白・菊水荘の階段でしゃがみこんだのを思い出します。
 
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