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冬のタンゴ in アダン・オハナ

2007-12-24 04:05:33 | Music
街路樹の向こうにみえた、冬至あけの輝ける満月。
街中に溢れかえるどんなクリスマスイルミネーションより 冴えたひかり。

Buon Natale! こころあたたまるクリスマスを。

☆☆☆

昨夜は、「アダン・オハナ」で冬のタンゴLive。
先週、同店でのブラジリアンライブの話をブログに書いたが、
あの時にとても魅力的な演奏をしてくれたバイオリニスト江藤有希さん
バンドネオン奏者の早川純さんによるコラボレーションだった。

夜の帳に吸いつく流麗な旋律、月を震わす甘美な響き。
奏者と楽器が融けあって その瞬間だけそこに奇跡的に存在するいきものみたいに見えた。
音楽のタフでナイーブな身体性を、ときに鳥肌を覚えながら、実感した。

早川さんが奏でていたバンドネオンは20世紀初頭のドイツ製とか。
バンドネオンというのは19世紀末に、ドイツの教会の携帯用オルガンとして創られたものらしい。
ただ、オルガン状に鍵盤が整然と並んだアコーディオンとは異なり、
バンドネオンは音階が独自に配置された30個ものボタンが左右についており、
その組み合わせでさまざまな和音を奏でるそう。
しかも、蛇腹の動かし方によって その音色は複雑に変化する。
こんなややこしいものを操れるひとは、もはや私には“魔法使い”にしか見えない。。

バイオリンは、私も幼児期に習っていたので、さすがに“魔法使い”とは思わないが
わずか4本の弦と弓だけで あれほど多彩な音色を奏でることの難しさは身にしみてわかる。
バイオリンを弾く江藤さんを見ていると 全身でこの音楽を愛しているのが伝わってくる。

そういえば、、、おもちゃみたいにちっちゃなバイオリンを、乳歯がまだいっぱい残る下顎に挟み
ぎこぎこきごちない音で「きらきら星」や「メヌエット」や「ガボット」をお稽古していた幼いとき、
あんな風に自分の身体の一部みたいにバイオリンを弾きこなせるひとに憧れていたなあ。。

ふたりは、すぐ眼の前でピアソラの「リベルタンゴ」を弾いてくれた。ぞくっと鳥肌もの。
ヨー・ヨー・マが演奏したサントリーCMや映画『12モンキーズ』でも使われていた名曲。
タンゴは人種が交錯する社会のはけ口に男同士で踊ったり娼館で奏でられたのが最初らしいが、
王家衛の映画『ブエノスアイレス』でもトニー・レオンと在りし日のレスリー・チャンが、タンゴを濃厚に
踊っていたっけ…そう、王家衛は『花様年華』や『欲望の翼』でもタンゴを効果的に使っていた。

ベルトルッチもタンゴ好き。私のベスト1映画『暗殺の森』でも、ステファニア・サンドレッリと
ドミニク・サンダが30年代のエレガントなドレスを纏ってタンゴを踊る妖艶なシーンがあった。
↓どこを切り採っても甘美な画になるこの映画の、面目躍如たる名シーン。

同じベルトルッチの『ラスト・タンゴ・イン・パリ』でも、その名の通り、
ラストにマーロン・ブランドとマリア・シュナイダーがタンゴを踊るシーンがある。
アルゼンチン生まれのガトー・バルビエリによるタイトル曲「ラスト・タンゴ・イン・パリ」もしびれる。
昨日のブログでも書いたフランスのユニット「Nouvelle Vague」も、
珠玉の映画音楽を集めたコンピ『Coming Home』の冒頭に、いきなりこの曲を収録していて快哉!
だったし、やはり昨日のブログに書いたイルマレコーズのコンピにも、
この「ラスト・タンゴ~」やピアソラ「リベルタンゴ」の秀逸なカバー曲が収録されていた。

余談ながら、むかし 「オレもパリでタンゴを踊りたいよ」と
年末の繁忙期に嘆息していた同業者が居て 大爆笑した記憶がある。。

☆☆☆
そんなこんなで、冬のタンゴって、ほんっといいですね(わ、往年のみずのはるおみたい…)。
息が白くなる夜、タンゴの在る空間に身を置くと、
甘苦く濃ゆいホットチョコレートが喉を滑りおちていく瞬間みたいに、
寒さで縮こまっていた身体が、魔法のようにとろけていく。
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