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2つの写真展とユルスナールの靴

2008-11-09 07:55:16 | Art
週末、打ち合わせ帰りに銀座で見つけ、思わず連れてきた薄紫色のレースフラワー。
うっすら曇った空の色に融けてしまいそうな。


木曜は夕方に代官山でパリから来日していたマダム キャロル・フランクのインタビュー。
金曜は朝から汐留の日テレで原千晶さんのインタビュー。
冷たい雨がおちるという天気予報はあっさり外れ、眩しいほどの秋晴れ。

たまたま日テレのロビーで流れていたニュースで、イタリアのベルルスコーニ首相が
オバマ氏を「若くハンサムで、日焼けしてる(giovane bello e anche abbronzato)」と評した
人種差別問題が報道されていた。あちゃー なんておばかなイタリアンジョークを全世界の電波に。。


金曜は取材帰りに写真展をはしご。
まず、近所のラムフロムで始まった瀧本幹也 新作展「Iceland」へ。
エントランスには瀧本氏とのコラボレーションが多い坂本龍一氏からのお花も。
Icelandで今春撮影したという不思議なコントラストのランドスケープは、何処か別の惑星の如し。

ときに…Icelandって この世界的な金融波乱の余波であらゆる金融機関が破産寸前に陥っている国。
マネーに翻弄される世界と この静謐な風景との乖離を思いつつ、絵画のようなプリントに眼を奪われ。


いったん帰宅後、夜は筑波時代の先輩 芝田文乃さんの写真展を観に新宿三丁目へ。

真ん中が文乃(あやの)さん。お会いするのは多分10数年ぶり(!) でもほぼ変っていない印象。
彼女はポーランドのクラクフに毎夏長期滞在しており、1年間に撮影したモノクロスナップの中から
約30点を選び、「いったりきたり」シリーズと銘打った写真展を開催している。今回はその9回目。

「芝田文乃写真展 いったりきたり日記 / 2007年版」 本日最終日!必見!
2008年11月1日~11月9日(日)13:00-20:00 @galeriaQ 新宿区新宿3-8-9新宿Qビル4F
新宿三丁目駅 C5出口正面(1F「雪園」。途中階にセクシィなお店があるけどめげずに4Fへ!)

国や街を問わず、何かを待ち受けたり構えることもなく、ふと興味を持った対象や場面を
時にはファインダーを覗くことさえなく 直感的にシャッターを切った写真には
すれちがう瞬間の人々(あるいは小動物)の無防備な仕草や表情、佇まいが絶妙に活写されている。
名前も知らない人たちの それぞれの物語が、奥深い群像劇のように浮かび上がってくる面白さ。

今回の作品とは異なるが、過去の文乃さんの作品にも好きな写真がたくさんある。
これは1992年 芝田文乃写真展『ポーランドの夏休み』より。


これは1993年 芝田文乃写真展『うつつの途中』より。

写真展では過去の写真展の図録も閲覧・購入できるのでぜひ!


☆☆
ハロウィンが終わったとたん、街にはクリスマス装飾がちらほら。
年々 クリスマスが前倒し化している印象だが、意外にも銀座はまだ控え目だった。
打ち合わせ帰りにニューメルサ前で見たLois CRAYONのディスプレイはクリスマス色ゼロ。
スーパーブランドが軒を連ねるなか 非常に地味ながら、実際の本がぎっしり並んだ書棚がナイス。


これは新宿から帰る道すがらに見た伊勢丹の変化球的クリスマスディスプレイ。



近々、紅玉をいっぱい買ってきてタルト・タタンを作ろ――と、これを見て決意。。


土曜はちょっとけだるかったので、日がな一日ゆるゆる過ごすことに決め込む。
ブランチに胡瓜と卵とハムのサンドイッチをどっさりこしらえ、午後はひたすら怠惰に。。
 
うー 我ながらワイルドなできばえ。。前夜に伊勢丹で見たリンゴディスプレイのサブリミナル効果で
(或いはえとさんに伝授されたミドリカワ書房『リンゴガール』の影響か…?!)デザートはリンゴ。

夜はベッドで10年ほど前に読んだ須賀敦子著『ユルスナールの靴』の文庫本をつらつら。

冒頭の3行で本の真価は解る(特に小説やエッセイ)、というのが十代の頃からの持論なのだが
この本は、まさにそれを裏切らない一文で始まる―
「きっちり足にあった靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。
 そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、
 私はこれまで生きてきたような気がする。」

―靴をモティーフに語られるユルスナール×スガワールドが、こんな日はただただ心地よい。
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