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カーナビより昭和の古地図

2007-12-07 10:25:11 | Tokyo 闊歩・彷徨・建築探偵
また徹夜明け。ここんとこ、毎日なにかしら原稿を出す約束ごとを果たしており、
かなり寝不足続きの毎日。打ち合わせから帰ってきたら、必ずソファーで一度は
ニキと一緒にまるくなって昏倒している。

しかも、昨日は私の天敵ともいうべき朝一打ち合わせ。。
しかも、絶対に遅刻できないクライアント。。
しかーし。朝がんばって起きてメトロに向かったはいいが、明治神宮で人身事故があったとかで
地下出口からは 電車に乗れず途方に暮れ顔のメトロ難民がわらわら。。。
そのまま、みな携帯で遅刻の言い訳をしながら井の頭通りになだれ込み、今度はタクシー難民に。。。

私は山手通まで戻ってなんとかタクシーを拾い、運転手さんに品川まで飛ばしてと懇願。
しかし、師走の朝のラッシュアワー。どう考えても渋滞に巻き込まれることは必至だ、、
と半ば諦めていたら、赤信号以外は見事にノンストップでスイスイ品川に到着!
5分遅れ程度で、やきもき待っていたデザイナーさんも「え、はや!」とびっくり顔。

運転手さんも「40年東京でタクシー運転してるけど、こんなことはめったにないなあ」と呻っていた。
ちなみに、原宿方面から来たという運転手さんいわく、明治神宮駅周辺には
消防車や救急車が集まっていたとか。。何の事故かは結局わからないままだが、
不幸中の幸いというかなんというか。

しかも、車中、初老の運転手さんが、すごくおもしろかった。
彼の車は、いまどき珍しくカーナビ無し。
代りに、品川駅東口が再開発される前のかなり古びた紙の地図を使っておいでだった。
私が行きたかった会社も、地図上では社名変更する以前の名前で掲載されていた。
それでも彼は、私が目的地の住所を言うと、黄ばんだセロハンテープでところどころ繕ってある
地図をちゃっと見て、「ここが混んでいたらこの裏道抜けますねー」などと説明しながら、
時おり、高度成長期やバブルの頃からの東京の様変わりぶりを呆れたように語りながら
実によどみない運転で目的地に運んでくれた。流石40年のキャリアはあなどれない。

私は、昔の東京を肌身で知っているひとの話を訊いたり、読んだりするのがひどく好きだ。
書棚の一角にある、昔の東京が出ている写真集とか古い地図をうっかり開こうものなら
そのまま時を忘れて脳内タイムトリップしてしまう。(昭和萌え?)
『三丁目の夕日』のセットやCGで蘇った高度成長期の東京より、
その方がリアルでエキサイティングなのだ。

ちょうど10年前に上海を訪れた時、(たぶんいまではすっかり取り壊されているのだとは思うが…)
朽ちた家々が並ぶ狭い狭い路地裏をきゃっきゃと走る子供たちや、その子たちに向かってなにか
怒鳴っている雑貨屋のおばあちゃん、道端に椅子を出し、上半身裸でぼんやり涼んでいるお爺ちゃん、
鉄製のアイロンをかけているお姐さん・・・そんなのどかな光景が、どこか昭和30年代の
日本みたいでいいなあと、その時代にはまだ生まれてもいないのに懐かしく思ったものだ。

いま、上海でも東京でも、そんな懐かしい感じの風景は日に日に失われている。だからこそ、
その時代を知るひとの言葉や思いが、しみじみと身にしみる。

品川で昼をまたいで3時間近く、緑茶一杯でノンストップの打ち合わせを終え、
おっかなびっくりで明治神宮の駅で乗り換えたが、構内も周辺も、
もはや何事もなかったかのように平和そのものだった。

帰途、あまりに良く晴れた冬の空が心地よいものだから
代々木小公園界隈を迂回してみたら、外国人の子供たちがブランコをこれでもかと漕いでいた。
小公園の並木路は、紅く色づいた落葉樹と常緑樹のコントラストが美しかった。


路地裏には、顔見知りのモップの先みたいな猫。なんでも、さらわれて一時行方不明だったのが
自力で逃げてきた際に足をくじき、そのまま足を引きずるようになってしまったらしい。。がんばれ!

最近、この近辺にもついに巨大なタワーマンションが建つことになったよう。
猫たちがのんびりまどろめる路地が東京からどんどん奪われていくのは、ほんとうにせつない。
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