ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

”新日本紀行ふたたび”のテーマ曲って

2007-02-12 04:05:56 | その他の日本の音楽


 かってNHKで、日本各地の風土と歴史を訪ね歩く「新日本紀行」なる番組が放映されていた・・・そうですね、私はあんまり見た記憶がないんで、よく知らないんだが。
 一昨年からそれは、「新日本紀行ふたたび~NHKアーカイブス~」として再開されているのであります。”「新日本紀行」で訪れた日本各地をもう一度訪れて、当時との歴史比較を展開していく”との企画だそうで。

 土曜日の午前中に放映されているこの番組、その日の深夜、というかもう翌日の早朝ですね、午前4時過ぎから5時にかけて再放送が行なわれていて、こちらを私はほぼ毎週見ている。というか、テレビをつけっ放しにしてネットをやっていると、この番組が勝手に始まってしまうのだ。

 深夜もそのくらいになると、もう”朝”の侵略に敗色濃厚といったところで、外では早起きな鳥たちの鳴き声などもしはじめ、こちらもそろそろ覚悟を決めて就寝にかからねばならなくなってくる。そんな時間に流れ出すこの番組のテーマがなかなかに不思議な効果を及ぼすのであります。

 音楽を担当しているのは、シンセ音楽でもその名をはせた富田勲氏であり、例の郷愁に満ちたサウンドを現出させているんだけれど、この”ふたたび”では薩摩琵琶奏者坂田美子のボーカル入りとなっている。

 この歌声を最初に聞いたとき、何なのかなあ?と思いましてね。民謡調と言えば民謡調のメロディなんだけど、歌っているのが民謡歌手のようでそうでなし、演歌歌手でもなしと。どういう歌い手なんだろう?ちょっと気になった。
 世俗を離れたというか、現実とは一枚、皮を隔てた響きがある声であります。なんだか今とは時代を隔てた場所から響いてくる感じ。中世の日本から聞こえてくるみたいに聞こえるのですな。

 その歌声の余韻を心に残したまま番組を見ていると、遠くの町の商店街の人々や夜の都会で働く人々などの生活が、歌声が幻として垣間見せた中世の日本と確かに血においてつながっていると、この列島に生きてきた人々の暮らしが、延々たる見えない連鎖のうちにあると妙に生々しく実感させられるんですな。
 むしろ、歌声のうちに幻想として浮かんだ中世が現実のもので、今日に生きる我々の日々が中世の日本人が見た奇妙なつかの間の夢の中の出来事ではないか、なんて気さえしてくる。

 もう一回断っておくけど、深夜のやや異常な精神状態で番組を見ておりますからね、覚醒しているべき感覚が麻痺し、眠っているべき感覚が冴え渡っている部分はあるかもしれません。

 で、調べてみたら、先に述べましたように薩摩琵琶奏者の歌声であった、と。かってこの国に大衆芸能として普遍的に存在した芸能であった、琵琶を伴奏の語り物芸。確か仏教説話などを持ち芸とした、中世日本における吟遊詩人とも言いうる存在だったのでしょう、琵琶法師というのは。
 そして、坂田美子氏は芸大などでも琵琶を教えておられる、そんな立場である。なるほどなあ、あの”時代を超えた感じ”は、その辺りからやって来ていたのかと頷いた次第であります。

 それは良いんだけど、この「新日本紀行ふたたび」のテーマって、CDとして発売されていないんですね。ちょっとネットを探って知ったんだけど。マイナーなレーベルから、坂田氏の琵琶弾き語りヴァージョンが出てはいるものの、富田勲氏のオーケストラ入りのものは製品化されていない。これはもどかしいものがあるではないか。

 どこに責任があるのか知らないけど、とりあえず何とかしろ、と言っておくものであります。うん、私もCDできちんと聴いてみたいんだよ、この番組のテーマを。


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