ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

オルガンのある街角

2007-09-21 03:11:12 | 南アメリカ


 ”Organo Oriental,Street Organ Music of the Oriente de Cuba”

 残暑厳しき折から、と言うことでこのようなタイトルのアルバムを聞いているわけなんです。

 まあ要するに伝統派のキューバ音楽のアルバムなんだけど、オルガンがメイン、というのが珍しいところ。上に添付した写真をご覧になれば分かるとおり、なんか古色蒼然たる代物ですな。音の方も、いまどきあんまり聞かないブカブカした音色の、いかにもオルガンて感じです。シンセとかじゃもちろんないし、キーボードって呼び方もピンと来ない。やっぱりオルガンと呼ぶしかない。

 ストリート・ミュージックということで、どうやらこの古びたオルガンを通りにガラガラと引っ張り出し、パーカッション群(このCDのメンバー表を見ると、コンガ+ボンゴ+ティンパレスの黄金のトリオにマラカスやギロ、たまにトランペットを吹いたりヴォーカルを担当したりするメンバーが加わった5人編成)をバックに、キューバ音楽の懐メロをひたすら弾きまくる、という音楽のようです。

 どこからこんな編成が出来上がったのか分からないし、これまでこんな編成のラテンも見た事がない。ほんとに路上のみで営々と生き抜いてきたキューバ音楽のもう一つの演奏形態があった、ということなんでしょう。

 モノが鍵盤楽器ですからね、それも素直にメロディを奏でて行くんで、ラウンジ風に当然なります。なんとなくテクノな感じ(笑)も醸し出してみたり、ワッと厚い和音を重ねられると、擬似ストリングスの趣も漂い、弦セクション+パーカッションのマラヴォワなんかを思い出したりする。
 その一方、ホーンセクションが存在しない分、パーカッション群の動きが生々しく伝わってきて、結構血の騒ぐ部分もあります。ある意味、打楽器演奏の勉強になったりするんじゃないか。

 解説を読んで行くとこの演奏形態、家族によって編成され、街角での”興行”がなされて来たとのこと。お父さんがオルガンを奏で、子どもたちが打楽器を。
 そういわれてみると、ということでもあるんでしょうか、聞いて行くうちに、演奏者たちがオルガン奏者の周りで丸くなって顔を見交わし、励ましあって演奏を続けているような暖かい独特のグルーヴ感が伝わってくるのでありました。

 しかし、不思議な風景だろうなあ、ラテン・オルガンバンドのいる街角。