ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

フジミュージック3本勝負・後編

2007-05-22 05:22:13 | アフリカ


 ” FLAVOURS(の2枚目と3枚目) ” by KING WASIU AYINDE MARSHAL

 というわけで、フジ・ミュージックのワシウ・アインデ・マーシャルの新譜3枚組への挑戦は続くのであります。

 そもそもナイジェリアのフジ・ミュージックとの出会いは、同好の志の皆さんと同じくでありまして。あのサニー・アデが”シンクロ・システム”で国際的な成功を勝ち得た80年代に、「ナイジェリアには、こんな音楽もあった」なんて形で知った次第です。

 かの国のイスラム系の人々が生み出した音楽であり、トーキング・ドラムを中心とする打楽器だけによるストイックなサウンド構成、強力なイスラムっぽいコブシを伴うボーカルなどなど、非常に独特の響きがあり、西欧のポップスの影響がまったく感じられない、アフリカ的洗練の極地とでも言いたいその美学が、たまらない魅力でした。

 で、すっかりファンになったのはいいけれど、その後、ナイジェリアの音楽そのものが我が国にはレコード等もまるで入ってこなくなってしまい、もどかしい思いがずっと続いている訳なんですが。

 さて、2枚目。スタートさせるといきなり飛び出すワシウの強烈なしわがれ声。イスラムっぽいコブシがコロコロの痛快なもので、ついで飛び出すトーキング・ドラムの連打。おお、フジだフジだ。こいつは良い。
 1枚目に収められていた演奏よりグンと良くなっている。なにしろこちらはドラムセットが使われておらず、あくまでもトーキング・ドラム中心の重心の低いビートが演奏をリードして行く、それが嬉しい。

 が、喜んだのもつかの間、2曲目はなんと、コンゴ風のギターの音などが派手に鳴り渡るリンガラ調の曲が始まってしまう。なかなかパワフルで出来は良いけど、なにもワシウの盤を買ってまでリンガラを聞く必要はないんだが。

 その後も、正調フジに戻るかと思えばハイライフ風の演奏が始まったりの調子で、もしかしてワシウの今回のアルバムにおける真意は、アフリカ各地の大衆音楽を網羅することであるのか?などと首をかしげた次第。何をやりたいんだろうなあ、彼は。
 なんて調子でいちいち書いて行くと疲れてしょうがないのでラストに行っちゃいますけど、3枚目なんか相当に良い、オーソドックスなフジ・ミュージックの演奏です。

 とにかく原点に返ったプリミティブな響きが良い。この辺は、フジの世界の流行の中心がメロディ楽器の導入等、軽く明るい方向へ流れた際にもプリミティヴな打楽器中心の音作りに固執したワシウの面目躍如たるものがありますな。
 でも。なんですかね、そんな演奏が快調に続く3枚目にいたっても、やはり途中でサックスの音が響き、ハイライフ風の演奏が差し挟まれてしまう。もったいないなあ。フジ一辺倒でやってくれたらどんなに良いか。

 ワシウの真意は分かりません。まあ、聞く側のこちらもフジに固執するのはやめて飛び出してくるすべての音楽を楽しんでしまう気持ちになれば、それで良いのかも知れない。知れないけど・・・

 遠いアフリカ、ミュージシャンの考えなど、分かっていたつもりが全然見当も付かないものだよなあと、チョイほろ苦気味の結論であります。いや、良いんだけどねえ、演奏そのものは。