ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

台湾旅行・歌のアルバム

2006-02-24 02:41:09 | アジア

 風邪が治ったと思ったら不注意から転倒、右肩の骨にヒビを入れてしまいました。現在、左手でしかパソコンも操作できない状態で、こちらの更新もままならずといったところなのですが、まあ、あんまり音沙汰ないのもいかがなものかと。ちょっと書いてみました。うー。左手だけだと、ほんと、時間がかかるなあ。

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 チャイナドレスを来た昔っぽい美女が、川辺の芝生に昔っぽいポ-ズで座っている。そんなジャケのカセットがあって、タイトルに「雨夜花・台湾旅行-歌のアルバム」とある。

 聞いてみると、まず、修学旅行の時のバスガイドのお姉さんみたいな喋りで、「赤いジャスミンの花咲く美しい南の島、台湾。まさしく地上の楽園の名に恥じないでしょう」などとナレ-ションが始まる。そして、あきらかに中華系の女性が歌っていると思われる、やや怪しげな日本語まじりの歌詞による、台湾の懐メロが歌い継がれてゆく。一曲ごとに、ちょっと不思議なアクセントの女性(訛った日本語を覚えてしまった中国女性か?)による、やや時代がかったナレ-ションが付く。「玉欄の香気漂う頃ともなれば、恋をささやく甘い二人ずれも増えてまいります」

 どうやら、日本人向けに台湾で作られた、音楽による台湾紹介のためのカセットかと思われるのだが、独特の時代がかった言葉使いのナレ-ションを聞いていると、台湾という島が、どこぞの観光地にある「秘宝館」のでかい奴みたいに思えてきて面白い。
 なんだこりゃ?と思うのだ。表面上は日本人向けに作られた台湾旅行のみやげ物みたいな作りだが、こんなものを台湾土産に買って行く日本人は、実際にはいないだろう、多分。

 知り合いの”しゃらっぷセルジオ”さんからの情報によると、これと同内容のLPが30年以上も前の台湾で、すでに存在が確認されているそうな。目の前にあるカセットはピカピカの新品であり、とすれば、この代物は、アナログ盤LPからカセットへと姿を変えながら30年以上もロングセラ-を続けている事になる。だけど・・・再び問う、一体、どのような層からの需要があって、このアルバムは生き延びているのだ?

 これは私の推量なのだが、植民地時代に日本文化の洗礼(押しつけ)を受けた体験のある世代の台湾の人々のうちにある、郷愁、といってしまってはあまりに配慮に欠ける事になる「ある感情」にヒットする何者かが、ここにはあり、それゆえ、このアルバムは、30年の長きに渡って、人々に愛されてきたのではないか。
 つまりこれは、表向き日本人向けの商品のようでいて、いや実際、発売された当時の意図はそのようなものであったのだろうが、いつのまにか台湾の年配の人々だけに、奇妙にネジ曲がった愛されかたをしてしまった作品なのではあるまいか?などと想像してみるのだが。

 タイトル・ナンバ-の「雨夜花」は、台湾製の歌という事になっているが、非常に韓国っぽいメロディの三拍子の曲だ。私はこれを聞くたびに、戦前、台湾と同じように日本の統治下にあった朝鮮半島から、日本経由で流されて来て、台湾の悪場所の紅灯の巷に身を沈めた無名の女性が歌い残したメロディが元になっているのではないか?なんて想像が沸いてきてならないのだが・・・

 雨の降る夜に 咲いてる花は
 風に吹かれて ホロホロ落ちる