ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

マシューの航海地図

2005-12-26 04:09:28 | ヨーロッパ

 マシュ-・フィッシャ-などと言ってもピンとくる人もあまりいないかと思うが、プロコルハルムの「青い影」のオルガンを弾いてる人と言えば、少しはマシな反応が返ってくるだろう。
 彼は、69年度のアルバム、「ソルティドッグ」を最後にプロコルハルムを脱退後、私の知るかぎりでは、の話だが4枚のアルバムをリリ-スしている。

1)Journey's End (73)
2)I'll Be There (74)
3)Matthew Fisher (80)
4)Strange Days (81) 

 20年間に4枚だから、まあ、寡作と言えよう。と言うか、そもそも彼の作品、あまり話題になった事もないし、売れたとも思えないから、このペ-スでしか出せなかったと考えるべきなのかも知れない。音の方も、そこはかとなく「B級」の雰囲気が漂い、歴史の闇に忘れ去られて行く宿命のミュ-ジシャン、なんて言葉も浮かんでくるのだが・・・

 そんな彼の音楽、私は結構ひいきにしているのだ。一言で言えば、プロコルハルムからR&Bっぽさを抜いたような音楽をやっているのだが、彼の書く、いかにもヨ-ロッパ的な、独特の陰りを帯びたメロディは、なかなかおいしい。もともと歌手ではないので、歌声の頼り無さは仕方がないのだが、それさえも、メロディの底に流れる哀感とクロスすると、むしろ効果的に感ぜられたりする。そして、あの特徴ある響きのハモンド・オルガン。いやあ、いいよなあ・・・

 レコ-ドリリ-スの年度を見ると、バンド脱退の勢いでアルバム2枚をリリ-スしたものの、あまり売れず、80年代に再度勝負に出たものの、やっぱり売れなかった、そんな筋書きが浮かんできて、そして多分、それで間違っていないと思う。4枚とも、発売年度は違えど、音楽性はなにも変わらず。どれも同じようなサウンドだ。時の流れには、多分、1stリリ-スの時点ですでに乗り遅れている。自分の殻に閉じこもった音楽しかやって来なかったのだから、売れないのは、まあ、自業自得というか、当然引き受けねばならない運命だったろう。

 私が昔買ったアナログ盤の「ソルティドッグ」の解説を、なぜかあのユ-ミンが書いていて、そこで彼女はマシュ-・フィッシャ-を、「私にもっとも大きな影響を与えたミュ-ジシャン」と紹介している。言われてみれば、その教会っぽい(?)コ-ド進行やウェットなメロディ・ラインなど、彼とユ-ミンの音楽性、似ている部分が多いといって言えなくもない気もしてくる。特に、マツト-ヤではなく、荒井由美の頃。これ、ひょっとしたらマシュ-・フィッシャ-にとって、「青い影のオルガン」以降、最大のメジャ-な話題なのかも?

 ・・・といった、情けない側面も含めて、私は、マシュ-・フィッシャ-を偏愛するものである。(何やってるんだろうなあ、彼は今?)