月の海

月から地球を見て
      真相にせまる

イン・ザ・ファインダー 27

2020年05月15日 02時03分34秒 | イン・ザ・ファインダー

十月

 相変わらず私が本屋さんでアルバイトをしていると私の携帯に以前、
今日香と一緒に仕事をしていた須藤から電話があった。
須藤にはお台場で写真をコピーした時に電話番号を教えていた。
コピーした写真の事で話があるという。
それで須藤のいる出版社に来て欲しいというのだ。
私は少しためらったけど今日香がどういう所で仕事をしていたのか
一度見たかったので行くと言った。
 数日後、本屋さんの定休日に私は須藤のいる出版社へ行った。
どうせなら今日香の服を着て行こうかとも思ったけれど、
久しぶりに会社で仕事をしていた頃に着ていたミニのスーツで行った。
出版社の受付で須藤の名前を告げると直ぐに須藤は降りてきた。
それから受付でゲストのIDカードを受け取り須藤と一緒に中に入った。
須藤がいる編集部までは何度かIDカードを機械にかざさないと行けなかった。
さらに廊下を歩いていると一人の男の人とすれ違った。
すると須藤が頭を下げたので私も一緒に頭を下げた。
 「今の人はうちの会社の親会社になる有明新聞社の会長だよ。」
 「あぁ、あの有名な名物会長ですね。時々テレビで見ます。」
 「うちの編集部と有明新聞社の編集部は連携して取材する事が多いので
時々おこしになるんだ。」
 「編集部同士ってスクープとかで競争し合うのかと思っていた。」
 「系列が同じだから協力し合っているんだ。今日香さんが乗っていて
事故にあったヘリも有明新聞社の編集部に所属していたヘリなんだ。」
 「そうだったんですか。」
 その後すれ違う人は私を見ると驚いた様な顔をしていた。
やっと須藤のいる編集部に着いた。須藤に続いて私が編集部に入ると
中にいた人達がいっせいに私を見て驚いた顔をした。それを見た須藤は。
 「彼女は以前ここにいた水島今日香さんの双子の妹さんで明日香さんです。」
 それを聞いた編集部の人達は納得した様子で再び仕事を続けた。
今日、私が着てきたのは今日香があまり着ないミニのスーツだった。
それなのにこの反応。もし今日香の服を着てきたら
大変なことになってた様な気がする。
私の近くにいた須藤の上司は私を懐かしむ様にして見て言った。
 「今日香ちゃんに妹さんがいたなんて知らなかったよ。
本当に今日香ちゃんとそっくりできれいだ。」
 そう言われたからではないけど結構感じのいい上司だった。
 「編集長は水島がお気に入りだったのに知らなかったんですか。」
 須藤がそう言った。その人は編集長らしい。
私は雑然とした部屋の中を見回し今日香はこういう職場で仕事をしていたんだと
職場の雰囲気を感じていた。
それから須藤は私を編集部の中にある打ち合わせ室に連れて行った。
打ち合わせ室の中には一人の中年の女性が待っていた。
須藤はその人に私を引き合わせ言った。
 「この方が写真を撮った水島明日香さんです。」
 私は訳も分からず、その中年の女性に頭を下げた。
するとその女性は座っていた椅子から立ち上がり。
 「中川です。」
 そう言って頭を下げた。そして須藤が私達に座るように促した。
私達がテーブルを囲むように座ると須藤が何かを取り出した。
 「これが水島さんが撮った写真です。」
 そう言ってテーブルの上に私がお台場で撮った例の心霊写真を
私に見える様に出した。すると中川という女性がその隣に一枚の写真を出した。
 「娘の梓です。」
 写真には女性が写っていた。私にはまだ何を言っているのか分からなかった。
すると須藤が言った。
 「中川さんは今月号のこの写真が載った、
うちの雑誌を見て連絡してきたのです。」
 「えっ。」
 私はまだ理解できなかった。須藤は私の撮った写真を指さして私に言った。
 「似ていませんか。」
 「えっ。」
 私の撮った心霊写真にぼんやりと写っている霊と写真の梓という女性は
確かに似ている。まさかそんな事、私は中川さんに聞いた。
 「その写真の方は現在どこに。」
 すると中川さんが答えた。
 「去年の二月から行方が分からなくて。」
 「うそ。」
 本当にここに写っている霊は写真の梓さんという人なの。
 「そこに写っている服も、梓がいなくなった時の服と同じなんです。」
 中川さんはあきらめた様に答えた。そして須藤が言った。
 「水島さん写真を撮った場所は分かりますか。」
 「はい、だいたいは。」
 私がそう返事をすると須藤は。
 「これからお台場へ行ってみませんか。」
 「はい。」
 中川さんが答えた。