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ROSSさんの大阪ハクナマタタ



去年ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の著書「日の名残り」を読みましたので、印象的な場面をサギの写真と一緒に紹介しましょう。

主人公のスティーブンスが執事として仕えるイギリス貴族ダーリントン卿は、豪華な館に欧米の外交官を招待してヨーロッパの外交問題を話し合う非公式会議を開催します。そこでのアメリカ代表とのやりとりです。

アメリカ人政治家ルイース<「ダーリントン卿はアマチュアだ。そして今日の(国際)問題は、もはやアマチュア紳士の手に負えるものではなくなっている。上品で善意に満ちた紳士諸君(中略)諸君にはお判りか?高貴なる本能から行動できる時代はとうに終わっているのですぞ」>

続いて<「この二日間はたわごとのオンパレードだった。善意から発しているが、ナイーブなたわごとばかりだ。今必要としているのは専門家なのです、皆さん。大問題を手際よく処理してくれるプロこそ必要なのです」>

ダーリントン卿<「ミスター・ルイース、アメリカ代表としてのあなたのご意見は、尊重されねばなりません。これだけを言わせてください、あなたがアマチュアリズムと軽蔑的に呼ばれたものを、ここにいる我々の大半は、いまだに名誉と呼んで尊んでおります」>

<「さらにミスター・ルイース、私にはあなたがプロという言葉で何を意味しておられるのか、だいたいの見当がついております。それは虚偽や権謀術数で自分の言い分を押し通す人のことではありませんか」>

<「世界に善や正義が行き渡るのを見たいという高尚な望みより、自分の貪欲や利権から物事の優先順位を決める人のことではありませんか?」>

<「もし、それがあなたの言われるプロなら、私はここではっきりプロはいらない、とお断り申し上げましょう」  賛成の大合唱が沸き起こり、それに大きな拍手が続いて、いつまでも鳴りやみませんでした>

スティーブンスを通じて描くイギリス貴族と執事の物語ですが、外交のプロを「虚偽や権謀術数で自分の言い分を押し通す人」と表現したカズオ・イシグロ氏の見識に驚かされました。

参考文献:「日の名残り」カズオ・イシグロ著  土屋 政雄 訳



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