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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

自由な心は空のごとく

2013-04-19 18:03:55 | 好きな本

Asaさんのレビューと、この表紙をみてとても読みたくなりました。



真ん中でどら焼きらしきものを持って佇んでいる女の子が
物語にかかわってくるのかなーと、思いながら読み始めました。
もしそうなら、この本の前に読んでいた『桐島、部活やめるってよ』からの
高校生つながり、になるなあなんて。

主人公は、どら焼き屋「どら春」の千太郎。わけあって、特に好きでもない
どら焼き屋をやっている様子。
店の前にある桜が満開の頃、ひとりの女性が現れます。
徳江という名で70歳をとっくに越えていて‥でも、店の貼紙をみて
「働かせて欲しい」と言うのです。

体力的にも見た目的にも、無理と判断した千太郎の気持ちを途中で
変えたのは、徳江が作って持ってきた「餡」の素晴らしさ。
千太郎の中で、ぱちぱちとそろばんがはじかれ、安い時給のさらに半額で
いいと徳江が申し出たこともあり、採用となるのでした。
これで「どら春」が繁盛していく話でおわるはずはないな、という予兆は
すぐに訪れ、物語は、自由とはなにか、生きて行くとはどんなことか、等など
こころの深い部分へと降りていくのです‥。


+++



物語の終盤で、徳江の友だちの森山さんがこんなふうに話すところがあって‥
ここだけ読んだのではなんのことがわからないと思いますが。
(私はこの箇所を読んで、それまで堪えていたものがいっきに溢れだしました。)

 「~小豆の言葉なんて聞こえるはずがないって。でも、聞こえると
 思って生きていれば、いつか聞こえるんじゃないかって。そうやって、
 詩人みたいになるしか、自分たちには生きていく方法がないんじゃないかって。
 そう言ったの。現実だけ見ていると死にたくなる。囲いを越えるためには、
 囲いを越えた心で生きるしかないんだって」


‥囲い。

心身の自由が奪われる現実の「囲い」の恐ろしさは、そこに身を置いたことが
ある人でなければわかりませんが、それとは別に、自分で自分に線を引いたり、
こうでなければいけないという常識観念にとらわれ過ぎたり、あるいは
ジョーシキ的に生きれば楽だからという理由で、精神の自由を、のびやかに広がる
心を、自ら囲ってしまうことの怖さや、囲われていることの楽さに、気づかないふりを
してしまいそうになる心の弱さを思いました。



囲いを越えた心。

自らの気持ちに囲いを設けないこと‥果てのない空のように。






コメント (2)
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