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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

200字ワールド

2007-01-12 16:40:27 | 好きな絵本

 冬晴れの日が続いています。

 休み明けの、つらい1週間がやっと終わりに近づきました。

 
 今年最初に紹介するこの本は、昨年の夏、京都の恵文社一乗寺店で買いました。
さらっと一読して、そのまま本棚にしまわず、なぜか机に積んだままで数ヶ月が過ぎ‥。
年末になんとなく手にして再読してみたら、しみじみとしたおもしろさがわいてきて、
本の帯に書かれていたコピーの通りだと感心してしまいました。

 ‥こんなふうに書かれていたんです。

 100人が1回読む本ではなく、
 10人が10回読んでほしい
 そんな本ができました。

    モザイクの馬(講談社)

     『モザイクの馬』
    小薗江圭子 文 和田誠 絵


 文庫本よりすこし大きいくらいのサイズに、18のお話がおさめられています。
そのどれもが200文字で完結していて、どのお話にもすべて「馬」が関係しているのです。
 見開きの右ページに、200字でできたお話。左ページには、どれもそのお話にぴったりの
和田誠さんの絵。

 たとえば、表題作の「モザイクの馬」は、14番目にある、こういうお話です。
(お正月なのでお話ひとつまるごと載せてしまいます)


 モザイクの馬

 王宮の南の壁は、モザイクの馬で飾られて
います。何世紀もそこにいた馬は、たいくつ
しきっていました。ある日、同じようにたい
くつしていたクモが、馬の鼻先で、大きなた
め息をつき、馬はクシュンとやりました。す
ると、なにぶんにも古い馬なんで、バラバラ
になってしまいました。翌日、修理に来たタ
イル屋さんは、まちがえて、目をしっぽの先
につけました。おかげで馬は、ちがう窓の景
色が見られるようになりました。



 
他にも、縞馬あり、ペガサスあり、ユニコーンあり、回転木馬あり、王さまの馬あり、
木馬あり、ぬいぐるみの馬あり‥。
 よく「馬」だけで、18個ものお話が作れたなあと、思っていましたが、ひとつひとつこうして
挙げてみると、そのどれもが、その名だけで、なんとなくドラマチックに思えてくるから
不思議です。


 200字といえば、原稿用紙の半分です。そこの升目を埋めた文字だけで、こんなに
豊なイメージを広げることができるのです。しかも、心のつぶやきのような「言葉の断片」
ではなく、「お話」としてちゃんと完結しています。



 今年の1冊目にこの本を選んだのは、指針と掲げておきたかったからかもしれません。



 

コメント (2)
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