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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

「こどものとも」のさらなる楽しみ・3

2006-06-22 15:00:40 | 思い出の絵本
 「こどものとも」からの楽しみの3つ目は‥「あなたたち、そんなところにも居たの?!」
です。

 あなたたちとは、↓の表紙の女の子と犬。本の中でも「おんなのこ」と「いぬ」って
呼ばれていますね。
まじょのかんづめ
『まじょのかんづめ』

 佐々木マキ 作



 今はハードカバーが出ていますが、最初は「こどものとも」1994年1月号でした。
 その後に、続編が2冊。

 『まじょのすいぞくかん』 「こどものとも」2000年8月号
 『まじょのふるどうぐや』 「こどものとも」2003年5月号

 この3冊は、登場人物も設定もほぼ同じで、悪い魔女の魔法によって姿を変えられて
しまった郵便屋さんとぞうとくまとぶたを、「おんなのこ」と「いぬ」が発見し、助けてあげる
というお話です。

 「ありがたい、たすかった!」

 
毎回、助けられたみんなが言うせりふまでおんなじなんです。これだけ似ていると、
どうしても並べてみて、どれくらいおんなじか、どこかちがっているところはあるのかと
探してみたくなりますね。
 うちには、「かんづめ」はなくって、「すいぞくかん」と「ふるどうぐや」を持っているのですが、
どちらかが読みたくなると、必ずもう1冊も探してきて、合わせて読むという暗黙の約束が
出来上がっていました。

 ところで、2冊目の「すいぞくかん」と3冊目の「ふるどうぐや」には決定的な違いがあるのです。
 それは「おんなのこ」と「いぬ」だった2人に名前がついたこと。女の子の名前はきのこ、
犬の名前はイワンです。

 「3冊目から名前がついた」ということは、もうだいぶ前から知っていたのですが、
ついこの間までこの絵本の存在は知りませんでした。図書館の棚で偶然見つけて、
「あれっ、あなたたちはきのことイワンじゃないの?!」の思い、ページをめくったら、
やっぱりそうでした。
そらとぶテーブル

『そらとぶテーブル』 

 
佐々木マキ 作   



 
  あつい あつい なつの ひ、
 きのこと いぬの イワンが
 そとを あるいていたら、
 あきちに ふるい テーブルが あった。

 
こっちのお話は、魔法のじゅうたんのようにテーブルが空を飛び、望んだ場所まで
連れて行ってくれるというもの。きのこが手に持っているマヨネーズが、最後の方で
生きてくる、とっても夏向きなお話です。
 
 2002年9月発行とあるので、『すいぞくかん』と『ふるどうぐや』の間で、名前が
ついたのだということがはっきりとわかります。どうでもいいような「発見」ではありますが、
それでも、きらっと光る嬉しさが、私の胸の中に灯りました。

「ねえ、ねえ、イワンときのこ、この本にも出てきているんだよ」
「へえー、そうなんだあ‥」

 得意になって教える母と、ちょっと冷めている娘との会話です。「母」は、佐々木マキさんの
描く絵には思い入れがありますからねえ。何しろきのこよりイワンより、ぶたよりおおかみより先に、
羊男を見ていますから。


 今朝になって、そういえば折込ふろくには何て書いてあったかなあと、『まじょのふるどうぐや』の
「絵本のたのしみ」を探してみたら‥そこにしっかり、名前がついたいきさつが書いてありました。
 
 「今度の本は、ぜひ主人公に名前をつけてくださいね。そのほうが、ぜったい
読者に親切なんですから」
 編集者にそう念を押されて作ったのが、02年秋に出た『そらとぶテーブル』という
絵本で、主人公の名を「きのこ」相棒の犬に名を「イワン」としました。

 
なんだあ、ここにちゃんと『そらとぶテーブル』のことも書いてあるじゃない。と
少々気落ちした私ですが(何しろ自分の中ではきらっと輝く発見でしたから)、佐々木マキ
さんの次のような文章を再読できて、よかったと思っています。

 どうしてあなたのお話には、主人公に名前のついていないものがあるのですか、
と訊かれることがあります。ー中略ーすてきな名を思いついたら喜んで使うのだけど。
 もうひとつは、具体的に固有名詞をつけることが、必ずしもプラスに働かないような
種類のお話(作品世界)もあるのじゃないか、ということです。ただし、私のお話が
いつもそれに相当する、ということではありません。

 これを読んでいたら、佐々木マキさんが表紙を描いた、「僕」と羊男の物語をまた読みたくなってきました。

コメント (7)
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