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神奈川県の西部にある「小さな町」で暮らす私。
日々の生活の様子、見たこと、感じたこと、思ったことを綴っていきます。

「天使のナイフ」~~読書感想文です~~♪

2016-10-06 | 本と雑誌

第51回江戸川乱歩賞の選考過程で「ぶっちぎりの受賞」と評価された作品です。

「天使のナイフ」 薬丸 岳 著



重大な犯罪を犯したとしても、未成年者は、法律によって「犯罪者にならない」。
反省しその後の人生を真摯に送るようにと、自立を支援する施設で数年を送り、社会にでるのです。

が、「被害者」の立場からみれば、「犯罪」が起こったその時から「人生に大きな変化」がおきるのです。
犯人を憎みながらも怒りをぶつける相手の名前さえ「少年法」の壁で知らされない・・・。
犯人が、罪を犯したことをどう思っているのか、どう更正していくのか、どんな方法で贖罪をするつもりなのか・・・、
まったくの蚊帳の外状態で、悶々と日々を送らなければならないというのが、現実なのです。

(数年前に少年法が改正になり、16歳以上は「罪」が問えるようになったと記憶していますが・・・)

加害者である少年の人権が守られる法律であるがゆえに、被害者の人たちが「犯人への憎しみ」を、直接ぶつけることははばまれています・・・。

この物語の主人公は、
「法が裁けないというのなら、自分の手で裁きたい」と、気持ちを吐露したことで、その後に起きた事件で疑惑の人となってしまうのです。


作者は、どちらの立場からということではなくて、被害者・加害者「両方の気持ち・立場」を丁寧に描いています。

「法務大臣からの委嘱を受けて」「人権の擁護という活動している私・・・、

罪を犯した少年が、更正するためには「プライバシーが守られ」「自立支援が十分に行われ」「立派な大人となって社会に役立って欲しい」・・・と、思う気持ちでいるのですが・・・、

被害者の苦しみを思うと、「情報」が与えられない苛立ちも理解できますし、「少年法で守られる加害者」に接することのできないマスコミが被害者を追いかけ、何かと取り挙げられて迷惑する「被害者の人権」も、守ってあげたいし・・・、

難しいテーマの物語ではあります。


でも「江戸川乱歩賞」ですので、「推理小説」です(苦笑)。
「少年法」を軸に、いくつかの「事件」が絡み合い、「あっ~!」という結末になります。

とても考えさせられる物語ですが、文章の中に表現されている「主人公の愛娘への想い」に「優しい父親」を感じ、ほっとします。

一気に読み終わった本でした。