ルールーのお気に入り

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お気に入りをツラツラと…

『悪果』黒川博行/著

2008-01-13 12:08:07 | 相好の一冊
というわけで。(え?^^;)

忙しい時に限って無性に本とか読みたくなるという変なクセを持つわたし・・・
でもそういう時は家で読み始めると際限なく読んでしまって仕事に差しさわりがあるので移動中の電車内などだけで読むことにしていて、でもハードカバーでけっこう分厚くて持ち歩くだけでも重たくて疲れて、しかも他にも重たい荷物をたくさん抱えながら四苦八苦してページをめくってもうヘトヘトになったりしていて、そんなにしてまで読みたいなら家で一気に読めばいいじゃーん!と自分にツッコミいれたくなるほどハマっていたのが(前フリ長っ!^^;
黒川博行『悪果』
どうやらこのほど直木賞候補にノミネートされたようです♪




黒川作品は今までに読んだことなくて、でも“悪果”というタイトルと、黒川氏の奥様が描いたらしい装丁の絵にみょ~に惹きつけられて手に取ってみたのだけど、なんていうかわたしの全く知らない新しい世界に足を踏み入れた感じがして、グイグイ引き込まれてしまったのでした。

とはいえ、実はテレビ東京の水曜ミステリー9枠でときどきやる、黒川作品原作の警視庁・黒豆コンビシリーズが大好きなわたし・・・
もっともドラマは大地康雄、村田雄浩という2人の個性的な役者の掛け合いが面白くて、原作者の名前なんて全然気にしてなくて後から知ったんですけども。(^^;;;



本作は2年ぶりの長編小説だそうで、それも警視庁・黒豆コンビシリーズ(原作は『帰り道は遠かった』etc. )などとは全然違う、同じ警察モノなのに超超ハードボイルド。

大阪は今里署のマル暴担の刑事を主人公に、ここまでバラして(書いて)いいんかー!と思わず絶句する、あまりにリアルな警察の実態をバリバリの大阪弁のセリフ回しで描いた作品です。

といっても実際のマル暴担の刑事たちの日常がどんなものなのかわたしには知る由もないので、本当にリアルなのかはわからないわけだけど、黒川氏のインタビュー記事などを読むと関係者に徹底的に取材したということなので、こういう世界も実際にあるのだなぁとびっくり。
ていうか、その取材力にも相当にびっくり。



わたしが今まで小説やドラマの世界で知っていた警察っていうのは、組織を護るために身内の不祥事などを組織ぐるみで隠ぺいしたり、本庁のキャリア組と所轄の刑事との確執とか、公安vs刑事部とか、そういう“実態”がベースになっていたりするものの、なんだかんだ仲間内には信頼関係があったり少なくとも相棒とはいいコンビだったりするのに、このストーリーの主人公・堀内ときたら、相棒だって全く信用していない、バレたら懲戒免職ギリギリのことをやっているいわゆる悪徳刑事というヤツです。

シノギという言葉が本当にあるのか、いやあるんだろうけど、仕事とは別に自分の懐を温めるためのネタのことで、そのネタを探しては婉曲にユスリみたいなことして甘い汁を吸っているわけです。
でもそれも正規の経費は上層部に“裏金”として吸い取られてしまうので、シノギをしないと情報屋をキープできないからという(もちろんそのためだけじゃないけど)、なんともリアル過ぎる理由が明かされるところがこの小説のすごいところ。

最近はあまり見ないけれど、昔からドラマの中で情報屋にお金渡すシーンとかで、領収書は書いてもらえなさそうなのに経費で落ちるのかなー?と不思議に思っていたんですが(笑)、からくりがわかってスッキリ♪
いやスッキリじゃない、すご過ぎるぜ大阪のマル暴担!
たぶん、その腐敗ぶりは想像以上にいろんなことがあるのかもしれない・・・
でも、東京の刑事も同じようなものなのでしょうか??なんだか想像できない。



とはいえ、リアルに警察の実態を描いてはいるものの、もちろん単なる内部告発や暴露本とは全然違って、ストーリーはこのあと本筋の事件がスリリングに展開していきます。

絶対絶命のピンチに陥りながらも、この堀内はすごく頭も切れて度胸も満点なので読んでいてワクワク。
信用してないとはいえ相棒の伊達とは互いに認め合っていて、特に2人の間で交わされる大阪弁のセリフはメチャクチャ流暢で(変な言い方だけど^^;)カッコイイ。

わたしが大阪に住んでいて、街の名前とかでリアルに頭に地図が思い浮かべられれば、きっともっと小説の世界に入っていけるんじゃないかなーと、わたしはなんで東京人なんやろと少し残念でもありました。
嗚呼、流暢な大阪弁が話してみたい!(←アホ^^;;;)



とにかくすっごく面白いです!
登場人物たちが、その圧倒的な筆力で描く舞台でリアルに生き生きと動き回っていて、動いている映像が目に浮かんでくるほどです。
刑事たちもワルなんだけど、出てくる一般人も相当アコギなヤツばかり。
帯の「おまえは極道よりも性根が腐っとる」のセリフが、刑事たちに向けられたものではないところもなんだか痛快です。
ハードボイルド系が苦手な人も、ぜひぜひ読んでくださいな。


ちなみに“悪果”って腐った果物のこととかなーなんて思っていたのですが、どうやら仏教用語で「悪いおこないのむくい。悪い果報」という意味だとか。。
意外にも男の純情も見せつつ、ラストはなかなか重くて渋い展開でズシリとお腹に響いてくる・・・
そんなこんなで、タイトルも見事です。



・・・というわけで
ルールーのお気に入り度
★★★★☆(※5段階評価4.5)
※映画化されるとしたら最初はVシネマ系かな~と思っていたんですが、直木賞取ったらスゴイことになりそうですね!
俳優さんには、なんちゃって大阪弁の人ではなく、バリバリな大阪弁の人をお願いしたいです。

←ひっそりと参加中♪_(-_-)_ペコリ






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2 コメント

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誰が演じるのかで決まってくる・・ (ハムぞー)
2008-01-16 14:53:40
>バリバリな大阪弁の人
これが難しいっ!

今のNHKの朝ドラや、お茶のCMなどで
大阪弁や京都弁を目にしますが
役者さんはアクセントを気にすることで
一杯一杯で
イントネーションが不自然です。
いくら方言指導の人がついてても
完璧には出来てないことが多いです。

ギクシャクして聞こえるのが
「非ネイティブ」です。


よくTVでよく取り上げられる
「大阪のおばちゃん」。
しかしよく聞くと
地方出身者が結構多いのです
(細かい単語のアクセントが違う)

登場人物をその設定にすれば
そういう大阪弁も
ありなのかもしれません。
(例:ミナミの帝王、萬田はんの大阪弁)


もっともこんな細かいことをつつく
私のような視聴者は少ないと思いますが・・
ハムぞー所長さん♪ (ルールー)
2008-01-16 21:20:57
残念ながら、黒川博行さん直木賞逃しましたね・・・

ところでバリバリの大阪弁の人は難しいですか。
アクセントとイントネーション、似てるようで違うわけでんな。(←怪しい関西弁
で、大阪のおばちゃんも細かいこというとニセモノっちゅーことですかー
この小説は大阪弁のリズムみたいのがすごく読んでてリアルなので、映画になるならそういう役者さんでお願いしたいですわ。
でも、役のイメージでいったらなかなか難しいですね。
ちなみにわたしはイメージでいったら、主人公の堀内は仲村トオルとかがいいなーと思ってるんだけど、ちょっとカッコよすぎる&大阪弁がネックですかね、やっぱり。