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白鳥のテーマは...

2014-01-24 18:56:06 | その他
先週のNHK Eテレ「ららら♪クラシック」(「白鳥の湖」の回)で、あの『白鳥の主題』(←一番有名なメロディー)が、第4幕の「終曲」で転調(ロ短調→ロ長調)されてマジカルな効果を生む(笑)、ってな話をしてましたが、話がいかにも中途半端だったので、ちょっとだけ勝手に補足...


(音楽の調性について重々御承知という方は、この段落は飛ばして下さい↓)
えーと、まず、みなさま御存じのとおり、ふだん我々が聴くたいていの曲は、12コの基準の音(ピアノでいうと白鍵と黒鍵それぞれの音)のうちの7音を主な構成要素(つまり音階)とするメロディー(和音進行)でできているとみなせます(まあ、ざっくり単純化すれば)。
選べる音の組み合わせには多少の規則があり(人間が聴いて「ひとまとまりの音楽」と感じるためには、ってことです)、その組み合わせごとに、ある約束事に則って、「ニ長調」(ex.「花のワルツ」)だの「ホ短調」(ex.「金平糖の精の踊り」)だのという名前がついてます。
で、それがその曲(メロディーって言った方がいいのかな?)の『調性』というヤツなんですが、たまにメリハリつけるために曲の途中で違う『調性』に移ったり(これが転調)もします。
そして実は、それぞれの『調性』には、なんとなく特有の雰囲気というか、性格みたいなものがあったりもします。


さて、そもそもこの『白鳥の主題』(ロ短調)の元ネタであるワーグナーのオペラ「ローエングリン」の『禁問の動機』(この話は何度も書いたので、過去ログ見て下さい...)はヘ短調(五線紙上に書くと♭4つ)。
ローエングリンとエルザの関係が、このちょっとしたネタ(『禁問』の誓い)をきっかけに、らぶらぶハッピーウェディングからドン底まっさかさまという、先行きを暗示するような、重苦し~い調です。

チャイコフスキーはこの有名なメロディーを(白鳥つながりということで)自分の作品に取り入れる時、調性をロ短調(#2つ)という感傷的な響きを持つ調に変えて、メロディーラインも華やかに、料理し直しました。
哀しく神秘的な「白鳥伝説」という題材に合わせてというだけではなく、バレエにふさわしいロマンティックな物語として演出しようという計算が(たぶん)あったんじゃないかな、と思います。


それから、「白鳥の湖」の「終曲」は、チュチュ・ファンのみなさまには、vs.アリクイ美ちゃん対決(2 Akt)の曲だと思いますが、実際には「チュチュ」で使われてるのは「終曲」の前の部分で、番組で取り上げられてた箇所はもっとずっと後のほう。
まあそれはともかく、ロ短調(#2つ)から長調に転調しようという時、一番自然に移れるのは実はロ長調(#5つ)ではなく、ニ長調(#2つ)。
じゃあ、なんでチャイコフスキーはロ長調を選んだのか?

二長調はとっても輝かしい勝利の響きを持つ調なのにくらべて、ロ長調はけっこうガツンとした感じというか、完璧ハッピーvではない感じ(なんだそれ)になるんです(この点も、私が白鳥の湖のエンディングについて「死んであの世で結ばれるヴァージョン」を支持するゆえん)。
さらに、ロ短調から二長調への転調はあっさり簡単・予定調和なイメージになってしまうのに対し、主音が同じで雰囲気の違うロ長調へと転調すると、同じ景色なのにパァっと空が晴れたような、ちょっと、あれっ、というようなインパクト(『艱難辛苦を乗り越えた』感?)が出ます。
けっこう考えてるぞ、チャイコフスキー(笑)


加羽沢さんはこういったことをちゃんと御承知だとは思いますが、いかんせん3分じゃ説明できないですよね (;´∀`)
「同じなのに違う」とかいう妙ちくりんな説明(同じじゃないし...)になってたので、ちょこっと私なりに補足(解釈)してみました。



というわけで、次回の「ららら♪クラシック」(1/25(土) 21:30-22:00)は、ブラームスの交響曲の中で私が一番好きな第1番です。
最終的には(第4楽章)ベートヴェンへの敬意にクララ・シューマンへの愛が勝つ(笑)って曲なんですが、そこまで説明するかな...
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