「…ねえ、ユノ。まだ決まらない?」
「……」
「そんなに悩まなくても…僕はどの花だって…」
「……」
僕が話し掛けても、ユノは返事をくれないで真剣に悩んでいる。ユノが選んでくれるなら、どの花だって嬉しいだけ。そう言っても、ユノには届かないみたい。
僕は辺りに沢山ある綺麗な花達より、ユノの真剣な顔を見上げる。
ユノの視線が行き来するから、選択肢も分かってくる。あっちの花とこっちの花。群れで咲く小ぶりな花片が可愛い花と、凜として佇む一輪の綺麗な花。どちらか一方を選べなくて、ユノは悩んでいるのだろうか。
「ねえ、ユノ」
「……」
「僕、どちらの花も良いと思うよ?魅力は違うけど、どちらも素敵だよ?」
「…そうか?」
やっと返事をくれたユノだけど、視線はまだ同じ位置に固定されている。
「ねえ、ユノ。そんなに選べないなら…どっちも、とかは駄目…?」
「どちらも選べないなんて…問題だろう」
「お金の問題?」
「そこは問題じゃない。俺の気持ちの問題だ」
「でも、ユノ。いつまでも決まらないと…」
ユノを急かしたい訳じゃない。でも、このままだと何処にも行けない気がした。困る僕を助けてくれたのは状況を見かねた店員さんだった。ユノが迷っている花達を束にしてくれて、差し出してくれる。
「ユノ!僕、これが良い!」
「でもな、チャンミン」
「どちらもユノが選んでくれた花でしょ?僕はこれが良い!」
「…そうか?」
僕が叫ぶと、ユノは渋々、納得してくれた。
贈り物を持って、パン屋に向かう途中も。ユノはずっと考えている。
「ユノ?どうしたの?」
「チャンミン。俺は決断力がないのか?」
「え?」
「どちらかを選べと言われて…悩むのは…問題なのか…」
「ユノ…?」
さっきの花の事を言っている?まだ納得していなかった?
様子のおかしなユノを見上げ、僕は少し、心配になった。
「本当に、貰っても良いの?」
「うん!いつも沢山、おまけしてくれるから。ユノと僕からの気持ちです。いつも本当にありがとうございます」
「いや、良いのよ!私がしたくて、しているだけなんだから。あ、そうだ。ちょっと待っていて?」
お花を渡すと、女将さんはとても喜んでくれた。まだ散歩の途中だと説明した。帰りにまた寄ると言ったのに、何を待つのだろう。そう思っても、待つしかない。ふと気になり、ユノを見上げるとまだ何かを考えている。
何をそんなに悩むのか、聞いてみようと思った。
だけど、それを邪魔するのはお客さんの声だ。邪魔にならない位置に立っていたせいか、ユノは店員と勘違いされる。
ジャム屋さんでの接客経験があるから?ユノは穏やかな笑みを浮かべる。それを見て、お客さんが顔を赤らめる。何だか、嫌な気持ちがして…ユノの手を握ったら、可愛い弟さんねって言われた。
直ぐに女将さんが戻って来て、お客さんは買い物をして居なくなる。
お昼ご飯として用意してくれた特製サンドイッチを手渡されて、ありがとうって言った。だけど、小さな声しか出ない。
不思議がるユノに抱き上げられても。僕は尖る唇を直せなかった。
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