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言葉の救はれ・時代と文學

言葉は道具であるなら、もつとそれを使ひこなせるやうに、こちらを磨く必要がある。日常生活の言葉遣ひを吟味し、言葉に学ばう。

福田恆存の讀まれ方ーーシンポジアムのレジュメ

2024年12月31日 09時15分25秒 | 評論・評伝
 僥倖は突然訪れた。『福田恆存全集』の詳細な年譜を作成された佐藤松男先生より、十一月に突然シンポジストとして福田恆存没後三十周年記念のシンポジアムに参加してほしいとの依頼があつた。
 私としてはこれ以上ない快事であつた。あまり良いことのなかつた今年の最後の最後にかういふ出来事が訪れたことを静かに喜んだ。いつもさう思ふが、出会ひといふのは、そのことが起きる直前まで分からないといふことである。当たり前のことではあるが、この「待つ」時間こそが生きるといふことなのだと改めて思つた。

 さて、当日私がお話したのは、以下のレジュメの通りである。どんな観衆なのかも分からないので、それぞれの世代ごとの「讀まれ方」について概説した。年の瀬に、もしご関心があればお目通しください。
 拙ブログをこの一年お讀みくださりありがたうございました。               

■世代によつて異なる「讀まれ方」
第一世代 同時代を生きた人 
小林秀雄 坂口安吾 保田與重郎 清水幾太郎
     鉢の木會(一九四八(昭二三)年結成)
 中村光夫 吉田健一 吉川逸治 三島由紀夫 大岡昇平
     
第二世代 後輩たち   
蔦の會(一九五七(昭三二)年結成) 谷田貝常夫 中村保男
「いい文章かどうかは文章が泣いてゐるかどうかだ」
土屋道雄『國語問題論争史』
黒田良夫(下諏訪の友へ)
西尾幹二 松原正 西部邁
     現代文化會議(佐藤松男・由紀草一)
     平岡英信(「私の幸福論」の下敷きになった講演)
     井尻千男『劇的なる精神 福田恆存』

第三世代 ここがこれからの読み手の主流
坪内祐三
福田恆存記念會(金子光彦・土井義士・富岡幸一郎)
遠藤浩一『福田恆存と三島由紀夫』
川久保剛『福田恆存 人間は弱い』・浜崎洋介『福田恆存〈思想のかたち〉』・先崎彰容
     
     大学入試で出題(2015年~2024年) 読者層の拡大
     2016年 上智大学「人間・この劇的なるもの」
     2018年 島根大学「私の幸福論」・大阪教育大学「私の幸福論」
     2021年 慶應義塾大学「一匹と九十九匹と」
     2023年 京都大学「藝術とはなにか」 「現代では、芸術の創造や鑑賞のいとなみにおいてさえ、だれもかれも孤独におちいっている」  
     2024年 成城大学「教養について」
     2024年 武蔵大学「人間・この劇的なるもの」

特殊な讀み手  
福田逸『父・福田恆存』『福田恆存の手紙』


以下は、時間がなく簡単に説明。

■気になる言葉 「絶對」
 【前提】「これからの日本に必要なのは、もはや日本人論ではなく、人間論である。その仕事をするのが哲学だ」(『日本への遺言 福田恆存語録』文庫版あとがき中村保男)
  「クリスト教においては、現実否定といつても人間が、あるいは自己が、それをするのではない。神がするのです。神が現実を否定し、人間を、自己を否定するのです。私たち人間は、はじめから神に否定されたものとして存在するのです」
  「人間は、自己を超え、自己に対立し、自己を否定する絶対神といふものを造つた」
  「絶対者を置く以上、哲学的には絶対主義でありませうが、結果としては、絶対と相対とに相渉る相対主義だ」
  「このやうに現実を超えた全体の観念といふものが、クリスト教において、もつとも明確に把握されてゐるにしても、それだからといつて、私たち日本人にとつて無縁のものだといひきれませうか」(以上三つは「絶対者の役割」昭32)
  → 絶対神は
       個人の信不信で存在の有無が決まる →  相対的絶対者
       個人の信不信とは関係ない     →  絶対的絶対者 = 絶対者

中村保男『絶對の探求』
「福田恆存は、二元論を思考と表現の手段とする以外に自分には方法はなかつたと明言してゐるのだが、それは恆存の生きた時代における恆存自身の役割を果たすための『便法』だつたのであり、一方で恆存ほど一元の理想を希求してゐた文士はまれであつたと私は思ふ」

  • その人が見てゐる世界によつて、「絶対」は「相対的」なものに見える。
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