報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「当該レベルに到達していない者が高レベルの魔法を使うと……」

2018-04-20 10:15:07 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[4月8日08:45.天候:晴 東京都豊島区内某所 日蓮正宗(東京第3布教区)大化山・正証寺]

 住職:「……本日、願い出のございました塔婆供養につきまして、ただいま追善回向を懇ろに行いました」
 稲生勇太:「ありがとうございました」
 所化僧:「それでは15分の休憩を挟んだ後、9時より御講を始めます。皆様、お時間までに本堂にお集まりください」

 信徒達が一旦席を立つ。

 藤谷:「稲生君!」

 そこへ藤谷が声を掛けて来た。

 稲生:「あ、班長」
 藤谷:「どうしたんだい?塔婆供養をお願いするなんて、久しぶりじゃないか」
 稲生:「はあ……それが……」

 稲生は昨夜あったことを話した。
 藤谷は喫煙者である為、喫煙所に移動しながら話した。

 藤谷:「稲生君は本当、物の怪に縁があるよなぁ……」

 藤谷は喫煙所で煙草に火を点けながら頷いた。
 と、そこへ。

 鈴木:「稲生先輩!そこ、詳しくお願いできますか!?」
 藤谷:「す、鈴木君!?キミは幽霊までナンパする気かい!?」

 鈴木がメモ帳を片手に飛んできた。

 鈴木:「今度の夏コミに出すゲームなんですが、あえて新作を2つ出してみようかと思うんです!」
 藤谷:「8月の夏期講習会は強制不参加かよ……」
 鈴木:「他の月に行きます!」
 藤谷:「それならいいけどよ……」
 鈴木:「夏に因んで、ホラーシューティングを作ろうかと!」
 稲生:「何だそりゃ……」
 鈴木:「御題目を武器に、物の怪をバッタバッタ倒していくゲームです!」
 稲生:「ああ、エレーナから聞いたけど、キミも何か倒したみたいだねぇ……」
 鈴木:「愛の力ですよ」
 稲生:(まあ、マリアさんのことは諦めてくれたみたいだから、どうでもいいけど……)
 藤谷:「でもよ、稲生君。その……君の初恋の人の塔婆供養は昔やったんだろう?それでもダメだったというのか?」
 稲生:「そこなんですよねぇ……。僕がここに御受誡してから1度お願いしたんですよ。もっとも、それっきりだったもので、御住職様から注意されましたが……」
 藤谷:「まあ、故人に対する供養ってのは、先祖供養と同じだからな。塔婆供養1回だけじゃ、そりゃ寂しいだろうよ。よし、分かった。その初恋の人の墓はどこだ?まさか、どこかの邪宗の寺じゃないだろうな?」
 稲生:「さいたま市の青葉園です。公益財団法人がやってる、共同墓地ですよ」
 藤谷:「よし、それなら問題無い。後で車を出してやろう」
 稲生:「え?いいんですか?」
 藤谷:「ああ。俺も気になることがある。確かに塔婆供養1回こっきりで、後は放置プレイされた故人が終いにゃキレたというのは分かるが、どうして今頃になって……というのはある」
 稲生:「勤行の時にも回向していたんですよ?」
 藤谷:「それを最近サボるようになったか?」
 稲生:「いえ、そんなことは無いです!」
 鈴木:「でも、今は生きている好きな人が別にいるのに、ちょっとアレですよねぇ……」
 稲生:「う……」

 稲生はマリアの顔を思い浮かべた。
 今はマリアの方も自分のことを好きになってくれている感はある。
 にも関わらず、いくら追善回向の為とはいえ、いつまでも前カノを思って……というのもどうかという気持ちもまたあった。

 藤谷:「鈴木君!」
 鈴木:「あっ、サーセン!」
 藤谷:「とにかく、だ。御講が終わったら、すぐに行ってみるぞ」
 稲生:「はい」
 鈴木:「あの……俺も一緒に行っていいですか?」
 藤谷:「稲生君がいいと言うならいいぞ」
 稲生:「まあ、別にいいけど……」
 鈴木:「あざーっす!」
 藤谷:(こいつ、幽霊までゲーム作りのネタにする気か。ある意味、稲生君より強いかもな)
 稲生:(何だろう。僕は有紗さんに殺されかけたけど、鈴木君は大丈夫のような気がする……)

[同日11:15.天候:晴 正証寺→藤谷のベンツGクラス]

 藤谷は寺院の駐車場に止めていたベンツのGクラスを持って来た。

 稲生:「あれ?Eクラスじゃないんですか?」
 藤谷:「功徳で新車にやっと買い換えることができたよ。この車なら、冬の大石寺でも安心だ」
 稲生:「なるほど」

 それまで型落ちの中古Eクラスだったのだが、藤谷が回して来たのはピッカピカの新車だった。
 藤谷はいつも黒スーツを着ているので、つい車も黒塗りというイメージを持ってしまうのだが、前のEクラスにしろ、今のGクラスにしろシルバーである。
 これは藤谷組のダンプカーもまたシルバー塗装だからというのもある。

 鈴木:「うちのVクラスもそろそろ買い替えかなぁ……。走行距離がそろそろ……」

 鈴木はリアシートに乗り込みながらそんなことを呟いた。
 もっとも、Vクラスは家族の車であり、鈴木個人の車ではない。

 藤谷:「心配するな。これから真面目に信心していけば、個人で車が買えるくらいの功徳が出るぞ。俺みたいにな」
 鈴木:「それはありがたいですね。でも、俺は最近思うんですよ。そんなに大きな車も要らないなぁ……って」
 稲生:「どんなのがいいんだい?」
 鈴木:「Aクラスくらいでいいですよ」
 稲生:「でも、ベンツなんだねw」

 Eクラスは左ハンドルだったが、このGクラスも同様であった。
 左ハンドルに慣れ切ったからであろうか。
 藤谷はピッピッとナビをセットした。

 藤谷:「よし。それじゃ、行くぞ」
 稲生:「お願いします」
 鈴木:「オール・アボード!」
 藤谷:「欧米か!」

 取りあえず藤谷は、最寄りの首都高の入口にハンドルを切った。

 鈴木:「稲生先輩は車買わないんですか?」
 稲生:「いや、僕はあまり必要じゃないな……」
 鈴木:「マリアさんとドライブデートってのも……あれ?そう言えばマリアさんは?」
 稲生:「ああ、マリアさんね……」

[同日同時刻 天候:晴 埼玉県さいたま市中央区 稲生家1F客間]

 マリア:「う……」

 マリアはやっと目が覚めた。
 だが、体が重い。
 まるで、もう生理が来たみたいだ。

 マリア:(つい勢いでウィ・オ・ナ・ズゥム使っちゃったけど……。やっぱり、まだ本来のレベルじゃなかった……)

 で、そこへやって来るエレーナ。
 ホウキで舞い降りて来る。

 エレーナ:「おい、マリアンナ!いい薬持って来てやったぞ!飲んだら立ちどころにその重い体が軽くなるエリクサーだ!」
 マリア:「うう……悪いな……エレーナ……。やっぱり……持つべき者は仲間……」
 エレーナ:「そうだろそうだろ。今なら相互扶助の精神で、特別価格の1万円でいいぞ!くれくれ、日本円!」
 マリア:「誰がやるか……!」

 エレーナの契約悪魔はキリスト教における七つの大罪の悪魔、金銭欲や物欲を司るマモンである。

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