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【広島中央保健生活協同組合事件】最高裁第一小法廷判決の要旨(平成26年10月23日)

2016年03月02日 08時00分00秒 | 会社にケンカ!の判決
▼ 均等法の規定の文言や趣旨等に鑑みると、同法9条3項の規定は目的および基本理念を実現するためにこれに反する事業主による措置を禁止する強行規定として設けられたものと解するのが相当であり、女性労働者につき、妊娠、出産、産前休業の請求、産前産後の休業または軽易業務への転換等を理由として解雇その他不利益な取扱いをすることは同項に違反するものとして違法である。

▼ 一般に降格は労働者に不利な影響をもたらす処遇であるところ、均等法1条および2条の規定する同法の目的および基本的理念やこれらに基づいて同法9条3項の規制が設けられた趣旨および目的に照らせば、女性労働者につき妊娠中の軽易業務への転換を契機として降格させる事業主の措置は原則として同項の禁止する取扱いに当たるものと解される。

▼ 当該労働者が軽易業務への転換および当該措置により受ける有利な影響ならびに同措置により受ける不利な影響の内容や程度、上記措置に係る事業主による説明の内容その他の経緯や当該労働者の意向等に照らして、当該労働者につき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる「合理的な理由」が客観的に存在するとき、または事業主において当該労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、その業務上の必要性の内容や程度および上記の有利または不利な影響の内容や程度に照らして、上記措置につき同項の趣旨および目的に実質的に反しないものと認められる「特段の事情」が存在するときは同項の禁止する取扱いに当たらないものと解するのが相当である。

▼ 承諾に係る「合理的な理由」に関しては、有利または不利な影響の内容や程度の評価に当たって、上記措置の前後における職務内容の実質、業務上の負担の内容の程度、労働条件の内容等を勘案し、当該労働者が上記措置による影響につき事業主から適切な説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たか否かという観点から、その存否を判断すべきである。

▼ 「特段の事情」に関しては、業務上の必要性の有無およびその内容や程度の評価に当たって、当該労働者の転換後の業務の性質や内容、転換後の職場の組織や業務形態および人員配置の状況、当該労働者の知識や経験等を勘案するとともに上記の有利または不利な影響の内容や程度の評価に当たって、上記措置に係る経緯や当該労働者の意向等も勘案して、その存否を判断すべきものである。

▼ Xにおいて、本件措置による影響につき事業主から適切に説明を受けて十分に理解した上でその諾否を決定し得たものとはいえず、Xにつき自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認める合理的な理由が客観的に存在するということはできない。

▼ 本件措置については、H組合における業務上の必要性の内容や程度、Xにおける業務上の負担の軽減の内容や程度を基礎付ける事情の有無などの点が明らかにされないかぎり、均等法9条3項の趣旨および目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情の存在を認めることはできないものというべきであり、これらの点について十分に審理し検討した上で上記特段の事情の存否について判断することなく、原審摘示の事情のみをもって直ちに本件措置が均等法9条3項の禁止する取扱いに当たらないと判断した原審の判断には審理不尽の結果、法令の解釈適用を誤った違法がある。原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決は破棄を免れない。


原判決を破棄する。
本件を広島高等裁判所に差し戻す。
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