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「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」

教育基本条例ができた近未来の大阪の学校の姿(朝日新聞より)

2011-10-28 | 大阪「教育基本条例」

 朝日新聞に「大阪府教育基本条例案とは」として、10月26日からシリーズで3回掲載されました。そこで描かれた近未来の学校での出来事がとてもリアルだったので、抜粋して紹介します。

大阪府教育基本条例案とは(上)

知事が決める教育目標

■「世界で勝てる人材育成」…20××年×月、知事が会見で発表

 「教育目標は『グローバル社会を勝ち抜く世界標準で競争力の高い人材を育てる』に決めました」。知事が記者会見で発表した。                                                             
 知事の目標に沿うよう、府教委は具体的な「指針」を示さなければいけない。教育委員会会議が開かれ、「難関大への進学者数増」「英語力 の向上」「ディ ベート力の強化」の3指針が決まった。各府立高校の校長は指針をもとに、学校が目指す具体的な数値目標づくりにとりかかった。
 成績下位の生徒が集まるA高校の校長は悩んでいた。生徒の4割が卒業せずに辞めていく。先生たちは面談や家庭訪問を繰り返しているが、 やる気を失った生 徒が心を開くのには時間がかかる。具体的な数値目標と言われても……。考えたあげく、職員室に先生を集め、目標を発表した。「生徒の自尊 心を高め、中退率 を下げる」
 数字に出ない努力を続けている先生たちの表情がいらだったように見えたのは気のせいだろうか。でも文句を言う先生はいなかった。教員は 校長の職務命令に 従うと条例で決められているからだ。議論しなくて済むのは楽だが本音でぶつかり合うこともない。本当にこれでいいのだろうか――。

[関連条項]

第六条 知事は、府教育委員会との協議を経て、府立学校が実現すべき目標を設定する。
第七条 府教育委員会は、前条第二項の目標を実現するため、具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成し、校長に提示する。
第八条 校長及び副校長は、学校運営を行うに当たり、教員及び職員に対して職務命令を発する権限を有し、教員及び職員はこれに従う義務を負う。
第九条 職員は、組織の一員として、教育委員会の決定、校長の職務命令に従うとともに、校長の運営方針にも服し、学校運営の一翼を担わなければならない。

大阪府教育基本条例案とは(中)

厳しい競争・成果主義 先生競わせ「活性化」目指す

 ■定員割れ 校長も降格…20××年×月、廃校の危機、迫る

 2年連続で受験者数が募集定員に満たなかったA高校。来年の入試でも定員割れすれば統廃合の対象だ。
 校長は部活動や生活指導に力を入れてきた実績を学校のホームページでアピールし、中学生や保護者向けに学校の説明会もたびたび開いてき た。だが「不人校」のレッテルをはがすのは難しく、中学校を訪ねても、進路担当教諭から「廃校の可能性がある高校に子どもを送り出すわけにはいかない」 と言われてしま う。
 「先生、私たちの高校なくなるの?」。生徒に聞かれ、返す言葉がなかった。
条例施行後、校長は「任期付き」となり、学校目標に照らして 業績を評価されるようになった。このままでは校長自身も「任期中に結果を出せなかった」として、ヒラ教員に降格されそうだ。
 B高校の校長も憂鬱(ゆううつ)な日々を過ごしていた。2年連続で最低のD評価をつけた教員に「なぜですか」と連日詰め寄られているか らだ。確かに、こ の教員は昨年より頑張っていた。でも教員の5%に必ずDをつけなければならない。B高校の教員数は60。その5%は3人だ。力量の劣るこ の教員を入れざる を得なかった。
 2年連続のD評価は免職を含む処分の検討対象になる。「クビになれば、あなたを訴えます」。教員にそう言われ、校長は胃痛がひどくなっ た――。
 
[関連条項]
第七条 府教育委員会は、府内の小中学校における学力調査テストの結果について、ホームページ等で公開しなければならない。
第十九条 校長は、授業、生活指導及び学校運営等への貢献を基準に、教員及び職員の人事評価を行う。人事評価はSを最上位とする五段階評価で行い、概ね次に掲げる分布となるよう評価を行わなければならない。S 五パーセント A 二十パーセント B 六十パーセント C 十パーセント D 五パーセント
第四十四条 三年度連続で入学定員を入学者数が下回るとともに、今後も改善の見込みがないと判断する場合には、府教育委員会は当該学校を他の学校と統廃合しなければならない。

大阪府教育基本条例案とは(下)

保護者も学校運営担う

■体力・技術「とても無理」…20××年×月、部活は親たちで切り盛り
 
 会社員のAさんは、娘の高校の学校協議会メンバーだ。教員評価の役割を持たされたが、先生たちの働きぶりなんて年1度の授業参観でしか 見たことがない。 教員は50人以上いるけれど、そもそも顔と名前が一致する人はごくわずか。校長から渡された評価シートに何も書き込めず、「どないして優 劣つければええん や」と困り果てた。
 校長からは、教科書の推薦も求められている。でもすべての教科書にじっくり目を通す時間はなかなか取れない。学校協議会のメンバーの中 に、ある教科書を 薦める人がいた。Aさんはその人の顔を思い浮かべ、「教育に熱心な人みたいやし、あの人の言う通りにしとこうか」と考え始めている。
 春から高校に長男を通わせる主婦のBさんは、入学式前に開かれた学校説明会で、教師のこんな発言に驚いた。「部活動は、保護者のみなさ んで面倒をみてもらいます」
 教師は顧問には名を連ねるが、授業に専念するため普段の練習にはなかなか出てこられないという。「運営方法は保護者のみなさんで話し 合って決めてください」と教師は言った。
 長男はテニス部に入りたがっている。だが体力的にも技術的にも、保護者だけでテニスを指導するなんてとても無理だ。Bさんもテニス経験 はゼロ。親がお金を出し合って外からコーチを招くしかないんかな――。

[関連条項]
第十条 保護者は、学校の運営に主体的に参画し、より良い教育の実現に貢献するよう努めなければならない。
2 保護者は、教育委員会、学校、校長、副校長、教員及び職員に対し、社会通念上不当な態様で要求等をしてはならない。
3 保護者は、学校教育の前提として、家庭において、児童生徒に対し、生活のために必要な社会常識及び基本的生活習慣を身に付けさせる教育を行わなければならない。
第十一条 府立高等学校及び府立特別支援学校に、保護者及び教育関係者(当該学校の教員及び職員を除く。)の中から校長が委嘱した委員で構成される学校協議会を設置しなければならない。
2 学校協議会は、校長の求める事項について協議し、学校運営に関し意見交換や提言を行うほか、次に掲げる権限を有する。部活動等の運営に対する助言、校長の評価、教科書の推薦に関する協議学校評価、教員評価

(ハンマー)  

 


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