エミコ

2016-03-24 17:55:03 | あれこれ
小学校の時の友達のエミコから久しぶりに連絡があり、電話で話した。

エミコとは、5-6年生の時同じクラスで親友だった。
エミコはハーフと間違われるような美人で、歳の離れたお姉さんがいたせいもあってか、
かなりのおませさんだった。
私の友達のことにはあまりあれこれ言わなかった母が、エミコのことだけは好ましく思っていなかったようだ。
エミコの家庭はちょっと複雑で、両親は再婚同士、2人のお姉さんとは父親が違うとか、
そういうこともあったのかもしれないが、
多分、エミコには小学生らしからぬ色気のようなものがあって、
それが気に入らなかったんじゃないかと思う。

確かにエミコは、次々といろんな男の子を好きになったり、
歳の離れたお姉さんのお下がりだという、大人っぽい服を着たりしていた。

エミコは足が悪かった。
常にびっこ(今は何と言うのだろう?)をひいていた。
走ると余計に肩が大きく揺れる。
それでも体育の授業には出ていたし、
太ももの横にかなり大きな手術の痕があったのだけれど、普通のスクール水着を着て水泳もしていた。

男子にはいつも「ダッチョ、ダッチョ」とからかわれていたが、
怒りはしても、慣れきったようにかわしていた。
「ダッチョ」とは、「脱腸」のこと。
エミコは、幼い頃に脱腸で手術をして足が悪いのだと聞いていた。
「脱腸って何?」と母に聞くと、
「腸が、外に出てくる病気」と言われ、
腸が足から出てくるのだろうか?と不思議に思ったが、それ以上は考えないのが私。

修学旅行の時、ぞろぞろと皆で歩いていろいろ見学していたのだが、
エミコは、かなり具合が悪そうで、保健の先生と一番後ろを歩いていた。
後ろからエミコの「はあはあ」という辛そうな息遣いが聞こえてくる。
心配そうに声をかける子もいたけれど、
どうしてだか、その時の私は、エミコに対して優しい気持ちになれなかった。
エミコとはとても仲良くしていたが、どこかエミコのことを快く思っていない部分があった。

中学に入ってからは、同じクラスになったことがなかったせいもあり、
エミコとはそれほど仲良くしてはいなかったが、会えば普通に親しく話す仲だった。

20歳くらいの頃だったか、町で偶然会ったエミコから結婚すると聞いた。
言ってみれば「男好き」のエミコが、こんなに早く結婚して大丈夫なんだろうか?
すぐに離婚なんてことになるんじゃないかと、ちょっと思った。

でも、そんな私の心配?に反して、エミコはちゃんとした家庭を築いていたようだ。
今は孫もいて、ご主人のご両親も未だ健在、がんばって主婦をしているらしい。

ずいぶん前に一度電話で話したんだと思うけど、エミコの子育てはかなり大変だったらしい。
赤ん坊をベビーベッドに寝かしておむつを替える。
その時、中腰になるのがものすごく辛かったという。
それで、2人目の子供を妊娠した時、中絶してしまったという。
「中絶までするかな?」と思ったけれど、相当に辛かったんだろう。

5年くらい前に、ものすごく久しぶりに会ってランチした。
その時に聞いた話。
エミコの誕生日は、1月1日なのだけれど、本当は半年くらい早く産まれたのだという。
事情はわからないけれど、エミコが産まれた頃、ご両親は山奥に住んでいて、
お母さんは医者にもかかっていなかったらしい。
エミコが産まれた時、お父さんは産婆さんを呼びにでも行っていたのか留守で、
隣のおじさんがエミコを取り上げてくれたと言う。
その時、逆子だったのを無理矢理足をひっぱって出したので、股関節を脱臼してしまったそうだ。
出生届を出したのも、足のことがわかって病院にかかったのも、
産まれてからずいぶん後のことだったらしい。
ご両親は、本当の誕生日を覚えていないと言ったという。

その頃、えりかさんとACの話ばかりしていた私にとって、それは衝撃的な話だった。
本当の誕生日を覚えてもいないという両親を責める様子もなく、あっけらかんと話すエミコ。
ご両親とは仲良くしていて、いろいろと病気の心配などしていた。
それに比べて、えりかさんのACも、私のACのなりそこねも、すごく贅沢な気がした。
もちろん、比較の問題ではないのだけれど。

今日、電話で話していて、話の流れから、
私がエミコが小学生の頃、足が悪いのを気にかけないかのように、体育をしていたことや、
傷跡を隠しもせずに水泳をしていたこと、今思うとすごいなあと思うということを話した。
今だったら、「かわいそうだから」とそんなことさせない親が多いんじゃないかと。
エミコは、そう言ってもらえると嬉しいけど、
当時は、本当は親には体育はやるなと止められていたのだと言う。
意地を張っていたとか、そういうことじゃなくて、ただ、自分がやりたいからやっていたと。

それを聞いて、私は一体エミコの何を見ていたんだろうと思った。
エミコは何て素敵な女の子だったんだろうと思った。
確かに、エミコが何も気にしない様子でいたので、私たちは、エミコを特別扱いすることもなかった。
でもきっと、私なんかが想像もできないほどの、辛さとか、葛藤とかを抱えていたんじゃないか。
もしかしたら、私が子供の頃父親がいないことを何とも思っていなかったように、
エミコも子供の頃には、あまり深刻に気にしてはいなかったのかもしれない。
でも、思春期とかにはいろいろと思い詰めたり、考えたりしたことはあっただろう。

私の知っているエミコは、明るくて元気な女の子。
次々と男の子を好きになっては、積極的に話しかける。
また近いうちに会って、ゆっくりといろんな話をしたいなあと思う。

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