イチローのMLB(Major League Baseball)での通算安打数は3089本で終わった。
私は野球中継など観たことがないのに、あの日だけはテレビの前で「あと1本、あと1本打てば、3090本になるのに……」と願いながらイチローの最後の打席を見守っていた。
別に数字にこだわっていた訳ではないと思う。3089本で終わっても、3090本で終わっても、安打数は1本なのだから大きな違いはない。なのにあと1本、ヒットで出ることを願って止まなかった。
イチローの公式戦安打数を手製のボード「イチ・メーター」で数えてきたエイミー・フランツさんも、私と同じ思いで見守っていたような気がしてならない。「29打席ヒットがありません」、「誰もがこの1本を願っている」と、実況中継していたアナウンサーも、同じ心境だったのでは?
最後の打席が内野ゴロで終わったとき、球場のスタンドから聞こえていた歓声が溜め息に変わった。
でも、3089というこの数字、3090とキッチリ終わらず、完結していないようなのだけれど、イチローの生き方に照らし合せてみれば、象徴的だと思った。確かに、達成されなかった数字ではある。でも、決してそこで終わった数字ではない。見方を変えれば、未