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世界経済の先行き左右する米中貿易戦争の着地

2019年03月29日 13時26分53秒 | 政治

 

                                

                     「植草一秀の『知られざる真実』」
                                

                                  2019/03/29
            

 世界経済の先行き左右する米中貿易戦争の着地
            

                                    第2293号
   

ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019032906000053288 ────────────────────────────────────

 昨年10月以来、金融市場の激動が続いている。
昨年10月初、日米株価は高値をつけた。
NYダウは史上最高値、日経平均株価は27年ぶりの高値を記録した。
波乱含みの2018年だったが、荒波を乗り越えて経済の浮上が展望できるか に見えた。
ところが「好事魔多し」である。
10月高値から一転、米国発でグローバルな株価急落が発生した。
株価下落の背景として私は三つの要因を提示していた。
1.米中貿易戦争
2.米国金融引き締め
3.日本増税政策
である。
米中貿易戦争が始動したのは昨年3月だった。
トランプ大統領が突然、中国の対米輸出に対して制裁関税を発動する方針を示 した。
米国が宣戦布告するかたちで米中貿易戦争が勃発した。
実際の制裁関税は7月6日に第一弾、8月23日に第二弾、9月24日に第三 弾が実施されてきた。
第三弾の制裁関税は中国の対米輸出2000億ドルを対象とするもので、制裁 関税の税率は10%とされた。

第三弾の中国の報復措置は米国の対中輸出600億ドルを対象とするもので、 制裁関税の税率は5~10%とされた。
中国と米国の輸出金額に大きな相違がある。
中国の対米輸出が5000億ドル規模であるのに対して、米国の対中輸出は1 300億ドル規模である。
トランプ大統領は米中が高率の制裁関税を発動する応酬になれば、米国が受け るダメージよりも中国が受けるダメージが上回ることを重視したと思われる。
この読みからトランプ大統領は激しい勢いで米中貿易戦争を拡大させてきた。
しかし、この判断は浅薄である。
中国経済が急激に悪化すれば、その影響が必ず米国にも跳ね返るからだ。
昨年10月初にNYダウが急落したきっかけは中国株価の急落だった。
国慶節の休暇明けに中国人民銀行が預金準備率を引き下げた。
金融緩和措置は本来株価上昇をもたらすものなのだが、中国株価は急落した。
中国経済の本格的な悪化が警戒されたのだと考えられる。
これを受けてNY株価が急落したが、株価下落を加速させる要因になったのが 米国の金融引き締め政策だった。
FRBでは昨年2月に議長が交代していた。
イエレン議長からパウエル氏に交代した。
パウエル新議長はトランプ大統領が選出した人物だから、FRBの金融政策が ハト派色を強めると予想されたが、この市場観測をパウエル議長が払拭した。

パウエル議長は2018年に4回の利上げを断行した。
4度目の利上げを決めた昨年12月19日のFOMCで、FRBはさらに20 19年に2回、2020年に1回の利上げを実施する見通しを示した。
米国の金融引き締め政策が世界経済の先行き警戒感を一気に強めることになっ た。
日米株価は2割の急落を演じ、上海総合指数は2018年1月末から3割の下 落率を記録した。
このタイミングで、10月15日、安倍首相は2019年10月の消費税率1 0%への引き上げを具体的に指示した。
新しい金融危機が到来する警戒感が広がったのである。
私が執筆している会員制レポート『金利・為替・株価特報』
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
では、10月上旬号で株価下落波動への転換を警告した。
2007年後半と類似した株価下落波動が生じる可能性を指摘したが、12月 までの株価推移は、その通りのものになった。
2019年は先行き警戒感が広がるなかで幕を開けたが、1月4日を境に潮流 が転換した。
潮流転換をもたらしたのはパウエルFRB議長の発言だった。
上記の『金利・為替・株価特報』は、1月上旬号で潮流転換を指摘した。
実際、パウエル発言を転換点にして主要国株価が急反発した。
しかしながら、2月末以降、新たな警戒感が広がる事態に移行している。
今後の経済金融情勢をどのように読むのか。
極めて重要な局面を迎えている。

不透明感が広がり始めたのは2月28日だ。
ベトナム・ハノイで開かれた第2回米朝首脳会談が決裂した。
合意が形成され、共同記者会見が実施されると期待されていたが、会談は途上 で打ち切られ、物別れに終わった。
トランプ大統領は、協議は進展しており、話し合いは今後も続くと述べたが、 不安心理が広がった。
経済金融市場の警戒要因となってきた二つの事項は、米中貿易戦争と米国金融 引き締めである。
1月4日のパウエル発言で金融引き締め加速に対する警戒感が大きく後退し た。
実際に、3月20日のFOMCでは市場の事前予想を超える政策転換が明示さ れた。
2019年のFRB利上げ見通しが、昨年12月の2回から0回に変更された のだ。
利上げ加速警戒感は大幅に後退した。

しかし、もう一つの警戒事項が存在する。
米中貿易戦争だ。
1月に入ると米中協議が加速され、3月末までに米中協議が決着するとの楽観 論が浮上し始めた。
トランプ大統領も米中協議が順調に進展していることを表明していた。
ところが、2月28日の米朝協議決裂で、米中協議の先行きにも暗雲が垂れ込 め始めた。
米朝協議同様、米中協議も物別れに終わるのではないか。
こうした警戒感が浮上した。
3月20日のFOMCにおける利上げ見通しの大幅変更は、米国金融引き締め 懸念を大幅に後退させる内容であったが、このことが別の新たな不安を呼び起 こした。
米国経済が景気後退に陥るのではないか。
こうした警戒感が広がり始めた。
3月22日のNY株価急落を受けて週明けの3月25日には日経平均株価も急 落して先行き警戒感が再び語られ始めた。

3月22日には米国の10年国債利回りが3ヵ月TB利回りを下回る「逆イー ルド」が観察された。
「逆イールド」は景気後退の先行指標との受け止めがあるため、金融市場で脅 威として受け止められた。
私は市場観測とはやや異なる見解を有している。
現時点で最重要の監視対象は米中貿易戦争のゆくえである。
米中貿易戦争が激化すれば、中国経済が受ける影響は甚大なものになるだろ う。
しかし、そのとき、米国経済が無傷でいられる可能性はない。
米国経済も深刻な影響を受けることを免れない。

詳細な見通しは『金利・為替・株価特報』をご高覧賜りたいが、これらの事情 のなかで米国のトランプ大統領がどのような対応を示すかが最重要事項にな る。
私はレポートで中国株価の相対的割安を強調してきたが、その中国株価指数が 2月初旬以降、急反発した。
中国経済の悪化ばかりが喧伝されているが、上海総合指数は1ヵ月で2割を超 す急騰を演じた。
中国では第13回全人代が開催されたが、このなかで中国政策当局は財政金融 両面からの政策総動員を決定した。
メディアが流布する情報と金融市場の動きの間には重要な時間差がある。
金融市場は未来の変化を先取りして変動する側面を有する。
今後の最大の焦点は米中貿易戦争のゆくえだが、その帰趨を決するのは、トラ ンプ大統領と習近平主席の判断である。
この二人の首脳の判断が世界経済の今後の展開を左右する。
日本では2019年10月の消費税増税の実施有無が決定的な重要性を持つ。
安倍首相はまだ最終判断できていない。
しかし、消費税増税実施に突き進むなら、その代償は計り知れないものにな る。
野党勢力は「消費税率5%への引き下げ」を参院選公約として明示するべきで あると考える。


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