曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

日韓問題経緯を正確に知ることが先決だ

2019年09月22日 09時34分42秒 | 政治

 

                                

                     「植草一秀の『知られざる真実』」
                                    2019/09/21
             日韓問題経緯を正確に知ることが先決だ
             第2436号
   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019092115121158645 ──────────────────────────────────── 米中の対立では米国が、日韓の対立では日本が敗北することになるだろう。
根拠は、米日の主張の正当性が希薄であることだ。
日本のマスメディアの大半は政治権力の御用機関に成り下がっているから、適 正な情報提供を行っていない。
言論人の多くも政治権力に媚びを売る者が大勢で、正当性のある主張を提示し ない。
多くの主権者は偏向したマスメディアというフィルターを通した情報しか得て おらず、政治権力によるメディアコントロールの餌食になってしまっている。
米国のトランプ大統領は右に左に揺れ動いているが、基本は、対中強硬路線を 採用している。
米国の対中貿易赤字を減らすために、中国からの輸入に制裁関税を発動した。
この関税率引き上げ行動がエスカレートしてきた。
中国も米国からの輸入に対する関税率引き上げに動いたが、これは米国の行動 に対する報復措置である。
中国から仕掛けたものではない。
中国は当初、米国の主張に譲歩する姿勢を示してきた。
米国からの農産物輸入拡大要求に応じ、政府による外国企業に対する技術移転 強要を禁止する法律の整備も行った。
ところが、米国の要求がエスカレートしたことを受けて対応を変化させた。
米国は中国に対して、民間企業同士の技術移転をも禁止することを求めた。

さらに、中国政府による産業補助金の全廃を法定化することも求めた。
しかし、これは過大な要求である。
中国政府は政府による技術移転強要を禁止する法律を制定した。
しかし、米国は民間企業同士の技術移転をも禁止することを求めた。
また、米国は中国政府による産業補助金の全廃を求めたが、これは、米国政府 が実施している産業補助金行政と矛盾するものだ。
米国は農業に対して巨大な補助金を投下している。
この補助金の力で米国農業は輸出競争力を確保している。
自国産業には輸出振興のための産業補助金を投下しながら、中国の産業補助金 を全廃しろというのは筋が通らない。
また、トランプ大統領は中国からの輸入全般に25%という高率の制裁関税を 適用しようとしている。
この関税率の水準は世界が保護主義に突き進んだ1930年頃に匹敵するもの だ。
自由貿易体制を破壊しようとしているのは米国であると認定せざるを得ない。
中国は5月の閣僚級会合の段階から、対米交渉での譲歩姿勢を修正した。
米国の不当な要求には屈しない姿勢を鮮明にした。
トランプ大統領と習近平主席の政治基盤を比較すると、トランプ大統領の基盤 の方が脆弱である。

これらのことから、私は一貫してこの米中対立で最終的に引き下がることにな るのは米国だとの見方を示し続けてきた。
トランプ大統領が強硬な姿勢を貫けば、米国経済はリセッションに突入するこ とになるだろう。
その場合には米国株価は下落する。
トランプ大統領はFRBに対する利下げ圧力を強めるだろうが、米国経済の本 格調整に対しては利下げの効果は限定的になる。
トランプ大統領は大統領選を目前にして窮地に追い込まれる。
結局のところ、米国が引き下がらざるを得なくなる。
日本の安倍首相は韓国に対して敵対的外交を展開している。
徴用工問題での韓国大法院判断に対する報復措置として、安倍内閣は対韓国貿 易政策を変更した。
徴用工問題と貿易政策のリンクを安倍内閣が懸命に否定しているが、何度も両 者の因果関係を強調してきたのは安倍内閣自身である。
この安倍内閣の行動が韓国によるGSOMIA破棄や韓国による日本のホワイ ト国除外措置を招き、同時に韓国訪日客の激減などの影響を招いている。
日本の御用メディアは事実を正確に報道せず、政治権力に媚びを売るために、 「韓国が悪い」とのキャンペーンを展開し、多数の主権者がその情報流布に よって洗脳されているが、結果として日本経済は深刻なダメージを受け始めて いる。
10月の消費税増税の影響とあいまって日本経済は深刻な不況に移行する可能 性が高い。
結局のところ、安倍内閣が引き下がらざるを得ない結果になると考えられる。

韓国大法院が昨年11月29日、三菱重工に対して、元徴用工に対する損害賠 償を命じる判決を示した。
10月30日には日本製鐵に対して損害賠償を命じる判決を示した。
日本政府はこの大法院判決が1965年の日韓請求権協定に反するものである として韓国政府に対して強く抗議している。
この判決がその後の通商政策における日本の対韓国敵対政策の原因になったこ とは、日本政府関係者のこれまでの発言経過から明らかである。
日韓請求権協定には「完全かつ最終的に解決」の文言が記されているが、日本 政府はこの文言について、2000年頃までは、国家の権利である外交保護権 の放棄を意味するだけで、個人の請求権を消滅させるものではないとしてき た。
法廷においても、日本政府は個人の請求権について日韓請求権協定で解決済み と主張することがなかった。
ところが、下級審で日本政府に不利な判断が相次いで示されると、日本政府は 解釈を突然変更し、請求権協定で解決済みとの判断を示すようになった。
強制連行された中国人労働者が原告になった西松建設強制労働事件の2007 年最高裁判決で、日本の最高裁は政府の変質した主張を受け入れて、訴訟に よって損害賠償を請求することができなくなったのがサンフランシスコ講和条 約の枠組みであるとの判断を示した。

しかし、この最高裁判断は世界人権宣言や国際人権規約に反するものである。
最高裁は、それでも個人の請求権は消滅していないことは認め、当事者間での 解決を勧めた。
実際に西松建設は原告との和解に応じた。
この2007年最高裁判決後は、個人が損害賠償を請求することができないと いうのが日本の判例法となっている。
他方、韓国でも、かつては裁判所が消滅時効や日本政府の既判力等を理由に被 害者の訴えを認めない判断を示していた。
このなかで、2010年、韓国併合100年を期して日本弁護士連合会と大韓 弁護士協会が共同宣言を発表した。
共同宣言は、日本政府に対して強制動員被害の真相究明と謝罪と賠償を目的と した措置をとることを求め、強制動員にかかわった企業に自発的な補償のため の努力を訴えた。
こうした状況変化等を背景に、韓国の司法判断が変化した。

2012年の日本製鐵徴用工事件大法院判決は、日本の植民地支配は大韓民国 憲法の根本原理に反する不法な強制的占領であり、植民地支配と直結した不法 行為に対する損害賠償請求権は日韓請求権協定の対象外であるとの判断を示し た。
大法院は事件を高等法院に差し戻し、高等法院は日本製鐵に賠償を命じた。
この事件の上告審判決が昨年10月末に大法院によって示され、日本製鐵が賠 償を命じられた。
現時点において、日本政府も韓国政府も個人の請求権を認めている。
しかし、日本では2007年以降、政府と司法当局が個人の損害賠償を求める 訴えを認めていない。
2000年までは個人の損害賠償請求は認められていたが、2000年頃を境 に日本政府が主張を変え、2007年以降は裁判所がこの主張を認めるように なった。

何度か紹介しているが、 「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」 http://justice.skr.jp/statement.html
は、韓国大法院判決について「被害者個人の救済を重視する国際人権法の進展 に沿った判決である」として、次のように指摘している。
「本件のような重大な人権侵害に起因する被害者個人の損害賠償請求権につい て、国家間の合意により被害者の同意なく一方的に消滅させることはできない という考え方を示した例は国際的に他にもある(例えば、イタリアのチビテッ ラ村におけるナチス・ドイツの住民虐殺事件に関するイタリア最高裁判所(破 棄院)など)。
このように、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権を国家が一方的 に消滅させることはできないという考え方は、国際的には特異なものではな く、個人の人権侵害に対する効果的な救済を図ろうとしている国際人権法の進 展に沿うものといえるのであり(世界人権宣言8条参照)、「国際法に照らし てあり得ない判断」であるということもできない。」
「安倍首相は、個人賠償請求権について日韓請求権協定により「完全かつ最終 的に解決した」と述べたが、それが被害者個人の賠償請求権も完全に消滅した という意味であれば、日本の最高裁判所の判決への理解を欠いた説明であり 誤っている。
他方、日本の最高裁判所が示した内容と同じであるならば、被害者個人の賠償 請求権は実体的には消滅しておらず、その扱いは解決されていないのであるか ら、全ての請求権が消滅したかのように「完全かつ最終的に解決」とのみ説明 するのは、ミスリーディング(誤導的)である。」

1995年の村山首相談話は植民地支配と侵略に対する痛切な反省と心からの お詫びを表明した。
植民地支配下の個人請求権は消滅しておらず、仮に日本が裁判によって損害賠 償を請求することができなくなっているとの立場を維持するにしても、西松建 設中国人強制労働事件での和解による問題解決が行われたことなどを踏まえれ ば、日本企業が賠償に応じることを全面的に否定することは正しい行動とは言 えない。
国連憲章(人権関連条項)、世界人権宣言、国際人権規約をはじめとする国際 人道法が国際的に承認されるに至って、日本政府の主張はもはや法的正当性を 主張できるものではなくなっている。
1965年の日韓条約、日韓請求権協定締結に至る具体的経過を、私たちは改 めてよく知る必要がある。
その後の問題経過のなかで、韓国政府の対応にも、日本政府の対応にも重要な 変遷があったことも事実である。
事実の経過を正確に把握した上で、冷静で適正な対応をとることが重要であ る。
このような局面に際して優れた著書が刊行された。
『徴用工裁判と日韓請求権協定  : 韓国大法院判決を読み解く』 (現代人文社、本体価格2000円) https://amzn.to/2mlGZgf
関係資料も網羅されている。
多くの者が提示する疑問を分かりやすく提示するQ&A方式で執筆されてい る。
このような良書によって事実関係を正確に把握することが問題解決の出発点に なることを強調しておきたい。


コメント   この記事についてブログを書く
« 【「消費税は社会保障の充実... | トップ | [Live]2019年9月21日 れい... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

政治」カテゴリの最新記事