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東アジアの平和と繁栄こそ日本の国益

2018年05月10日 09時46分13秒 | 政治経済、社会・哲学、ビジネス、

                                

                          「植草一秀の『知られざる真実』」

                                    2018/05/10

              東アジアの平和と繁栄こそ日本の国益

             第2036号

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東アジア情勢が大きく動いている。

米国のポンペオ氏が3月のCIA長官時代の北朝鮮訪問に続き、再度、国務長
官として北朝鮮を訪問した。

北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は3月に続いて再度北京を訪問して習近平主
席と会談を行った。

さらに、2年半ぶりの日中韓首脳会談が日本で開催された。

中国からは李克強首相が出席した。

6月初旬までに米朝首脳会談が開催される見通しが強まっており、米朝会談に
向けて各国が調整を急いでいる。

北朝鮮は拘束していた3名の米国人を解放し、ポンペオ国務長官とともに北朝
鮮を離れ米国に帰還を果たす。

日本の拉致問題が解決しないなかで、米国は大きな成果を獲得している。

朝鮮半島の南北首脳会談では、朝鮮半島の完全な非核化の方針が確認された。

停戦状態にあり、いまだに終結していない朝鮮戦争の終結と平和条約の締結も
検討課題に挙げられている。

韓国の文在寅大統領が主導した「対話」を基軸にした外交交渉が、驚くべき速
度で事態変化を誘導してきた。

「対話のための対話には意味がない」としてきた安倍首相の主張が空しく響い
ている。

問題の解決には、なお紆余曲折が予想されるが、北朝鮮が本格的な交渉のテー
ブルに着いた意義は極めて大きい。

日本、韓国、北朝鮮、中国は東アジアの隣国である。

平和で友好的な互恵関係を構築することが、この地域のすべての市民にとって
の朗報であることは言うまでもない。



米国は誠意をもって朝鮮半島の平和と繁栄実現のための役割を果たすべきであ
る。

北朝鮮は米国との交渉を適正に進行させるために、中国との関係を緊密化させ
ている。

リビアやイラクの前例があるため、北朝鮮が神経を尖らせるのは当然のことだ
ろう。

米朝首脳会談が成功し、朝鮮戦争の最終的な終結が実現し、日朝間の対話が実
現することによって、拉致問題の解決にも展望が開けてくる。

圧力一辺倒では何も動かなかった現実が、「対話」を基軸に置き始めた途端に
一気に動き始めたことを、私たちは再確認しておかねばならない。

日本と中国、日本と韓国、日本とロシアとの間の紛争は、領土問題に起因する
部分が少なくない。

しかし、その領土問題のすべてに米国が深く関与している。

1972年の沖縄返還に際して、尖閣諸島の施政権は日本に付与されたが、米
国は尖閣諸島の領有権については、日本の主張を認めなかった。

尖閣諸島の領有権について、米国は日本側にも中国側にも立たないことを表明
し続けてきたのである。

これが尖閣諸島の領有権をめぐる日中対立の大きな背景になっている。

竹島については、日本が独立を回復する直前に韓国の李承晩大統領が独島とし
て韓国領土として認定した。

この措置を米国が黙認したことにより、竹島=独島の領有権問題が日韓間で争
われる事態を招いている。



ロシアとの関係では、第2次大戦後、日本は国後、択捉の領有権を放棄してお
り、歯舞、色丹2島返還による日ソ平和条約締結の寸前まで交渉が進展した
が、米国が横やりを入れて平和条約締結が実現しなかった。

この「横やり」を契機に日本は、国後、択捉を含む北方四島が日本固有の領土
であると主張を始め、その結果、日ソ間の領土問題が解決せず、平和条約も締
結されぬまま現在に至っている。

これも、米国が日ソ間の友好関係確立を妨害してきたものであると評価するこ
とができる。

日本は東アジアの一国として、本来は、中国、韓国、そしてロシアと平和で友
好的な互恵関係を構築するべきであるが、米国が日中韓の緊密な関係構築を妨
害するとともに、日本の対米隷属勢力が意図的に東アジア諸国との関係を冷却
化させてきたのだ。

この勢力は北朝鮮の脅威を煽り、戦争リスクを人為的に創作してきたとも言え
る。

北朝鮮が核開発に執着してきたのは、北朝鮮が米国との交戦状態にあるととも
に、米国が敵対視したイラクやリビアが、米国によって殲滅されてきたという
歴史の現実を踏まえてのものである。

ものごとは多面的な視点から捉えなければ、全体像を掴むことができない。

国際情勢は複雑で、外交関係は複雑に多面的な利害が絡むから、単純思考で対
応するべきでないが、双方の利益を同時に高める方法が「平和と繁栄の確立」
であることを認識することが重要だ。

日本はアジアの一国であることを忘れるべきでない。

日中韓、そして、北朝鮮、ロシアと真に平和で友好的な関係を構築すること
が、すべての日本国民にとっての利益になることを踏まえた対応を取るべきで
ある。



北朝鮮は米国との対話に本腰を入れていると考えられる。

米国は決して北朝鮮をだまし討ちにかけるような対応を示すべきでない。

リビアに対して米国は、リビアの非武装化を強制した後で、リビアのカダフィ
大佐を虐殺する対応を示した。

イラクに対しても「大量破壊兵器を保持している」と言いがかりをつけて軍事
侵攻し、サダム・フセイン大統領を虐殺した。

北朝鮮が強硬な対応を示し続けてきた背景には、こうした歴史の事実が存在し
ている。

この点を踏まえずに、北朝鮮だけを悪者にして糾弾することは正当な評価とは
言えない。

日本は、米国にはへつらい、その一方で、中国や韓国に対しては居丈高に振る
舞う対応を続けてきたが、この基本姿勢を改める必要がある。

鳩山友紀夫氏が首相に就任する際、「東アジア共同体」の構想を明示した。

鳩山元首相は首相退陣後に「東アジア共同体研究所」を設立して理事長を務め
ているが、東アジア諸国が真に平和で友好的な外交関係を構築することが望ま
しいとの基本判断を貫き通している。



これこそ、私たちが目指すべき日本外交の基軸であると考える。

日米関係は日本にとってもっとも重要な二国間関係であり、日米友好関係が重
要であることは言うまでもない。

しかし、このことと、日本が東アジア諸国との真に平和で友好的な関係を構築
することは、いささかも矛盾しない。

東アジアの平和と繁栄を敵視しているのは、東アジアの軍事的な緊張を人為的
に創出して極東における軍事支出を拡大しようとしている米国の軍産複合体で
あり、この軍産複合体の「産業事情」が東アジアの軍事的緊張の最大の背景で
あると言える。

米国が世界最大の軍事大国であり、この軍事力を背景に、他国に対する干渉、
侵略行為を展開してきたことを踏まえれば、名実ともに世界第二位の大国に浮
上した中国が、軍事大国を目指すのは当然のことと言える。



世界規模の軍備縮小に舵を切るには、大国間の同意が必要になることは言うま
でもないことだ。

北朝鮮による拘束米国人解放は、米朝首脳会談の成果として提供されるとの見
方が強かった。

ところが、北朝鮮はその前の段階で米国人解放のカードを切った。

このことは、米朝首脳会談でより大きなカードが切られることを暗示するもの
である。

米国のトランプ大統領はイランとの核合意を破棄することを表明した。

核廃棄について、より厳格な行動を北朝鮮に求めるとの意思表示でもある。

北朝鮮が核廃棄についての決断を示すなら、米国は北朝鮮の体制保証を確約す
る必要がある。

この点について、中国が強い牽制力を働かせることになるのだろう。



「一瞬先は闇」であるから、今後、何が生じるのか、予断を持つことは許され
ないが、北朝鮮の非核化、南北朝鮮の統一、東アジアの平和と繁栄の確立が望
ましいことは言うまでもない。

日中韓の三ヵ国による首脳会談が開催されたが、中韓の距離が近く、日本が孤
立している印象は拭えない。

これは、安倍首相がこれまで中国や韓国に対して敵視対応を続けてきたことの
裏返しである。

北朝鮮に対しても安倍首相は敵視対応を続け、「圧力」一辺倒で対応してきた
が、その行為が拉致問題解決を妨げる要因になるリスクは決して低いとは言え
ないのである。

歴史認識においても、安倍首相は過去の日本政府が積み上げてきた「和解への
プロセス」を崩壊させかねない言動を繰り返してきた。

その結果として、歴史を乗り越えて未来志向の平和で友好的な関係の構築が遅
れてしまっている。



過去の過ちについては真摯な姿勢で謝罪をし、その上で、未来志向の友好的な
関係を構築するというのでなければ、真の和解は成り立たないことを私たちは
再確認するべきである。

東アジアの諸問題を解決する千載一遇のチャンスが到来している。

このチャンスを生かして、平和と繁栄を構築できるのか、再び、相互不信と緊
張の高まりに後戻りしてしまうのか。

日本と米国の対応が鍵を握る。

南北朝鮮、中国、米国、ロシア、そして日本が、協力して平和と繁栄の東アジ
ア情勢を構築するために、すべての努力を注ぐべき局面である。

 

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