
「植草一秀の『知られざる真実』」
2019/01/22
国家は国民の人権を守らず監視下に置く
第2242号
ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019012200183451437
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ポイントカード最大手のひとつであるTカードを展開する企業が、氏名や電話
番号といった会員情報のほか、購入履歴やレンタルビデオのタイトルなどを、
裁判所の令状なしに捜査当局へ提供していたことが発覚した。
「T会員規約」には、捜査当局への情報提供を明記しておらず、当局も情報を
得たことが本人に知られないように情報入手の事実を保秘していた。
Tカードの会員数は日本の総人口の半数を超える6676万人以上が利用、提
携先は83万店以上にのぼる。
Tポイントはコンビニやレンタルショップなど多種多様な店で買い物をすると
ポイントがたまるポイントシステムで、個人情報および利用情報はTカードの
運営主体であるカルチュア・コンビニエンス・クラブおよびグループ会社と提
携先に提供されるとされている。
しかし、捜査当局への情報提供は契約に明記されておらず、捜査当局に情報が
提供されていたことになると、重大な契約違反になる。
報道によると、捜査当局への個人情報提供は捜査令状なしで行われている可能
性があるとのことだ。
T会員規約によると、Tカードが扱う「個人情報」の主なものは以下の通り。
・「お客様登録申込書」の記載事項およびT会員ネットサービス登録お申し込み
時の登録事項 氏名、性別、生年月日、住所、電話番号、電子メールアドレス
等
・アンケート等により、会員として提供された事項
・提携先におけるご利用の履歴 商品名またはサービスの名称、金額、お買い
上げまたはご利用された日時、場所
・T会員ネットサービス登録状況およびTカードの停止・退会状況その他に関
する情報
・ポイントの付与・利用等に関する情報や電子マネーのチャージ・利用に関す
る情報等、T会員向けサービスの提供に必要な情報
・クレジットカード番号
・画像または音声によりその個人を識別できるもの
・ご意見、ご要望、お問い合わせ等の内容
・会員のコンピュータがインターネットに接続するときに使用されるIPアドレ
ス、モバイル端末でのアクセスによる契約端末情報
・モバイル端末による位置情報
・新たなサービスご利用の際にご提供いただく一切の事項
・その他個人情報保護法を遵守した上で、当社が取得するあらゆる個人情報
しかし、この規約には捜査当局への情報提供の記述がない。
明らかな規約違反であると言える。
Tポイントの運営会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(東京、C
CC)は、
「長年にわたる捜査機関からの要請や協議の結果、法令やガイドラインにのっ
とり、開示が適切と判断された場合にのみ、必要な情報を提供すると決定し
た」
としている。
しかし、会員規約に捜査当局への情報提供を明記していないのであるから、
「法令やガイドラインにのっとり、開示が適切と判断できるのは、裁判所の令
状によって開示を命令された場合に限られると考えられる。
捜査当局は、内部手続きの「捜査関係事項照会」を使い、どの店をどのような
頻度で利用するかなど、私生活に関する膨大な情報を外部のチェックを経ずに
入手している可能性が高い。
警察や検察の内部資料によると、Tカードの
(1)会員情報(氏名、生年月日、住所など)
(2)ポイント履歴(付与日時、ポイント数、企業名)
(3)レンタル日、店舗、レンタル商品名
(4)防犯カメラの画像
などがCCCから提供されてきた模様である。
ポイント履歴やレンタル履歴は13カ月間保存と記載されていた。
二つの重大な問題がある。
第一は、民間事業会社が顧客に無断で個人情報ならびに取引情報を警察当局に
提供していたという事実である。
事業会社の顧客に対する背信行為であり、民事上の損害賠償請求の対象になり
得る事案である。
T会員の数は日本の人口の半分を超えている。
半端な数ではないのである。
事業会社が捜査当局に情報を提供するのは、刑事司法権力への迎合、すり寄り
であり、民主主義社会において、このような「権力の犬」的な行為は容認され
るわけがない。
メディアがこの問題をどのように伝えるのかが注目されるが、民間企業の行動
として許されざるものである。
このような企業の存続を市民は許すべきでない。
第二の問題は刑事司法当局が民間事業者から不正な方法で情報を提供させてい
たことである。
プライバシーの保護は民主主義社会の根本原理である。
捜査当局が民間事業者に対して個人情報、プライバシー情報の提供を強要する
構図が見える。
日本ではマイナンバーの制度が導入されたが、市民が警戒するのは、政治権力
が権力を笠に着て個人情報を収集し、監視社会を構築することである。
日本では明治時代以来、
人権に対する国権の優越
が支配してきた。
転換点になったのは明治6年政変である。
維新政府の二大支柱は江藤新平と大久保利通だった。
明治6年政変を利用して大久保利通が宿敵江藤新平を抹殺した。
大久保は全権を強奪し、宿敵江藤新平を、江戸刑法を用いて抹殺したのであ
る。
人権尊重の江藤新平に対して大久保利通は国権優先だった。
国権のためには人権蹂躙を是としたのが大久保利通である。
これに対して、人権尊重を貫いたのが江藤新平であった。
明治6年政変を大義名分に、大久保利通は宿敵江藤新平を抹殺した。
これを契機に日本の刑事司法には、国権優先のDNAが脈々と受け継がれるこ
とになった。
日本の刑事司法は国権優先である。
つまり、国権のためには人権は犠牲になって構わないという姿勢である。
日本の刑事司法の基本姿勢は
「たとえ100人の冤罪被害者が発生しても1人の真犯人を逃すなかれ」
である。
本来の刑事司法の鉄則は、
「たとえ100人の真犯人を逃しても1人の冤罪者を生むなかれ」
である。
これが人権尊重の基本姿勢なのだ。
刑事司法当局は、不正な民間企業と癒着して、国民を監視下に置こうとする。
この発想には、市民による政府という基本が完全に欠落している。
権力は市民を監視、監督する立場にあり、支配下の市民に対する監視は権力の
当然の権利であるとの発想がベースに置かれている。
戦後の日本は、国民主権、基本的人権の尊重を根本原則に置いたはずであった
が、これは建前上の原則でしかないのである。
権力は国民の上に立ち、国民の人権は尊重するべき対象でない。
この精神が一貫して保持され続けてきた。
政治権力による個人情報収集はTポイントに限ったものではない。
インターネット、人工衛星、GPS(全地球測位システム)、遠隔操作、レー
ダー、無人機、生体認証、大量のデータから個人情報が瞬時に、そして大量に
収集されている。
政治権力に迎合する企業、政治権力と癒着して巨大利得を得ようとする民間資
本が、インターネット上の巨大情報を政治権力に提供している。
市民の生活はデジタル機器と不可分の関係に置かれつつある。
デジタル情報は通信技術と融合して、巨大なデータベースを構築し、政治権力
が市民を監視する、市民を抑圧するためにこのデータベースを活用する現実が
生まれている。
個人のプライバシーは政治権力の手の内に置かれ始めている。
カルチュア・コンビニエンス・クラブによる犯罪的行為を私たちは見逃してな
らない。
刑事上、民事上、道義上の責任を徹底的に追及しなければならない。
政治権力と癒着する企業はCCCだけではない。
デジタル化が進む現代世界の中心に居座る巨大なハイテク企業が政治権力と癒
着して、個人情報、個人のプライバシーを政治権力者に売り渡す現実が広がっ
ている。
メディアはこの重大事実を大きく取り上げないが、民主主義社会の根幹を破壊
する重大犯罪事案である。
Tポイント問題の真相解明と厳正な責任問題処理が求められている。
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