曲学阿世:真実を追求し、虚実の世間に迎合するようなことはしたくない。

真実を曲解し不正な情報によって世間の人々にこびへつらい、世間にとり入れられるような、ことはしたくない。

202年日本外交マイナスからの修復

2020年01月05日 15時47分07秒 | 政治

                                

                      「植草一秀の『知られざる真実』」

                                       2020/01/04

              2020年日本外交マイナスからの修復

           第2521号

   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2020010421261662286
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日本では日韓問題についての冷静で知的な論考が少ないが、この問題を理解す
る良書が刊行されているから、多くの人がこうした良書を読んで知識と見識を
広げることが重要だ。

情緒的な好き嫌いの感情で重要問題を考えるべきでない。

歴史的な見地に立てば、村山談話が明示した認識を日本人が全体として共有す
るべきである。

村山談話は次のように記述している。

「わが国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を
存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア
諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えました。」

「私は、未来に誤ち無からしめんとするが故に、疑うべくもないこの歴史の事
実を謙虚に受け止め、ここにあらためて痛切な反省の意を表し、心からのお詫
びの気持ちを表明いたします。」

私たちが中国や韓国と接するときに、この認識を共有しておくべきことは極め
て重要である。

村山談話を批判する者は存在するが、安倍首相でさえ、村山談話を否定せず、
全体として引き継いでいる。

否定していないということは肯定しているということであり、この認識を共有
することは是認されるべきことだ。

日韓問題についての良書とは、

『徴用工裁判と日韓請求権協定
 : 韓国大法院判決を読み解く』
(現代人文社、本体価格2000円)
https://amzn.to/2mlGZgf

である。

関係資料も網羅されている。



本ブログ、メルマガでは日韓問題を何度も取り上げてきた。

2019年9月21日付ブログ記事
「米中対立・日韓対立のゆくえ」
https://bit.ly/2DVYPfu

メルマガ第2436号記事
「日韓問題経緯を正確に知ることが先決だ」
https://foomii.com/00050

2019年12月7日付ブログ記事
「徴用工裁判と日韓請求権協定の真実を知る重要性」
https://bit.ly/39AitfA

メルマガ第2499号記事
「日韓問題解決を妨げている反知性主義」

韓国も中国も日本の隣国である。

歴史的にも極めて深い交流関係を有する。

もとより、日本の文化・伝統の淵源は大陸より伝来したものが多い。

当然のことながら、民族的にも重なり合う部分を多く有している。

そのなかで、日本が過去に侵略と植民地支配によってアジア諸国の人々に対し
て多大の損害と苦痛を与えたことは、疑うべくもない歴史の事実である。

これを否定するというなら、まずは村山談話そのものを否定しなければならな
い。



在韓国日本大使館前の少女像について、日本政府は「韓国政府は約束を守らな
い」と主張するが、ここでいう「約束」とは2015年12月の日韓外相によ
る合意のことを指すのだろう。

その合意で韓国側が言明したのは、

「韓国政府は、日本政府が在韓国日本大使館前の少女像に対し、空間の安寧、
威厳の維持といった観点から懸念しているという点を認知し、韓国政府として
も可能な対応方法に対し、関連団体との協議等を通じて適切に解決されるよう
努力する」

ことであって、少女像の撤去ではない。

岸田外相発表文書のなかに

「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」

の表現はあるが、このことが具体的に何を指すのかは明確でない。

徴用工裁判での韓国大法院判決を安倍内閣は「国際法違反だ」と主張するが、
これは安倍内閣の主張であって、客観的事実ではない。

韓国大法院が国際法に則って判決を示したとしているからだ。

NHKは報道で、安部内閣の「国際法違反だ」の主張しか伝えないが、この報
道は客観性を欠いている。

もとより日本政府も元徴用工の人々の個人請求権を否定していない。

1965年の日韓請求権協定は日韓国交正常化に伴い両国間で締結されたもの
で、両国とそれぞれの国民間で「請求権」の問題を「完全かつ最終的に解決さ
れたことを確認する」と明記している。

しかし、その後に国際人権法の進展が存在している。

国連憲章(人権関連条項)、世界人権宣言、国際人権規約をはじめとする国際
人道法が国際的に承認され、重大な人権侵害に起因する個人の損害賠償請求権
を国家が一方的に消滅させることはできないという考え方に立った裁判所判断
が示される事例が世界で多数存在する。

この点を踏まえれば、韓国の大法院判断を国際法違反とは言い切れない。

2020年は日韓問題について冷静で知的な対応が求められる。



日本は韓国大法院判断を不服として、これを理由に貿易政策で韓国に対する嫌
がらせ措置を採った。

韓国がWTOに提訴すれば、日本に不利な判断が示される可能性も高い。

そして、日韓関係の急激な悪化を招いている。

いまは嫌韓一色だが、少し前は嫌中一色だった。

米国と組んで「中国包囲網」を形成すると安倍首相は意気込んでいた。

しかし、インドは日本との関係よりも中国との関係を重視する方向感を示して
いる。

韓国も中国との密接な関係構築に務めている。

こうしたなかで、安倍内閣は中国の習近平氏を国賓で招聘する方針を決めてい
る。

朝令暮改も甚だしい。

ご都合主義というか、外交に基軸が感じられない。



唯一、一貫しているのは対米隷属の基本だけだ。

この1月に発効した日米貿易協定ならびに日米デジタル貿易協定は日米FTA
の一部をなすものである。

安倍内閣は日米FTAではなく、日米TAGだと主張するが、TAGは日米物
品貿易協定のことで、これは日米通商交渉の22分野の一つに過ぎない。

米国は日本との協議開始に際して議会に対して交渉目的を公開している。

米国では、交渉開始の30日前までに交渉目的を公開することが政府に義務づ
けられているからだ。

この義務に基づき、米国でパブリックコメントや公聴会が実施され、その結果
をUSTRが「交渉の目的」として公開した。

USTRは「交渉の目的」として以下の22分野を明示した。

①物品貿易、②衛生植物検疫、③税関、貿易円滑化、原産地規則、④貿易の技
術的障害、⑤良い規制の慣行、⑥透明性・公告・管理、⑦サービス貿易(電子
通信及び金融サービスを含む)、⑧デジタルの物品貿易及びサービス、越境
データ移転、⑨投資、⑩知的財産権、⑪医薬品及び医療機器における手続きの
公正、⑫国有企業及び政府管理企業、⑬競争政策、⑭労働、⑮環境、⑯腐敗防
止、⑰貿易救済、⑱政府調達、⑲中小企業、⑳紛争解決、?一般規定、?為替

この交渉分野はTPPと完全に重なる。

つまり、日米通商交渉は日米FTA交渉そのものなのだ。

この22分野のうち、①物品貿易、と⑧デジタルの物品貿易及びサービス、越
境データ移転、の分野の協議が先行して行われ、これが米国主導でスピード決
着させられたのだ。



トランプ大統領の最重要関心事項は11月の大統領選だ。

大統領選の勝敗を決する中西部の激戦州の農民票を獲得するために、日本への
輸出拡大の取り決めを早期に実現することが必要だった。

同時に激戦州の中西部・五大湖周辺諸州は自動車産業の集積地でもある。

自動車および自動車部品分野の日米協定も重要である。

その結果として、安倍内閣は完全な売国外交を展開した。

安倍内閣は米国への自動車輸出の関税率引き下げをTPP交渉で行った。

その結果も、極めて不本意な不平等なものだった。

日本から米国への自動車輸出には、普通車で2.5%、大型車で25%の関税
が適用されている。

米国自動車販売の中核は大型乗用車で、これに25%の高率関税が適用されて
いる。

自由貿易協定というなら、まずはこの関税撤廃が筋だ。

ところが、日本政府は大型乗用車の29年間関税引き下げなしを呑まされた。

普通乗用車も関税撤廃は25年目とされた。

1858年の日米修好通商条約以来の不平等条約と言って過言でない。



ところが、日米物品貿易協定ではこの関税撤廃ですら反故にされた。

茂木外相は関税撤廃の合意があると国会答弁しているが虚偽である。

日米間で取り決めしたのは継続協議であって関税撤廃でない。

日本外交が壊滅状態である。

拉致問題の解決は安倍内閣の最重要課題だとしながら、何一つ進展がない。

米ロ中韓日の五ヵ国トップで金正恩と直接会談の機会を得ていないのは安倍首
相だけである。

日韓関係悪化で日本国内の多様な産業から悲鳴が上がっている。

結局は、安倍内閣が後退を迫られることになるだろう。

2020年は日本外交を大幅マイナスから修復しなければならない。

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