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堤防強度不足情報公開で浸水リスクを明示

2019年10月16日 10時32分04秒 | 政治

 

                                

                    「植草一秀の『知られざる真実』」
                                    2019/10/16
             堤防強度不足情報公開で浸水リスクを明示
             第2457号
   ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2019101606000059403 ──────────────────────────────────── 木・火・土・金・水を五行という。
五行は天(陽)・地(陰)から派生した五種類の作用および法則のこと。
世界はこの五つの作用から成り立っているという世界観を表す。
土は鉱物を生み出し、鉱物の間から水が湧き出る。
金 生 水(きんしょうすい)という。
また、水は火を消す働きを持つ。
水 克 火(すいこくか)という。
さらに、水は養分となり木を生育させる。
水 生 木(すいしょうもく)という。
その水は土にせき止められる。
土 克 水(どこくすい)である。
「水は方円(ほうえん)の器(うつわ)に随(したが)う」
といい、水は、容器の形によって、四角にも丸くもなる。
柔軟性を備えている。
同時に、「雨垂れ石を穿(うが)つ」ともいい、
軒下から落ちるわずかな雨垂れでも、長い間同じ所に落ち続ければ、ついには 硬い石に穴をあける。
恐るべき強さを内に秘めている。
この「水」を克すのは「土」である。

台風16号が伊豆半島に上陸し、関東地方を縦断した。
台風16号は大型で猛烈な台風であった。
それでも上陸時の気圧は960HPで「強い台風」に分類される強さだった。
ただし、大型で台風を取り巻く雲が広く広がり、台風の進行速度が速くなかっ たために雨による大きな被害をもたらした。
10月15日夜の時点で死者74名、行方不明者12名にのぼっている。
河川決壊は7県の52河川、73箇所と発表されている。
関東地方を直撃する台風としては史上最大級の台風であるが、過去に経験のな い規模ではない。
1958年に襲来した狩野川台風による人的被害と比較すれば被害規模は相対 的に小さいが、災害被害の絶対規模としては極めて甚大である。
台風の規模は「想定の範囲内」であったにもかかわらず、ここまで被害が拡大 したことを当然視できない。
政府の最大の役割は国民の生命と財産を守ることである。
この意味で、政府は十分に役割を果たしたと言えない。
結果を精密に検証して行政を是正する必要がある。
もちろん、いま直ちに求められることは被害者の救援、救出、被災地の復旧で あるが、同時に災害の検証と対応策の構築が必要不可欠だ。

土砂崩れ等による被災も発生したが、災害規模が拡大した最大の要因は河川氾 濫である。
河川氾濫のなかでも、決定的に深刻な影響が生じる「堤防決壊」が73箇所も 発生したことが重大だ。
「堤防決壊」は河川の水位が増し、河川の水が堤防を越えてしまう「越水」に よっても発生するが、「越水」していないのに堤防が決壊してしまう事例も発 生した。
想定される勢力、規模の台風の襲来により、このような河川氾濫が生じるので は、国民は安心して暮らせない。
仮に河川氾濫を回避することが困難であるとしても、河川氾濫の可能性に対し て適切な避難誘導が実現していないのでは安全・安心は得られない。
無論、一人一人の個人がリスク管理することは必要だが、そのリスク管理を適 切に実行するための情報提供が強く求められる。
豪雨が発生した際に、河川氾濫の事態を回避するための方策として、
1.ダムによる河川水量の管理
2.堤防の保全
がある。
さらに、それでも河川氾濫が発生する場合に備えての
3.適切な避難誘導
が重要性を持つ。
結果的に見て、今回の災害では、この三つのすべてにおいて欠陥があったと言 わざるを得ない。
早急な是正が求められる。

豪雨が発生した際、治水ダムがあれば、河川に流入する水量を調節できる。
それでもダムの容量には限界があるから、ダムのキャパシティーを超えてしま う場合には「緊急放流」も必要になる。
しかし、「緊急放流」は下流域に甚大な影響を与えるから、徹底した情報管理 と適切な運営が求められる。
台風19号では、茨城など4県と国が12日夜から13日未明にかけ、治水機 能を持つ6箇所のダムで緊急放流を実施した。
ところが、これらのダムでは「事前放流」を行っていなかったと伝えられてい る。
昨年、西日本豪雨では上流のダムで緊急放流が行われた愛媛県西予市で、河川 が氾濫し700棟近い住宅が全半壊もしくは浸水し、5人が死亡した。
この西日本豪雨の教訓として、ダムの事前の水位調節が提言された。
「事前放流」とは、洪水の発生を予測した場合に、制限水位以下の利水容量な どを放流して、治水容量として一時的に活用する手法である。
利水のために蓄えておくべき水も、洪水対策として事前に放流して、治水のた めの容量を拡大させておく手法だ。
ところが、「緊急放流」を行った6箇所のダムでは「事前放流」を実施してい なかった。

記録的な豪雨がもたらされることが気象庁から再三アナウンスされた。
治水の観点から、各所ダムでは、当然のことながら「事前放流」を行い、治水 容量を確保しておくべきだった。
神奈川県の城山ダムも最終的に緊急放流を実施したが、実施した時点では降雨 が大幅に減少していたため、緊急放流による下流域への影響は抑制され、河川 氾濫などの被害が広がらなかった。
しかし、事前放流で治水容量を拡大させておけば緊急放流を回避できた可能性 もある。
第二の問題は堤防決壊である。
ダムで河川への雨水流入量を調節し、河川によって雨水を効果的に大洋に流出 させるためには堤防の強度が必要になる。
堤防は極めて延長が長い構造物であるうえ、河川堤防の堤体や基礎地盤の内部 構造が不明である場合が多いため、堤防を完全に強化して豪雨時の堤防決壊を 回避することは容易でない。
しかし、ひとたび堤防決壊が発生してしまうと、極めて深刻な被害が広がると ともに、復旧にかかる費用も膨大なものになる。
この点を踏まえれば、堤防決壊を回避する堤防補強策を事前に施す方が経済的 には安価ということになる。

2015年の鬼怒川氾濫や今回の千曲川氾濫では、河川や堤防の構造から、事 前に堤防強度の不足が懸念されていた。
全国の主要河川について、堤防強度の評価を行い、大規模災害を事前に防ぐた めの堤防強化策を実施することが求められる。
国会で官民ファンドに巨大な資金が投下されて巨大損失が生み出されている事 例が追及されているが、現在の財政構造では、まったく必要のない対象に巨額 の公費、国費が投下され、本当に必要なインフラ整備に資金が投下されないと いう本末転倒が生じてしまっている。
国民の命と財産を守る視点からすれば、防災対策への財政資金集中投下は肯定 されるべきだ。
記録的豪雨が発生しながら、東京や神奈川で大規模河川氾濫は生じていない。
堤防強度に大きな相違があることが推察される。

しかしながら、堤防強度の強化を図り、大規模水害の発生を回避することを短 期間に展望することはできない。
堤防強度が不足していると推定される箇所は無数に存在しており、これらの堤 防を強化する施策がまったく追いついていないからだ。
そうなると、次善の策として求められるのは、堤防決壊が発生し得る地点をあ らかじめ特定し、堤防決壊が発生した場合に、どの地域にどの程度の浸水被害 が発生するのかを事前に明確にした上で、必要不可欠な避難措置を周知徹底す ることだ。
このためには、ハザードマップの全面的な活用が必須になる。
テレビを通じて避難勧告、避難指示が提示されても、必ず避難しなければなら ない「避難指示」発令の局面では、屋外に出ての避難が困難である場合が多 い。
また、夜間に避難指示が出されても安全に避難場所に移動することは困難だ。

テレビで地名、町名が列挙されて、避難勧告や避難指示が提示されても、個々 の市民は具体的にどのような危険が差し迫っているのかを判定できない。
安易に受け止めて避難行動を取らず、重大な危険にさらされるケースが多い。
この意味で、土砂災害特別警戒区域などと同様に、河川氾濫に伴い、重大な浸 水被害を受ける可能性のある地点に居住する住民に対しては、その潜在リスク を事前に明確に伝達することが必要である。
その際に重要になるのは、堤防決壊リスクの程度を明確に伝えることだ。
「堤防は決壊しない」という架空の「安全神話」が前提になっていたのでは正 確なリスク管理は不可能だからだ。
事実を正確に伝達することは不動産の価格等へも影響を与えることになる。
しかし、その影響を回避するために真実の情報を伝えないのは本末転倒だ。
堤防強度に不安がある箇所では、多くの地点が潜在的な洪水浸水被害のリスク を保持することになる。
JR東日本の長野新幹線車両センターはハザードマップ上のリスクが高い地点 に敷設されたもので、リスク管理上の重大な問題が存在した。
潜在的な浸水リスクが明確になっていて初めて、大雨特別警報などが有効に活 用されることになる。

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