うさぎの病気には、実に様々なものがあります。
最もポピュラーなものは、どの飼育書にもネット情報にも、また個人のHPにも1度は
目にしたことがあると思います。
パスツレラ症
おおよそ、パスツレラ菌(パスツレラマルトシダ)が原因菌となり、スナッフルや膿瘍
などの症状を引き起こす。この病気はストレスが主な原因である。
パスツレラ菌は主に、鼻腔内や肺に好んで住み着く。
以上のようなものです。
パスツレラ菌、と一口に言っても、沢山の種類があり“パスツレラ〇〇”と名前があり
生物兵器にも使われる細菌です。パスツレラ菌の中には、まったく抗生剤が効かないものも
あり、そいういった菌はまれで、人畜共通感染症(ズーノーシス)ではありますが、正しい
知識を持って対処すれば、怖いことはありません。過度なスキンシップ、パスツレラ症を
発症した個体や、膿瘍などに触れない、手洗いやうがいをする、等です。
犬猫からの感染例は毎年いくつかあがりますが、いずれもお年よりやお子さん、病気療養中
など、人の免疫力が低下していた場合が多いようです。
うさぎにおいては殆どが母子感染であり、どんなウサギも体内に保菌しています。
保菌していないウサギは、実験用ウサギだけと言っても過言ではありません。
実験用ウサギは、無菌系統を守りブリードされたウサギ達です。
一度、戸外から連れてこられたウサギを1頭でも放せば、たちまち感染症に冒されて
しまいます。
さて、一般のカイウサギでは保菌していても、全てが発症するわけではありません。
不運にも若くして発症し、命を落とす仔もいるでしょう。また、老齢になり発症する
子もいるでしょう。先にも書いたように、ストレスが原因であり、何がストレスに
なったかは、そのウサギのみにしか解りません。
パスツレラ症とは、パスツレラ菌が原因菌になって発症した症状の総称です。
大抵、膿瘍や内臓疾患はこのパスツレラ症に分類されます。
スナッフルの症状を真っ先に発症し、その後、膿瘍や腎臓、子宮などの臓器に、なんらかの
疾患が認められます。しかし、スナッフルを発症せず、いきなり膿瘍や内臓疾患を発症する
ケースもあります。以前、elleの治療で相談させていただいたアメリカの獣医師は、これらを
スナッフルズ・コンプレックス
と称しています。こういった症状は、主に母子感染で保菌していたものであり、その菌も
より強い菌である場合が多い、としています。母子感染を垂直感染、多頭飼いなどで仲間
からの感染を平行感染と言いますが、平行感染での発症はスナッフルの場合が多いようです。
元々、親が劇症性の強いパスツレラ菌を持っていると、その子ども達も将来、膿瘍や内臓
疾患に陥ります。どうして体内でも発症の部位が変わるかといえば、そのうさぎにとって
一番、弱いところに出るからです。ですから、よく聞かれる避妊・去勢をしましょう!の
説明に、子宮疾患を予防する為の処置です、は、確かにその臓器が無くなれば発症はしま
せんが、他の臓器での発症する危険があり、根本の原因を取り除くことにはなりません。
親や兄弟の中で、パスツレラ症を発症した個体があれば、発症する確率はあがるでしょう。
うさぎ自身が内在している菌なので、根絶は難しいものです。まずは、発症させない丈夫な
体を作ること、ストレスを軽減する、他の感染ウサギとの接触を避ける、といった予防に
専念することです。