ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

不親切な幻獣の舞

2007-07-19 10:10:53 | 日記
やっと「バチェラレット」フルで見れました。
関西では、DOIの放送は21日なんですけどね。
まさかその前に、CSフジの「スノーブレイク」で見れるなんて思わなかったですよ。しかもアンコールまでフルに付けて。F1のためにフジのCSチャンネル契約してるのがこんな所で役に立つとは。
そういう訳で「バチェラレット」。相変わらず、「言葉はいらないですねー」と力説しながら喋り倒す八木沼さんと、のんびりムードな荻原次晴さんのゆるーい雑談付き。

***

個人的には全然OKです。寧ろ感涙モノです。
以前にも書きましたが、「ノクターン」を見た時から大ちゃんに期待していたもの、それが期待以上のカタチで現実になったという感じ。
何とも深い表現ですよね。あの濃厚なエロスを漂わせる「ロクサーヌ」でさえ、表層的だと感じてしまう。

しかし…尖ったアート作品というのは、決してお子様からお年寄りまで万人に分かりやすいというものではありませんね。その意味では、とても不親切な作品(敢えて作品と呼ばせて頂きます)であると言えます。
見る側に要求するハードルが結構高いかも。
フィギュアスケートの演技というよりはアートパフォーマンスのようで、オーソドックスで分かりやすい演技を求める向きには、戸惑いの方が大きかったかも知れません。
本来単館上映で、コアなマニア向けにやるようなアート指向の強い難解映画を、大型シネコンで分かりやすい娯楽作品を期待している人たちの前で上映しちゃったような「いいのか? これで」というギモンも感じない訳ではありません。それでも敢えてこれをやった宮本さんと大ちゃんは、すごく勇敢だし挑戦的だ。私は買いますよ、その心意気(でもさすがにこれをトリでやることは想定してなかったんじゃないかなとは思いますが)。

しかしこれの後でアンコールのオペラ座を見ると、モロゾフさんてやっぱり抜け目ないなーと思いました。とても親切です。分かりやすい。

大ちゃんのファンだからと言って、無理にこれを好きになる必要はないと思いますよ。分からない人には分からない。コレはそういうプログラムだと思います。
でも逆に、コレを見て、これまでフィギュアや大ちゃんに興味がなかった人が「おっ、結構やるじゃん」と思ってくれたりしないかなーとか実は密かに思ってたりして。

***

それにしても、見れば見る程奇妙にイメージがかき立てられるパフォーマンスです。
ていうか段々、大ちゃんがキマイラ化しているように見えて来ました。

夢枕獏のキマイラシリーズって、実は内容知らないんですけどね。
高校の図書室にあったのを8巻くらいまで頑張って読んだんですが、どういう話なのかさっぱり分からなくて途中で投げました。

でもマジで最後のステップの所なんかは、若者の体の中で目覚めた幻獣が獲物を求めてひしりあげ、本能のままに襲いかかる様を思わせました。
ていうか、「ひしる」という夢枕語はなるほどこういう事を言うのかと見てて思いました。
天野喜孝氏の美麗なイラストに魅かれて読んでたんですよねキマイラシリーズ。故に、このプログラムの大ちゃんは私の中では天野絵のイメージです。

***

私が何より大ちゃんに魅力を感じるのは、スケート靴を履いていることを意識させないくらい自然に足の動きを踊りの中に取り入れて、尚かつスケートでなければ不可能な表現を成立させていること。
スケートの技の合間に踊るのではなく、スケートそのものが踊りになっている。
私は本来「フィギュアスケート」のファンではありません。だからパフォーマンスが「スケートである」ということを実はあんまり意識したくない。でも同時に、スケートとは無関係な「美しい踊り」なら、無理にリンクに行かずにバレエなりなんなりを見れば良いことだとも思います。
嫌な観客ですね。
そんな私の我がままに応えてくれるのがこの人のスケートであり、表現なのです。

卓越したスケートの技術と高い身体能力。ダンサーとしてのセンスと、表現者としての強烈な意志(何かを伝えよう、という明確な意志がなければ、どんなに美しくてもそれは芸術ではない、と私は思っています)。それらを兼ね備えていなければ、到底実現できない表現だと思いました。

ていうか、何度も書いているように、ベタや王道は正しいのです。それをやれば間違いはないのです。
故に、王道を大幅に外したこのプログラム、センスのない人がやると目も当てられないことになるのではないかと思います。その辺り、宮本さんは多分分かってやってると思いますけどね。

とりあえずFOI。席が北側なので余り良く見えないかも知れませんが、そこの所は覚悟の上で、生で見れるのを楽しみにしてます。

***

最後のスピン、あの首元に食い込む指が生々しくて息苦しい。でもすごく好き(笑)。
DOIそれ自体に関しては、21日の放送見てから書くと思います多分。

最新の画像もっと見る

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (りさ)
2007-07-19 20:18:42
はじめまして。
虹川さんの文章が好きで、読ませていただいています。
高橋選手のバチェラレット、私も単館上映の映画のようだと思い、バチェラレットを見た後だと、EXロクサーヌでさえ大味に感じさえしました。(EXロクサーヌはもちろん大好きですが)
私が心に思っていたうやむやな気持ちを、虹川さんが的確な言葉で表してくださったことに感謝しています。
自分の気持ちにピッタリな文章に出会うとすっきりしますね。
これからも虹川さんの文章楽しみにしています。
返信する
Unknown (とらっきー)
2007-07-19 22:31:15
はじめまして。
いつも虹川さんの知的な文章を楽しく読ませて頂いております。今回虹川さんが大ちゃんの演技を見て感じたこと、まさに同感です。
世界選手権が終わってまだ4ヶ月あまり・・
高橋ワールドはどこまで進化するのでしょうか?今回のバチェラはまさにトリにふさわしい演技でした。私はこの作品を観て、今年上映された映画「パフューム~ある人殺しの物語」を思い出しました。主役ジャン・バティスト・グルヌイユの強烈なイメージが大ちゃんと重なって・・・野性的で誰にも飼いならせない気質とでもいうのでしょうか?脳裏に焼きついて離れません。
演技終了後、観客の反応がまちまちだったような気がしたのですが、海外ではいったいどんな反応が起こるのか楽しみです。
これからも虹川さんのコメント楽しみにしています。
返信する
Unknown (虹川 章)
2007-07-20 00:53:41
>>りささんこんばんは初めまして。
お気に召して頂いて嬉しいです。
ロクサーヌも衝撃的でしたが、分かりやすい表現でしたもんね。今度のEXは単館系映画のようなマニアックさがあるだけに、誰にでもは受入れられにくい…というか、そう簡単に誰にでも分かってもらっちゃ困る(笑)というようなものかなと感じました。簡単には分からないから面白いというか。
私は自分の思ったことを書くことしか出来ませんが、それに同調して頂けると私も嬉しいです。よろしければまた覗いてやって下さい。

>>とらっきーさん初めましてです。阪神ファンの方ですか?
今回のEXには、大ちゃんの「アーティスト」としての自覚のようなものを感じました。「ノクターン」の時には無意識にやっていた感じですが、競技で結果を出して、周囲からの評価も受けて自信を付け、これから本当に自分の新しい「表現」の模索に入って行くのかなと思うとわくわくします。
「パフューム~」は私は見ていないのですが、コメントを読んでちょっと見て見たくなりました。エッジの効いた、強烈なキャラクターの似合うEXだと思います。
海外でも賛否に分かれそうですが、是非世界に見て欲しいプログラムですね。
返信する
Unknown (ぶん)
2007-07-20 09:30:34
はじめまして。
私も、虹川さんの高橋君語り、毎度「書いてくれてありがとう。」と思いながら拝見しておりました。
バチェラレット、呪文のように愛を唱えるビヨークの声の中、思いっきり拒絶しつつ逃げている感じがして、ふと、このプログラムを演じるおかげで、何かと背負わされまくっているように見える今の高橋君、精神的に救われる部分があるのではないか、というか、救いになってくれればいいな、と思ったりしました。
返信する
Unknown (ちろ)
2007-07-20 10:57:58
虹川さん、こんばんは。
ご覧になったんですね!よかったですよね~。一瞬たりとも目が離せない、離したくないプロでした。
単館上映の映画館、まさにその通りですね。好き嫌いも当たり外れもあるけど、という感じ。大ちゃんのバチェラは私も感涙ものでした。こういう境地を開拓した宮本さんと大ちゃん、さすがですね。
大ちゃんの衣装、思っていたより未来っぽくて、進化しているのか、逆に退化しているのかわからない不思議な生き物のように見えました。

アンコールのオペラ座はちょっと意外でした。もう封印するのかな、と思っていたので。アンコールはロクサの身悶えながら立ち上がるところからかなーなんて勝手に思っていたものですから。フジテレビ側の要請に応えたのかもしれませんね。

そうそう、ポエム・・・演技中静かでした。といってもまだ前半部分の録画は見ていないのですが。でも八木沼さんが・・・沈黙に耐えられない!とばかりに喋り出すのが・・・。それでも誰も呼応したり、相槌を打ったりしないので、恐れていたよりは落ち着いて見ることができました。(笑)

FOI、私はそんなに良い席ではないので、あまり方角を考えたことがありませんでした。(SS席2列目。「W」とあるのは西ということでしょうか?)しかも初日。やっぱり千秋楽の方がよかったかも・・・!でも、もう1ヶ月後ですね。楽しみになってきました!
返信する
Unknown (虹川 章)
2007-07-20 11:21:28
>>ちろさんこんにちは。
まさか本放送の前にCSで見れるとは思いませんでした。
ぼーっと見てるのが勿体ない、食い入るように見つめてしまう演技ですね(笑)。
単館系シネマなんかもそうなんですが、コアな層に訴える妥協のない表現って、ライトな層にはハードルが高いんですよね。
宮本さんも外見は軽そうにしてるけど、やっぱり表現者として真剣に向き合ってるし、大ちゃんのことも高く買ってるんだろうなと思いました。
衣装は密かに特撮っぽいと思ったのはナイショです(笑)。肩の飾りが爪っぽくて、何か戦ったら強そうです。

アンコールがオペラ座なのは私も意外でしたが、試合用のプログラムってEXに比べて生で見る機会が少ないので、お客さんにも良いサプライズになったなかと思います。

ポエム男は静かでしたか。先手を打って釘を刺しておいたのが少しは効いたのかも知れませんね。全日本で余りに酷かったので、流石にクレームがあったのかも(お陰で未だに女子の試合が見れません)。
私も席は余り気にしたことはなかったのですが、今回、南と西はアタリかも知れませんよ(ロクサーヌでは東が当たりだったっぽいです)。
でもどこで見ても、ライブは生で経験することが大事だと思うので、贅沢言わずに楽しんで来たいと思います!

>>ぶんさんこんにちは初めまして。
お褒めの言葉恐縮です。冥利に尽きます。
バチェラレット、言われてみれば怒りをあらわにしながら、何かから逃れようともがいているようにも見えますね。色々と想像(妄想?)させられます。
「表現」というのは、自分の表現したい「何か」を表現しなければやる甲斐のないものです。大ちゃんの表現が見る人の心に迫るのは、きっと彼自身の「これを表現したい。表現しなければ」という切実な想いが込められているからかなと思います。それが単なるアスリートではなく、「アーティスト」と呼ばれる由縁なんでしょうね。
返信する
Unknown (kinomi)
2007-07-20 17:59:21
虹川さんこんばんは。
バチェラレット、想像以上の作品でした。以前短い映像を見ただけで「きっとこれははまるだろうな」と思っていたのですが、完全に底なし沼にはまって抜け出せなくなってしまいました。何だか息苦しいです、助けてください(笑)。
仰る通り、マニアックで難解な作品ですね。世界選手権でメダルを獲得して、世間的に知名度も注目度も格段に上がった(と思われる)このタイミングでこれをやるっていうのが、やっぱりかっこいい。
正直、高橋くんや宮本さんがこの作品で表現しようとしていることの本質は、私にはまだよくわからないんです。でも、だからこそ惹かれるのかも。「なんだかわからないけど好き」っていう感覚に今は近いです。あの首絞めスピンのところ、私もすごく好きです(笑)。
ロクサがそうだったように、この作品もまた、これから様々に変化していくのでしょうね。すごく楽しみです。

(コメント欄お借りします)
>>ちろさんこんばんは、はじめまして。
遅くなりましたが、先日はコメントありがとうございました。FOI、とっても羨ましいです(笑)、是非楽しんできて下さい!
返信する
Unknown (ぷかどんどん)
2007-07-20 23:28:07
こんばんは。バチェラレットにやられてます。私はDOIで見てきました。東だったのでバチェ的にはイマイチの席だったのですが、もう~息するのも忘れました。最終日で疲れてたのか(?)ちょっとつまいづいたとこもありましたが、でも本当にひきこまれました。私は最初のスピンで壊れましたね。なんて官能的!私のイメージでは、「どっか異世界からむりやり召喚されてでてきた魂の定着してない幻獣」なのです。みんなそれぞれのバチェ観があるんでしょうね。これは、受け付けない人はとことんダメ、はまる人は底なしにはまるプロって感じ。これからの進化が楽しみです。
虹川さんもFOI北なのね。私も北です・・・。DOIは南が大当たりでしたが、FOIはどうかな?でもまた大ちゃん見られるだけでしあわせです。
返信する
Unknown (虹川 章)
2007-07-21 00:47:03
>>kinomiさんこんばんは。
これは本当に、ハマる人はとことんハマる作品ですね。
正直、もっと賛否が分かれるかなと思ってたんですが、意外に好意的な人が多くてちょっと安心してる所です。「わからないけど好き」そういう人も案外多いのかも知れませんね。私も実は分かってないです。分からないものをあっちこっちひっくり返してつついて見るのが大好きなのです(笑)。
ある意味、メダルを取った今だからできた冒険かも知れませんが、この人が「表現」に対して妥協するつもりはないことを再確認できただけでも感動モノです。
大ちゃんは試合でも「その時感じたままに表現する」なので、きっとこれからも色んな顔を見せてくれるんでしょうね。楽しみです。

>>ぷかどんどんさんこんばんは。
DOIで生で見られたんですね。羨ましいです~。サッカーも楽しかったので後悔はしていませんが、それでもやっぱり行きたかったかも(笑)。
このプログラムの解釈に関しては、ここで頂いてるコメントだけでも色んなものがあって楽しいです。様々なイメージを喚起させるのがこの作品の魅力であり、同時に大ちゃんが「アーティスト」と言われる由縁でもあるのかも知れません。ほんもののアーティストとはこういうものなのか!としみじみ思います。
FOIは北なので、南に比べるとちょっと厳しいかも知れませんが…でも生で見れるだけでも贅沢だと思います。現地に観覧に行きたくても、中々行けない人もいますから。生で見られるだけでも有り難く堪能して来ましょう♪
返信する

コメントを投稿