みじんこのつの

雪の降る町に生まれ、
雷の多い町で育ち、
花の名前の町に住み、
山の上の小さな病院の、
小さな存在の日記です。

ドイツの医療事情

2007-06-07 20:15:27 | Weblog
父がドイツの医療事情をまとめて送ってくれました

以下、コピペです。



【ドイツの医療事情1】
昨晩、ドイツに嫁がれた方が里帰りしていましたので、ドイツの医療事情を聞いてきました。

<1.アクセスとコスト>
1)ドイツの社会保険制度は、疾病金庫という社会医療保険が中心で国民の89%が加入している。富裕層は民間医療保険に加入している(9%)。その他(軍人など)2%。

2)自己負担
 18歳までは無料。
 それ以上の年齢では、1医療機関に4半期ごとに10ユーロ(約1600円)支う。

3)アクセス
 行きたい医療機関に自由に行ける。その日の朝に予約すれば行ける。
 往診もかなりある。
 専門医は数週間待たされることがある。

*英国や豪州のように、予約しても3日から7日後になることはない。
 家庭医に登録して、その家庭医にしか掛かれないということもない。

4)日本人の医療機関に行く回数14.4回/年、ドイツ人は7.3回/年(2000年)。

http://ww21.tiki.ne.jp/~iryou/news-20051019.html

<2.診療所>
1)ドイツの診療所には、心電計、X線などの診療機器は殆どない。必要な場合は病院などに行く。

2)風邪程度ならば、殆ど診療所には行かない。
 水を飲んで寝ている。
 ドイツ人は日本人ほど病院(診療所)が好きではない。
 インタビューしたドイツ人のご主人は、「私は病院は嫌いだ。ドイツの若い人は殆ど病院に行かない。ただし、ドイツでも老人は病院が好きで、待合室は老人の社交場になっている。」と言っていた。

3)抗生剤は余程のことがないと処方されない。

4)薬は長期処方されることが多い。
 大パック、中パック、小パックにして処方される。
 子供の風邪薬などは小パックが処方される。約1週間分入っているので、残りを取っておいて同様の症状の時に飲んでいる。
 大パックは数か月分入っている。一杯薬をもらって置いて、自覚症状があったり、具合が悪くなったら診療所に行く。

5)寝たきり老人ばかりでなく、子供などでも往診の依頼が結構あるようだ。

<3.救急>
1)ドイツでは、開業医は時間外は診ない。水曜午後、土日は休みである。

2)その水曜午後、土日と平日夜間は、開業医が輪番で救急当番に当たる(義務)。
 救急当番の患者数は、土曜日は20人外来、10~15回往診、夜間(夕方5時~翌朝8時まで)は外来4~5人、往診3~4人(オーバラート市に30年以上開業していた日本人医師の場合)。
 意外と往診が多い。日曜日は土曜日の10%増し。

3)病院にも救急外来がある。

4)具合が悪い患者は、医師同乗の救急車を呼べばいいので、当番の医師が病院まで付き添う必要はない。

<4.休暇>
 水曜午後と土日が休み。
 夏休みは、仲間の医師と交代で、2週間づつ2回(計4週間)取っている。
 これは、ドイツ人の権利とのこと。

<5.報酬>
1)これが驚くほど少ない。
 時間給は、中級サラリーマンと同じ程度。働く時間が多いのでその分サラリーマンよりも多い。開業医の子弟でないと、開業資金を出せなくなって来ている。

家庭医 総収入:316、624マルク(1/2ユーロ、約70~80円程度か)
    納税前の所得:149.704マルク
    手取り:75.708マルク

専門医 総収入:473.228マルク(1/2ユーロ、約70~80円程度か)
    納税前の所得:206.586マルク
    手取り:104.374マルク
以上1990年のデータ。

 いくら高福祉国家で、医療費や教育費が日本に比べて安いドイツでもこれは少なすぎると思います。

2)あまりの少なさに医師のストが頻発しており、そのために今年は報酬が平均20%程度上昇したそうです。

3)又、報酬が良い英国などに脱出する医師も多いそうです。

以上が、昨晩聞いたドイツの医療の現状です。

 日本の小児の救急外来の窮状に対して、何か策はないかと思って聞きましたが、とても参考になりました。日本と同じような社会保険制度があるドイツで、アクセスが良くて医療費が安いのにも関わらず日本のような状態になっていない理由は、

1)医師数が多い(1999年のデータだったと思いますが、日本190人/10万人、ドイツ360人/10万人)。
2)一次救急に全ての開業医が参加(十分な休暇があるからこそ可能なのか?)。
3)むやみに医療機関に掛からないという風潮がある(年間受診数は日本の1/2)。

  これは結構大切だと思います。
  ドイツでは、日本のほほ2倍の医師数で、半数の患者を診ていることになる。
  日本の医師の負担は、ドイツの4倍。

以上のようなことかなと思いました。

【ドイツの医療事情2】
ドイツの医療事情の続編です。
私の友人の義姉がドイツのデュッセルドルフの開業医だと知って、次のような質問をいたしました。

1)月何回程度あるのか
2)当番医の患者数(昼間、準夜、深夜それぞれ)
3)アクセスフリーで自己負担も安いドイツの年間受診回数は日本の1/2ですが、患者気質と投薬などの効率性も無視できないと思いますが、それにしても少ないと思います。この点に関してもコメントいただければ幸いです。
4)当番医の患者数も少ないと思います。夜間救急に掛かるということに関して、ドイツは日本よりもかなり少ないと思いますが、この点のコメントもお願い出来ればと思います。

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返事の前の説明
輪番の際は市の開業医で作っているNotarztspraktis(夜間?休日のための急患外来のようなもの)へ行き診療を行います。内科(2名)、外科 ?整形外科、小児科、耳鼻科、産婦人科、眼科、歯科などの各科(それぞれ1名づつ)が待機することになります。内科の1名は外来を、もう1名は往診(18~24時のみ)を行います。対象患者は参加している開業医のグループの患者に限られます。これにより診察時間後に医師個人に電話がかかってくるとのないような仕組みになっています。このグループの開業医数は内科以外も含めて1000以上とのことです。大きな病院には当然これとは別に救急外来があります。

1) 輪番制の回数
ドイツ全体では平均4週間に1回
デュッセルドルフ地域では6週間に1回
義姉の場合は他の人に代わってもらっているため3ヶ月に1回程度

2) 患者数(あくまで義姉の印象で、統計的に正確な数値ではありません)

平日の場合(全体で50人程度)

       8時~18時まで   18時~24時   24時~8時
外来(内科) 各々の医院で     20~30人    16~20人
往診(内科) 各々の医院で     15~30人    行っていない

土曜、日曜、祝日の場合(全体で100人程度)

         8時~24時       24時~8時
外来(内科)   40~60人       16~20人
往診(内科)   25~35人       行っていない


3) 受診回数について
おそらく薬をもらうためだけの受診が少ないことが最も関係していると考えます。慢性患者の場合、開業医の患者でも3~6ヶ月に1度の処方箋となります。風邪などに受診しても次回は1週間後ということも少なくありません。心配ある病気か否かの判断を医師が行い、あとは自己管理という場合もあります。虫垂炎の手術を受けても通常3、4日後には退院となります。あまり頻回の受診の場合には保険組合からその必要性が問われることもあるでしょう。

取り敢えず、ご報告まで。

以上をまとめてみると、
1000人位の開業医で、ほぼ全科をカバーして時間外診療を行っていること、
1)内科二人制で一人は往診も行っていること
2)24時間体制であること
3)時間外には、開業医には直接電話がかかってこないシステムを構築していること、
4)参加開業医の患者のみ、受診可能なこと、
5)1000人位の開業医の患者でも、時間外患者数が比較的少ないこと



イギリス型の医療崩壊を起こしている日本ですが、本当になんとかならないのでしょうか?
日本の医療「焼け野原」説を唱える人は少なくありません。

悔しいな、と思うのです。

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4 コメント

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興味深いです。 (美月)
2007-06-08 00:07:00
砂糖味さん、こんばんは。

ドイツの医療事情、とても興味深かったです。

日本とくらべると受診率がかなり違うのですね。

確かに、「やたらと病院にはいかない」という話は聞いたことがあります。



私はホメオパシーという代替医療を生活に取り入れています。

ホメオパシーのふるさとはドイツ。

ホメオパシーやハーブはドイツでは盛んに使われていて、薬事法できっちり管理されているそうです。

普段からハーブなどを活用し、体調を読むことになれているのが、長期投薬でも薬剤管理がきちんとできたり、ちょっとしたことなら家庭のハーブティーでも飲んで治そうという発想につながるのかな、と思います。

ハーブティー (砂糖味)
2007-06-10 01:04:27
美月さん、コメントありがとうございます。
公的な医療保険がほとんど機能していないアメリカや、
今の日本と同じように過剰に医療費を抑制して病院を締め上げたことにより医療事情が悪くなったことのあるカナダ、
医療崩壊の真っ只中にあるイギリスなどの医療事情はよく取り上げられています。
他の国に目を向けると、見えなかった部分が見えてきたりしておもしろいなと思います

「ホメオパシー」、おもしろそうですね。
きれいな生活をしている美月さんらしいです
私もハーブティー好きです。

私はこの間、催眠療法を副業(?)にしている方に出会いました。
過食症とかパニックなどの精神疾患を治したりしているそうです。
お話を聞いていると、結局はリラックスすることが大切なのかなと思いました。
私も短期導入(?)をしてもらったのですがちゃんとかかりませんでした
心のバリアが強いのかな?
いい経験でした。
質問です (木下研一)
2010-01-13 21:24:20
 40年程前にドイツの外科を1年間経験した者です。
 「ドイツの医療事情」を拝見しました。日本とドイツにおける時間外診療・救急医療のあり方についてその落差に愕然とします。
 私もずっと救急について何等かの役に立ちたいと考えてきましたが、最早どこから手をつけたら良いか分からないところまで来ています。そうは云っても放っておくわけにもいかないので、「たらいまわし」の原因に焦点を当ててレポートの様なものを纏めようかと思いつき、目下のところ資料を集め始めたところです。よろしかったら下記の質問にお答え頂けませんでしょうか。アドレスはgrussgott@sky.plala.or.jpです。
 なお、私の履歴みたいなものは http://www8.plala.or.jp/kyuukyuuiryou/ をご覧いただければ凡そのことはお分かりいただけます。

 ドイツの救急初期医療は家庭医(一般医)と内科で構成されているのですが、義理のお姉さんはそこに(輪番制で)参加していると解釈してよろしいでしょうか。
 初期医療で手に負えない場合には各科の専門医に紹介されるはずです。専門各科には内科も含まれるのでしょうか。もしそうだとすると内科の医師は二重の負担になりますね。
 各科専門医は自分の開業施設(Praxis) において輪番の義務を遂行すると聞いています。そうすると Notpraxtis は初期救急に分類されるのでしょうか? これは前述の初期救急構成メンバーと矛盾します。ついでながら、Notpraxtis はNotpraxis ではないでしょうか?しかしどちらもインターネットではうまくヒットしませんでした。

 書きたいことは沢山ありますが、制限があるのかもしれませんし、ここまでにします。やや長文をここに書いてもよろしいでしょうか。

大変申し訳ありませんが、 (砂糖味)
2010-01-15 12:40:05
木下様
木下様のHPを拝見させて頂きました。
貴重な情報をありがとうございます。
大変興味深く、読ませて頂きました。

ドイツの医療事情の記事は、2年以上前にUPしたものになります。
これをまとめてくれたのは父なのですが、
2年以上前のことで、もう資料が残っておりません。
大変申し訳ありませんが、
私には木下様のご質問にお答えできるような知識も経験もありません。

ご希望に副えず、申し訳ありませんでした。

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