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『紙の月』 角田光代 著

2012-10-13 | 本の紹介
角田光代さんの『紙の月』を読みました。
今月、第25回柴田錬三郎賞を受賞した作品です。

内容は・・・(ネタバレありです)

自分にあまり興味を抱かない会社員の夫と安定した生活を送っていた、
正義感の強い平凡な主婦、梨花(41歳)。
派遣で銀行に勤め始め、年下の大学生・光太と出会ったことから、
金銭感覚と日常が少しずつ少しずつ歪んでいきます。
お金のない年下の恋人を援助し、心をつなぎとめておくために次々とお金を使い、
「私には、ほしいものは、みな手に入る」と思い始めます。
初めはほんの少し顧客のお金を借りるだけだったのですが、気が付けば勤務先の銀行から1億円を横領!
結局、若い恋人には去られてしまい、梨花は海外へ逃亡します。
彼女は、果たして逃げ切れるのか?

スリリングで面白く、たたみかけるようなストーリーの展開に読むのが止まらなくなりました。
お金って怖いです・・・
お金があれば何でも出来るはずだったのに、心だけは買えなかったのですね。
もしかしたらお金よりも怖いものは愛!?

彼女の周りの人が3人登場して、それぞれの生活も描かれますが決して幸せではありません。
毎日の生活で、ほんの少しの勘違いや擦れ違いや言葉が足りないことが、
積もり積もって大きな波になってしまうのです。
それは心が通わない夫との生活だったり、節約のための我慢が多いことだったり・・・

角田さんの作品を何冊も読んでいますが、これで直木賞を含む各種文学賞の受賞は11回目!
毎年のように何らかの賞に選ばれています。
本当に描写力に優れていて、登場人物の表情までもが目に浮かぶようです。
角田光代さん自身が一回り年下の男性と再婚されているので(最近かなり年上女性も多い!)、
若い男性に対する年上の女性の心情の描き方も上手です。
今、旬の作家さんですね。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ペーパームーン (桜子)
2012-10-17 18:52:28
角田さんは、彼女がデビューしたころから好きな作家です。
嫌みのないストーリー展開で、どの内容にもさらりと引き込まれていきます。

かつて金融機関に勤めていた女性の、大金横領事件が相次いだ時期がありました。但し、自分の置かれている現状に不足を感じた家庭を持つ女性が、若き男性の愛をつなぎとめる為ではなかったように思います。
角田さんの作品の中の主人公は、上手に逃亡生活を続けますので、この作品ではどのようになるのでしょう?
平凡そうに見える其々の家庭生活。口には出しませんが、小さな行き違いが重なり合った結果、次第に解決し辛い問題に変化していきます。
読んでみますね。

紙の月、ペーパームーン。映画のタイトルにもありますが、昔の歌にもありました。良く耳にしました。

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泉鏡花文学賞 (ももこ)
2012-10-18 15:18:34
角田さんは17日「かなたの子」で 第40回泉鏡花文学賞(金沢市主催)を受賞しました。まさしく旬。飛ぶ鳥を落とす勢いです。
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桜子さま (holy)
2012-10-19 00:02:11
大金横領事件では、外国人女性に貢いだ東北の男性がおりましたね。
この作品では逃亡に至るまでの経緯が重点的に描かれています。
こうやってお金を使うと、1億円なんかあっという間になくなってしまうのだと知りました!
私には一生無縁な金額ですが。。。

ペーパームーンという映画や音楽があることを知りませんでした。
偽物で作り物だけれど、信じていれば本物に見えてくる、本物になってくる、という意味なのでしょうか。
彼女と若い彼との愛もそうだったのかもしれないと思いました。
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ももこさま (holy)
2012-10-19 00:06:32
私も今日の新聞で、角田光代さんの「泉鏡花文学賞」受賞を知りました。
正賞として「八稜鏡」が贈られるなんて素敵ですね。
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