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奥田英朗 著 『沈黙の町で』

2013-05-21 | 本の紹介
奥田英朗 著の『沈黙の町で』読了しました。
中学生2年生男子が学校内で亡くなるという重い題材でした。

奥田氏の作品は『イン・ザ・プール』『空中ブランコ』(直木賞)『サウスバンド』『無理』『我が家の問題』
などを読んだことがあり、読者を文章に惹き込ませる筆力は抜群と思っています。
この『沈黙の町で』は初めての新聞連載小説、2011年5月7日から朝日新聞朝刊で1年2か月連載されました。
連載中から作品に描かれる学校内でのいじめや少年犯罪が話題となり、
しかも連載中に滋○県O市内の市立中学校の当時2年生の男子生徒がいじめを苦に自殺するという事件が起こり、
その後唐突に連載終了となったので、何らかの圧力で「打ち切り」になったのかと言われていました。

作品冒頭で、作品の舞台となっている地は、
「北関東の田舎町、大きな二つの川に挟まれた肥沃な土地ではブランド野菜となっているネギが作られている。」
「夏は日本でも最高に暑くなる地である。」などとあり、この近隣か?と思いました。

小さな町で起きた1人の中学生の死をめぐり、町にひろがる波紋が描かれます。
被害者や加害者とされた子の家族、学校、警察、検察、新聞記者などさまざまな立場からの言い分、
中学生たちが「友情」「正義」の名のもとに最後まで口を閉ざす「事実」、
小さな町での住民同士のしがらみや対立などが500ページを超える中にぎっしり詰まっています。
ただ一つ書かれていないのは亡くなってしまった中学生の思い。
死んでしまったらもう何も言えないし思いも理解されない、ということなのでしょうか。

連載小説を「書籍化するにあたり大幅に加筆修正した」とあったので結末が変わるかもと思いましたが、
結末は変わっていなかったようです。
重く深く考えさせられる終わり方でした。

私は大学卒業後、7年間中学校の教員をしていました。
中学生は人生の中で心身ともに一番成長する時期で、しかもとても危うい年代と思っています。
それゆえ、大人には理解できない理屈や考え方が、正当なものとして通ってしまい、
彼らに寄り添い親身に正しく導く大人の存在が一番必要な時期でもあります。
「中二病」は良くも悪しくも確かに存在するのです。

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