井戸

快晴。秋風が心地よい。
朝から眠い。睡眠は十分取ったはずだが、午後の会議で居眠りしそうだ。
引越して来てもうすぐ4年。
田んぼは埋め立てられ、一面造成地だった。
今や家がどんどん建って新しい街が出来ている。
4年前、造成地の近くに鬱蒼と草木の生い茂る一角があった。
そこに、貞子が出て来そうな井戸があった。
もちろん立ち入ることは出来ないから分からないが、多分井戸は埋められていたようだ。
だが、見た目不気味な井戸は、通勤のたびに凝視してしまっていた。
そこが、今年になってあれよあれよと言う間に造成され、家が建ってしまった。
割安の建て売りはすぐに売れたようで、入居者の姿も見られた。
ところが一軒だけ売れ残っている。
他は夏前に入居が終わっているのに、そこにはくたびれたのぼり旗が秋風にはためいている。
彼処は井戸のあった場所のような気がするのだが。