学習指導要領の変質――鈴木大裕氏『崩壊するアメリカの公教育――日本への警告 』読書会感想その2

2016-10-18 | Weblog

感想の続き、つづき。
読書会に直接は出てきませんでしたが、新自由主義の影響をまともに受ける「学習指導要領」についての感想を述べたいと思います。



③学習指導要領

『崩壊するアメリカの公教育』第1章で大裕さんは、1980年代のレーガン政権以降にはじまった一連の社会実験を「新自由主義教育改革」と定義し、全体像の検証を行っています。

アメリカの社会「実験」の、要(かなめ)となる報告とは……。


1981年 レーガン政権発足
1983年 「危機に立つ国家(A nation at Risk)」報告
1984年 連邦教育省「国民は答える(The Nation Responds)」
1986年 全国知事会‘Time for Results’

日本でも新自由主義における「小さくて強大な」政府観の流れを受けて、2001年以降は小泉政権による「聖域なき構造改革」が推しすすめられてきました。現在の安倍政権はさらに新自由主義の潮流を加速させており、現在の日本の社会実験・教育実験はアメリカの後を無批判になぞるものとなっています。
「官から民へ」「中央から地方へ」を合言葉とした公共サービスの削減は、公教育の場においては市場型学校選択制として各学校につきつけられました。

今年、2016年8月26日には、文部科学省の諮問機関である教育課程部会と有識者が審議してきた「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめについて(報告)」が示されました。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/gaiyou/1377051.htm


学習指導要領(以下「要領」と略)は社会の変化に対応するため10年ごとに改定されますから、現在話し合われている要領は2030年の社会を見すえた学びの地図ということになります。小中高校では2020~2022年に相次いで実施されてゆく、日本の学校の基準です。
(法制上は「学校教育法」→省令「学校教育施行規則」です。例えば小学校ではこの「学校教育施行規則第52条」で文部大臣が別に公示するものとされています。)


中教審がベースとする社会観、「知識基盤社会(knowledge-based society)」は、「新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会」というもの。個人的にはこの知識基盤社会という社会観の問い直しが必要だと思います。

教育課程企画特別部会における論点整理について(報告)
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/12/11/1361110.pdf




きょうはひとまず、こんなところで。


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