『ネルソン伝に序す』より

 「然れども国民の声は神の声なり、国民の理想に循《したが》ひしものにして天理に反《そむ》きしものは甚だ稀なり、能《よ》く国民の志望を充たせし人は常に能く人類の幸福を増進せし人なり、ネルソンは英国民の理想に応《かな》ひて世界進歩に偉業を呈せり、英国に忠実なりし彼は人類全躰の恩人なり。
 然れどもネルソンの勲績は……、陸にウエリングトン公あり、海に提督ネルソンありて『義務』の念は永久に英国軍人の脳裡に打ち込まれたり。」
(内村鑑三、明治27年11月したためる。青空文庫から引用。)

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 ある方から、それは便利なサイトをご紹介いただいた。
・国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(ndldap) - デジタルアーカイブ統合検索

 いやーこれはありがたい!
 さっそく試みに「内村鑑三」と入れてクリック。
 出てくる出てくる。
 「ネルソン伝に序す」、これなどは、私は探そうと思って探すことのできる文書ではないから、喜んでダウンロードし、なにしろ短文なので目を通す。
 冒頭の引用は、その一部より。

 「然れども国民の声は神の声なり」で始まり、「提督ネルソンありて『義務』の念は永久に英国軍人の脳裡に打ち込まれたり」で終了する形式、そこに注意が行った。
 ここから想像を膨らませるに、「英国軍人の脳裡に打ち込ま」れし”精神”が「国民」を培うのではなかろうか、と。
(”精神”という用語が誤解を招きやすいことについては、ただただ語彙不足をご了承いただきたい。)
 言い換えると、(当時の)英国民がネルソンを生み、そのネルソンが英国民を育んだのではないか、と。

 明治27年、1894年。
 110年も前の、遠い外国に材を採った昔話でございました。
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