マタイ効果

 「というのは、持っている者はさらに与えられて豊かになり、持たない者は持っているものまでも取り上げられてしまうからです。」(マタイ13:12)

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 「理系白書」(元村有希子 著、毎日新聞社)という本を読み進めてゆくと、「マタイ効果」という言葉に突き当たった。
 この「マタイ効果」というのは、「サイエンス」誌や「ネイチャー」誌といった著名科学雑誌に自分の論文が掲載されると研究費獲得上きわめて有利に働くが、掲載されなければ予算上死活問題になるということを指しているとのこと。
 マタイ福音書に上の引用聖句が載っているのが、命名の理由という。
(ちなみに、マタイ25:29、マルコ4:25,ルカ8:18、同19:26にもある。)
 「効果」と付くのは研究者ならではの遊び心だろう。
 ただ、それを言い出したら、資本主義というのはマタイ効果そのものだ。特に、昨今の新自由主義において著しい。
 聖書で「持っている者はさらに与えられて豊かになり、持たない者は持っているものまでも取り上げられてしまう」とあるのは、資本主義社会を指すわけでも、また研究費獲得についての法則性を言うのでもない。

 「持っている者」は、かつては「持たない者」だった。
 そしてあるとき、持つに至った。
 この持つに至った者は、「さらに与えられ」る。
 どんどん与えられる。
 何がだろうか。
 「いのち」とそれに関わることだ。
 一方で、持つに至らない「持たない者」は、あれこれ見当違いの方向に迷って次第に見失って行くうちに、もともと蒔かれていた種さえついには失ってしまう。

 持つに至る、決定的な「あるとき」というのがある。
 それは、自力でつかむものではなく、上から恵みによって与えられるものである。

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[一版]2008年 2月 7日
[二版]2010年 7月 9日
[三版]2013年12月30日(本日)

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